2018年4月16日

競泳選手に必要な陸トレとは?北島康介を支えた3人の名トレーナーが集結した特別セミナー(田村尚之・桑井太陽編) (2/4)

スタートの強化は小さな筋肉も使うこと

 トレーニング計画の重要性の後は、その目的についてです。

「筋肉を大きくする筋肥大。ウェイトトレーニングの最初の2~3週間で、だんだん筋力が上がったと感じることがありませんか? また、1ヶ月くらい続けるとできる腕立て伏せの回数が増えるとか。この変化は、筋肉量が増えたというよりも、筋と神経のつながり、連動性が向上して伸びたということなんです。つまり筋の面積だけでなく、神経と筋の連携機能が強化されることによっても筋力が伸びということを覚えておいてください」(田村さん)

 トレーニングの意義と意味、考え方などを説明した後は、それを体感できるトレーニング実践に移ります。今、競泳選手が抱える問題点として多い「スタート動作」を中心に行われました。

「パワーとスピードを得るには、下半身の強化が必要です。キーワードになるのが腰。丸くならず、反りすぎない状態でしっかり力を発揮することが大切。競泳選手は身体が柔らかい人が多いので、どちらかに偏ることが危険です。この問題を解消するには筋肉が必要なんです。まずは、参加者とスクワットのポイントを確認しながら実践開始。態勢による膝・腰・お尻にかかる負荷を理解するためにバーを用いて背中の過度な丸まりを防ぐ方法です」(田村さん)

「競泳自体で必要なのはスタートとかターンに対するパワーです。パワーにはスピード要素も必要。スクワット動作のスピードを上げると、膝と股関節のタイミングがズレて上がってしまう人がいます。それを解消するにバーを使ってスナッチというトレーニングを行います。これで身体を戻すときのジャンプ動作をしっかり習得しましょう。スクワットより軽く腰を落とし、バーを落とさないよう動くことで脚と膝と股関節をしっかり伸ばすことがポイント。メリットは、1つひとつの動作を止めながら実践することでズレている点をみつけやすくなります」(田村さん)

 次の実践は、競泳選手の肩の障害について。トレーニング時や競技時に気をつけないといけないのが、腕と肘の位置だといいます。そのために必要なのが、腕や肩だけでなくお腹、腹筋との関係だといいます。

「感覚をつかむためにダンベルのプルオーバーの動作をやってみます。これはダンベルがなくても、チューブなどで代用することが可能です。ポイントは、手を挙げたときにお腹がでないこと。競泳選手にとって致命的なのがストリームライン(抵抗を減らす泳ぐための姿勢)がそろわず水の抵抗を高めてしますことです。そのためには、お腹を絞めた状態で手を挙げることが大切。広背筋だけでなく腹筋も意識しましょう」(田村さん)

 今回はごく一部のトレーニングでしたが、強い筋肉だけ使って下半身でスタートを切るのと、弱い筋肉を上手く取り入れた姿勢でスタートを切る方が、動作として効率が良くなるとのこと。筋肥大やスピードアップには、小さい筋肉を意識しながらトレーニング計画を立てる重要性を説いていました。

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