 
          【愛着障害】なぜ「試すような行動」をする?その理由は"不安の合図" (1/5)
「わざと困らせるようなことばかりする」「本当に愛してるか試すような言動が続く」。そんな"試し行動"に疲れていませんか? この行動の裏には、「見捨てられたくない」という切実な不安が隠れています。
一般社団法人マミリア代表理事・臨床心理士、公認心理師の鎌田怜那さん監修のもと、見ていきましょう。
「試し行動」とは? 愛着障害との関係性
試し行動とは、相手の愛情や関心を確かめるために、わざと困らせたり問題を起こしたりする行動のことです。
一見すると「わがまま」や「性格の問題」に見えますが、実は「本当に自分を見捨てないか」を確認しようとする不安の表れなのです。

この試し行動は、愛着の形成に課題がある場合に多く見られます。
「専門家の評価で医学的に『愛着障害(RAD/DSED)』と診断される場合もありますが、多くは『愛着の不安定さ(愛着スタイル)』として扱われ、必ずしも障害の診断が付くわけではありません。
愛着障害は、乳幼児期に十分な安定的養育や一貫した応答が得られなかった場合に生じやすい対人関係や情緒の課題を指します。原因はネグレクトや虐待、頻繁な養育者の交替など多岐にわたります。
「いつも助けてもらえる」という安心感が育たなかったため、「この人も結局は自分を見捨てるのでは」という不安が常につきまとい、それが試し行動として表れます。
子どもの試し行動は「本当に受け入れてくれる?」の確認作業
子どもの試し行動は、「安全基地の確認作業」と捉えることができます。
過去に養育者から適切な応答を得られなかった子どもは、新しい関係(先生、里親、養親など)に対しても「この人は本当に自分を受け入れてくれるのか」と疑います。
そこで、わざと困らせる行動を通じて相手の反応を試すのです。

具体的には以下のような行動が見られます。
- わざとルールを破って反応を見る
- 何度注意されても同じことを繰り返す
- 優しくしてくれた直後に暴言を吐く
- 物を壊したり、激しい癇癪を起こす
- 「どうせ嫌いなんでしょ」と挑発する
これは「怒っても見捨てないか」「悪い自分でも愛してくれるか」を確かめる行動です。子どもなりに「見捨てられる前に、自分から関係を壊してしまおう」という防衛反応でもあります。
対応の基本は「安心」と「一貫性」です。 試し行動が起きても感情的にならず、「あなたのことは大切だよ。でもその行動は良くないね」と、行動と人格を分けて伝えます。
何度試されても同じように接することで、「この人は本当に自分を受け入れてくれる」という安心感が少しずつ育ちます。
恋愛での試し行動は「見捨てられたくない」不安の表れ
大人の人間関係や恋愛関係においても、試し行動は見られます。
人間関係の中でも、とくに恋愛関係は密な関係性になるため、試し行動も出やすくなるものです。
これは医学的な「愛着障害」ではなく、心理学でいう「不安型愛着スタイル」に関連する傾向として説明されることが多く、根底には強い「見捨てられ不安」があります。

「本当に私のことが好きなの?」という不安から、相手の愛情を何度も確認せずにはいられません。しかし、直接「好き?」と聞くだけでは安心できず、さまざまな方法で相手を試してしまうのです。
また、試し行動には「境界線のテスト」という側面もあります。
「ここまでやったら嫌われるだろうか」「どこまでなら許されるのか」を確認しようとします。これは過去の関係で境界線が曖昧だったり、予測不可能な反応を受けたりした経験が影響しています。
大人の試し行動は、子どもと違って言語化されることが多い一方、より複雑で巧妙になります。相手を疲弊させ、結果的に本当に関係が壊れてしまうこともあります。
関係に重大な影響がある場合は専門家相談を検討してください。
次:こんな行動は「試し行動」かも。具体例で見てみよう
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