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スポーツをしていたら体が痛くなった、治したい……。じゃあ、漢方はどう?

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 オリンピック選手やプロサッカー選手などの一流アスリートが、肉体やメンタル面のケアとして漢方薬に注目しているというニュースを目にするようになりました。スポーツをする人にとって、漢方薬には、どんなメリットがあるのでしょうか? スポーツにともなう「痛み」と「体作り」という観点から、2回連載で漢方薬について考えてみます。

 中国の上海中医薬大学で、中医学を本格的に学んだあと、漢方薬局での漢方相談や、漢方セミナーの講師の経歴もお持ちの、クラシエ製薬・居原田耕平さんに、お話をうかがいました。


西洋医薬は「狩猟」、漢方薬は「農耕」だ


▲取材に応えてくださったクラシエ製薬・居原田耕平さん

 西洋医薬と漢方薬の違いをイメージするため、よくいわれるのが「狩猟」と「農耕」というたとえです。

 西洋薬が「狩猟」で、漢方薬が「農耕」に当たるわけですが、狩猟では、やってきた獲物を仕留めて、すぐ食料としてゲットできます。つまり速効性があるのですが、お腹が空けば、また再び、狩猟に出なければなりませんし、次に獲物が取れるかどうかはわからない。飢える心配は常にあります。

 農耕は、土地を耕して作物を育て、数ヶ月後でないと食料を得ることができないので、狩猟に比べて時間がかかります。しかし一度、農耕のサイクルができ上がれば、繰り返し食料を得ることができ、飢える心配はなくなります。


▲漢方薬のイメージは「農耕」

 西洋医薬の病気への向き合い方を「対症療法」、漢方薬を「根本治療」というふうに言ったりしますが、これも同じです。

 今、カゼをひいているとして、西洋薬ではその病気を治すというところで目的が完結しますが、漢方薬は「なぜ、カゼをひいたのか」、病気の理由までさかのぼって改善していこうと考えます。もちろん、漢方にも対症療法的な処方はあるのですが、病気にならない体作り、体質改善を目指すということです。だから、時間がかかるのですが、でも土地を耕すように体質改善できれば、飢えることつまり病気から解放される、そう考えるのが漢方です。


痛みの原因は「不通則痛」と「不栄則痛」がある

 「痛み」はなぜ起こるか? 漢方では大きく2つの原因があると考えており、その2つを「不通則痛(ふつうそくつう)」と「不栄則痛(ふえいそくつう)」と言っています。

 「不通則痛」は「通じないことが痛みになっている」という意味で、血流や神経の流れが悪いため痛みが起こっているということです。

 「不栄則痛」は「栄要素がないことが痛みになっている」という意味で、栄養素とは、(漢方において)人間の大元にあって細胞などを作っているとされる「精」というもののこと。「不通則痛」では急性的な痛み、「不栄則痛」は慢性的な痛みのことが多いようです。


筋肉痛に効く「芍薬甘草湯」

 スポーツする人が使う漢方薬として知られているのが「芍薬甘草湯」(しゃくやくかんぞうとう)です。「芍薬」は筋肉の腱と結びつきがあるとされ、「甘草」は胃腸や「肌肉」に関係があるとされますが、「肌肉」とは、中国語で筋肉を指します。「芍薬甘草湯」は、筋肉痛や脚のツリなどによく効いて、しかも速効性を持っているのです。筋肉痛を引き起こしやすい人は、スポーツをする前に「芍薬甘草湯」を飲んでおくという人も、多いようです。


▲配合されている生薬の「芍薬(しゃくやく)」


▲配合されている生薬の「甘草(かんぞう)」


関節痛・神経痛に効く「疎経活血湯」

 関節痛、神経痛や、腰痛、筋肉痛など、さまざまな痛みに効き、“痛みの万能薬”とも言える漢方が「疎経活血湯」(そけいかっけつとう)です。「疎経」は、経絡(けいらく)、つまり神経の通り道を流すという意味ですし、「活血」も、血流を良くするという意味で、まさに名前の通り、通じていない血流や神経を通じるようにする「不通則痛」に効く薬ということになります。


▲配合されている生薬のひとつである「川芎(せんきゅう)」

 「精」の減退がまだ少ない若い年代の人は、スポーツ後も栄養素を補う必要はあまりないので、筋肉痛には即効性のある「芍薬甘草湯」、それ以外の急性の痛みには「疎経活血湯」を飲めば、ほぼ解決するのではないかと思われます。

 またスポーツからは離れてしまいますが、雨が降るとヒザや関節が痛くなるという人にも、「疎経活血湯」はオススメです。停滞している血流や体内の余分な水分の流れをよくする、というふうにいわれます。


腰痛、しびれに効く「牛車腎気丸」

 慢性的な腰痛や、しびれに効くのが「牛車腎気丸」(ごしゃじんきがん)です。これは完全に「不栄則痛」に効く薬で、時間をかけてゆっくりと体を修復しながら、栄養素=「精」を補いながら痛みを治していくものです。

 同じ「不栄則痛」の薬でも、「芍薬甘草湯」のように速効性のあるものは、体をそれほど修復する必要のない若い人に向きますが、「牛車腎気丸」は「精」が減退している高齢者に特に効果的で、飲んですぐ治るという特性はありませんが、体の根本のパワー作りから補ってくれ、気がついたら以前より楽に体が動いているというような、気づきをもたらしてくれます。

▲配合されている生薬のひとつである「沢瀉(たくしゃ)」

 漢方の柱となっているものに「五行説」という中国の古代思想があるのですが、その中で「腎」は「精」を作っている場所と考えられています。「牛車腎気丸」は、「腎」に「気」を増やして衰えた腎を修復し、体を動かすパワーを与えてくれるでしょう。


痛みは体が発しているアラーム

 一般的に、痛みは、体が発している何かのアラームで、そのアラームが出たら、動きを止めて休む必要があるといわれます。しかし現代は、痛みが出たら、その痛みを薬で抑え、休まず動き続けるのが当たり前になっていますね。

 その痛みとどう向き合い治癒していくのか? スポーツをして体を痛めてしまった場合、漢方薬で治すのも選択肢のひとつとして覚えておきたいですね。

[監修者プロフィール]
居原田耕平(いはらだ・こうへい)
1996年より上海に渡り、1998年より上海中医薬大学にて中医学を5年間学び、卒業。中医学士。帰国後、漢方薬局・ドラッグストアーなどで、漢方相談・接客を行なう。2010年「登録販売者」資格を取得。2011年、クラシエ製薬株式会社に入社し、学術部を歴任。店舗向け漢方セミナーなどで講師を担当する。現在は、クラシエ製薬マーケティング部販促宣伝部・クラシエホールディングス広報部にて、漢方の普及につとめる
クラシエ公式サイト:http://www.kracie.co.jp/

<Text & Photo:岸田キチロー/Photo:Getty Images>

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