ヘルス&メンタル
2026年4月20日

ASD(自閉スペクトラム症)にはタイプがある? 5つの特性傾向 (1/2)

「自閉スペクトラム症(ASD)」という言葉を耳にする機会は増えましたが、「タイプがある」「特性の出方が人によってぜんぜん違う」という話を聞いて、どういうことなのか気になっている方も多いのではないでしょうか。

ASDの診断上の整理と、特性の“傾向”で理解するための見方、そして5つの代表的な傾向について解説します。

監修は、不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック院長の飯島慶郎先生です。

▶先に対人スタイルにおける「ASD」のタイプ【孤立型・受動型・積極奇異型・尊大型】を読む

ASDに「タイプ」はあるの?

結論からいうと、現在の医学的な診断基準では、ASDはひとつの診断名として扱われています。

かつては「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害(PDD)」「高機能自閉症」など、複数の診断名が使われていました。2013年、アメリカ精神医学会が診断基準「DSM-5」を改訂し、これらはすべて「自閉スペクトラム症(ASD)」に統合されました。

統合の背景には、イギリスの児童精神科医ローナ・ウィングの研究があります。

ウィングは共同研究者のジュディス・グールドとともに、1979年、南ロンドン・カンバーウェル地区の子どもたちを対象とした疫学研究を行いました。この研究をはじめとする一連の仕事のなかで、自閉症の特性には明確な境界線がなく、軽度から重度まで連続的に分布していることが示されていきます。

「カナー型自閉症」と「アスペルガー症候群」は一見まったく違う状態に見えるけれど、相手の立場に立った双方向的なやりとりが難しいという点では共通している。ウィングはそう主張しました。

「スペクトラム(連続体)」という考え方が、DSM-5での統合につながったわけです。

なぜ「タイプ分け」がされるようになったのか

では「タイプ分け」が話題になるのはなぜか。同じASDという診断名でも、特性の表れ方や困りごとの内容が人によって大きく異なるためです。

ある人にとってもっとも困難なのは対人関係であり、別の人にとっては感覚の過敏さだったり、ルーティンの変化への対応だったりします。

診断名は同じ「ASD」でも、日常で何に困っているかはまるで違う。だからこそ、支援や自己理解の文脈では、「どんな傾向が強く出ているか」で整理する見方が広まっています。

ASD(自閉スペクトラム症)によく見られる5つの傾向

ASDの特性は大きく「社会的コミュニケーション」と「反復・限定的な行動パターン」の2軸で整理されますが、実際の困りごとはより細かい傾向として現れます。代表的な5つを紹介します。

① 対人・コミュニケーションの傾向

相手の表情や声のトーンから感情を読み取ることが難しかったり、「空気を読む」「行間を察する」といった暗黙のルールにつまずきやすい傾向があります。

空気を読むことは困難

たとえば、妻が忙しそうにしながら「お風呂、いつでもいいよ」と言ったとする。

多くの人は「早めに入ってほしい」という含みを読み取ります。けれどASD特性のある人は「いつでもいい」を文字通りに受け取り、深夜になってから入浴する。

「なんでもっと早く入らなかったの」と言われても、「いつでもいいって言ったじゃん」となる。悪意はまったくないのに、「言葉の裏」を巡るすれ違いが日常的に積み重なっていきます。

雑談や世間話が苦手で関係づくりに困難を感じる人も少なくありません。「何を話せばいいかわからない」のではなく、「この場面で何が求められているかがわからない」という困難です。

② こだわりと反復行動の傾向

特定の分野や物事への強い興味・集中力が特徴です。

鉄道の時刻表、恐竜の分類、ゲームの攻略法など、対象は人によってさまざまですが、その没頭ぶりは驚くほど深く、専門家顔負けの知識を持っていることも珍しくありません。

ルーティンや手順へのこだわりが強い

一方で、日常のルーティンや手順へのこだわりが強く、予定の変更や「いつもと違う状況」に強いストレスを感じやすい面もあります。

登校ルートがいつもと違うだけで不安になる、給食の献立が急に変わると食べられなくなるなど、大人から見れば「些細なこと」でも、本人にとっては世界の秩序が崩れるような体験です。

「融通が利かない」と見られがちですが、見通しを立てることで安心感を得るという、その人なりの生きやすさの戦略でもあります。

③ 感覚の過敏さ・鈍感さの傾向

特定の音、光、匈い、肌触りなどに対して、一般的な感度とは大きく異なる反応が起こることがあります。

教室の蛍光灯のちらつきが目に刺さるように感じる。運動会のピストルの音で頭が真っ白になる。制服のタグが肌に触れるだけで全身がざわつくなど。

逆に、痛みや温度の変化に気づきにくく、骨折していても「ちょっと痛い」としか言わなかったというケースもあります。

感覚の問題は外からは見えにくいため、「わがまま」「大げさ」と誤解されがちですが、たとえば「黒板を爪でひっかく音が常に鸣っている教室で授業を受ける」ようなものだと想像すれば、その苦痛は少し理解できるかもしれません。

④ 言語・表現に関わる傾向

言語の発達には個人差があり、言葉の習得が早い人もいれば、言語表現に困難を抱える人もいます。

興味深いのは、語彙が豊富で文法的にも正確なのに、会話がどこかぎこちないというケースです。

話し方が大人びすぎていたり、まるで百科事典を読み上げるような口調だったり。アスペルガーは原著論文(1944年)のなかで、こうした話し方を「衒学的(げんがくてき/pedantic)」と記述しています。ウィングも1981年の論文でこの特徴に着目しました。

たとえ話が通じない傾向も

また、比喩や冗談が伝わりにくいこともあります。

「目が回るほど忙しい」と言われて、本当に目が回っているのかと心配する。「手を貸して」と言われて文字通り手を差し出す。

笑い話として語られることもありますが、本人にとっては日常的に生じるコミュニケーションの「ズレ」であり、積み重なれば大きなストレスになります。

なぜ会話が嚙み合わない? ASD(自閉スペクトラム症)に見られるコミュニケーションの特徴

⑤ 注意・情報処理の傾向

複数の作業を同時に処理したり、優先順位を柔軟に切り替えたりすることが難しいケースがあります。

特定のことへの集中は非常に高い一方、興味のないことへの注意持続が難しかったり、頭の中にある考えを整理して順序立てて伝えることに大きなエネルギーが必要となります。

「わかっているのに言葉にできない」「頭の中ではつながっているのに、説明しようとするとバラバラになる」という経験を語る当事者は少なくありません。

ADHDと重複することも多く、実際に両方の診断を受ける人も珍しくありません。ASDの「切り替えの難しさ」とADHDの「注意の散漫さ」は、外からは似て見えることもありますが中身はかなり異なります。

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