2018年4月16日

競泳選手に必要な陸トレとは?北島康介を支えた3人の名トレーナーが集結した特別セミナー(田村尚之・桑井太陽編) (3/4)

自分の可動域を写真や動画で確かめる

 3番目に登壇したのは、2002年から国立スポーツ科学センターで北島氏のコンディショニングを担当した桑井太陽さんです。現在は、サンイリオス・インターナショナル代表取締役、国立スポ-ツ科学センター スポ-ツ医学研究部 非常勤アスレティックトレ-ナー、2001年より現在まで水泳日本代表トレーナー(北京・ロンドン・リオ五輪帯同)などを歴任している方です。

 桑井さんのセミナーでは、本人が実演するトレーニングや参加者自身が実践するトレーニング姿をスマートフォンの動画で撮影してチェックする形で進められました。動画を残すメリットは、セミナー後に自分で見られない部分や悪い点をチェックして修正できることだといいます。

 スライドに映し出されたのはポイントのみ。さすがに参加者も戸惑っていたようですが、2~3回繰り返すうちにポイントの把握から実践、そして動画撮影とスムーズに進みだし、動画とトレーニングの相性の良さを感じることができました。

「今日の狙いは、レースの前に何をするのかということです。目標は、<①リカバリーの要素である可動域の回復 ②レース時のタイミングは? ③可動域改善の指標とみかたは? ④自分で評価実践!>の4つです。始めに競泳レースのリカバリーモデルを考えてみましょう」(桑井さん)

「レースに出場する選手は、アップとしてストレッチや体操を行い、泳いで身体を馴染ませレースに臨む。そして終わるとストレッチや体操でダウンさせる流れがあります。トレーナーが介入するポイントは、レース前後のタイミングです。そこで身体を評価したり、必要があればマッサージします。そして次のレース」向けストレッチやマッサージをします。これを総称してリカバリーと考えます」(桑井さん)

 確かに1回の試合で何本も泳ぐので、次のレース前に疲労回復や関節可動域のチェックなどが大切なポイントになります。いかにして身体を回復させるかが、レースのカギになるといいます。この考えを自身で実践するためのトレーニングと評価方法を参加者と実践していきました。

「身体の動きの幅をどうとらえるか、コンディショニングの評価と実施を体験してみましょう。まず、<ストリームラインストレッチ>から始めていきます。これは背部・胸郭・肩甲骨可動域を評価します。バーを身体正面に立て、手の間に頭を入れ身体を伸ばし、真横から静止画で撮影してください。自分がどこまで肩を入れられているのか、腰の位置はどうかなどをチェックします。バーがなければ壁を代用してもOKです」(桑井さん)

「2つめは<ヘリコプター>です。これは動画を取ってください。前まわし3回、後ろ回し3回位を目安にゆっくり回してください。なるべく水平に回したいので、円錐にならないように。右手・左手両方の動画を撮ると、自分の肩の可動域の範囲がわかります」(桑井さん)

 鏡を使った<ストリームライン肩甲骨>では、肩の下げ方のチェックを行いました。「ちゃんと下げること」が非常に大切で、前や後ろに傾斜しないよう正しい位置に下がっているかは、鏡や動画でチェックするといいそうです。「コンディショニングの評価と実施」はさらに6つの実施へと進みます。

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