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後ろ向きに走るトレーニング「レトロランニング(バック走)」 の効果とやり方、注意点

 当然のことながら、100m走からマラソンまで、ランナーはつねに前方向に走ります。しかしランナーの中には、ウォーミングアップやトレーニングの一環として「後ろ向き走(レトロランニング、バック走)」を取り入れる方が少なくありません。サッカーやアメフトなどのフィールド球技では、試合の中で後ろ向きに走る局面が短時間ながらも頻繁に起こります。また、多くの医療現場では下半身における怪我のリハビリを目的として、後ろ向き走が活用されてきました。

 後ろ向き走を計画的かつ継続的にトレーニングに組み込むことによって、アスリートのパフォーマンスを向上させることができるとする論文(注1)が、ニュージーランドのスポーツ医学雑誌『Sports Medicine New Zealand』2018年5月号上で発表され、反響を呼んでいます。さらに2019年6月には、米国ストレングス&コンディショニングス協会の学会(注2)でも取りあげられました。今回は論文内容と合わせて、上学会で提唱された後ろ向き走のメリットとトレーニングメニューについてご紹介します。

どんな論文内容だったのか

◆論文の主旨

通常の前向き走との比較において、後ろ向き走は推進力に対するブレーキが少なく、ステップの回転率を高め、歩幅が減少し、より多くの筋肉活動が伴うことが明らかになった。そのような特徴により、後ろ向き走には怪我の確率を減少させ、スポーツパフォーマンスに関わるさまざまな身体的特性を向上させる効果が認められる。それらには、下半身の筋力強化とアジリティ能力の向上などが含まれる。(注1)

後ろ向き走を行うメリット

 後ろ向き走をトレーニングに取り入れるメリットについて、フランスのスポーツ科学者であるヤン・ル・ムール氏は以下3つを挙げています。

1)怪我の確率を減らす
2)筋肉の機能性を高める
3)代謝を高める

 ムール氏によれば、前向き走と逆方向への動きを行うことによって下半身の関節への負荷を減らすと同時に、小刻みで速いステップを習得することでスピードと瞬発力を高めるとのこと。さらに前向き走と同等、あるいは低い強度と反復回数であっても後ろ向き走のエネルギー消費量は大きく、代謝能力を高めることに繋がります。

 ただし、後ろ向き走“だけ”を行うのでは、得られるトレーニング効果は薄いようです。そのため、他の通常のストレングス&コンディショニングスのトレーニングと併用するべきだとムール氏は警告しています。

後ろ向き走のやり方と注意点

転倒防止のため芝生の上などで行う

 後ろ向き走で転倒した場合、地面で後頭部を強打することがあります。とくに子どもは注意が必要ですので、できれば芝生の上など安全な場所で行ってください。

はじめはゆっくりとしたスピードで走る

 後ろ向き走に慣れないうちはゆっくりしたスピードから始め(全速力の40~75%程度)、徐々に速くしていきます。それでも、全速力での後ろ向き走は危険なため避けた方がよいでしょう。

1度に走る距離もまずは15m以下にする

 1度に走る距離も最初は短く設定し(15m以下)、少しずつ伸ばしていきます。最長でも30m程度としましょう。

トレーニングの頻度と回数

 1回のトレーニングで16回以下の回数を反復し、これを週に2~3回ほどの頻度で行ってください。

メディシンボールなどを抱えて走るときは軽い重量から試す

 なお、メディシンボールなどを抱えて後ろ向きに走ることも、筋力強化に効果的です。その場合も最初はごく軽い重量から始め、徐々に重量を増やしていきましょう。抱える重量は、最大でも自分の体重の20%を越えないようにします。

後ろ向き走の導入例

 筆者が指導する高校のクロスカントリー走部でも、後ろ向き走を取り入れています。おもにスピード系のメニューを行う日(週2~3回)に、ウォーミングアップの中盤に組み込む形で20m程度の後ろ向き走を4~8回ほど実施。このタイミングで行う理由は、ある程度体が温まっていて、まださほど疲れていないからです。実際に行ってみるとわかりますが、後ろ向きに走るのは見た目よりきつく、また難易度も高い運動です。生徒が足をもつらせて転倒するケースが多かったため、安全を考慮してこのような形に落ち着きました。

参考文献
(注1)A New Direction to Athletic Performance: Understanding the Acute and Longitudinal Responses to Backward Running.
Uthoff A. et al. 2018
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29498028

(注2)Backward Running: The Why and How to Program for Better Athleticism.
Meur L. 2019
https://www.nsca.com/education/articles/infographics/backward-running-the-why-and-how-to-program-for-better-athleticism/

[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
【公式Facebook】https://www.facebook.com/WriterKakutani

<Text:角谷剛/Photo:Getty Images>

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