自己愛性パーソナリティ症の人にしてはいけないこと
ヘルス&メンタル
2026年9月25日

自己愛性パーソナリティ症の人にしてはいけないこと[心療内科医監修] (2/2)

自己愛性パーソナリティ症の人にしてはいけないこと

相手が正式な診断を受けているかどうかにかかわらず、身近にこうした強い傾向を持つ人がいると、対応に苦慮します。とくに善意や正論からの言動が、思わぬ反発や関係の悪化を招くことが少なくありません。

自分の心身を守り、トラブルを広げないために、とくに避けたい3つの対応を見ていきましょう。

1. 欠点やミスの頭ごなしの指摘

欠点やミスを正面から指摘して言い負かそうとすることは避けましょう。批判やプライドへの攻撃に極端に弱いため、頭ごなしの指摘は強い反発や攻撃的な態度を招きやすくなります。

伝えたいことがある場合は、相手を責めるような言い方を避け、必要な事実だけを短く冷静に伝えるようにしましょう。

ただし、相手が強い興奮や怒りを見せているときは、事実の指摘であっても反発を招きます。無理にその場で納得させようとせず、一旦その場を離れて時間を置くことが大切です。

2. 感情的な言い返し

相手の挑発的な言動に、感情的に言い返すことも避けたい対応です。売り言葉に買い言葉のやりとりは、関係の悪化を招くだけでなく、こちら自身の消耗にもつながります。

挑発に乗って同じ土俵で争うと、相手の攻撃的な言動をさらに激化させてしまいます。

理不尽な発言をぶつけられたときは、その場で白黒つけようとせず、短い相づちや事務的な確認に留めましょう。感情の波に巻き込まれない距離を保つことが大切です。

3. 理不尽な要求への無条件の同意

その場の空気を穏便に収めようとして、理不尽な要求に無条件で応じ続けることも避けましょう。要求をすべて受け入れていると、相手の要求がエスカレートし、こちらの負担が一方的に増えてしまいます。

無理な要求に対しては、曖昧な返事を避け、引き受けられる範囲と引き受けられない範囲の線引きを明確に伝える姿勢が大切です。

すぐに断りにくい場合は、「一度持ち帰って確認します」と時間を取り、その場での即答を避ける工夫も有効です。

なぜ? よかれと思った対応が裏目に出る理由

良かれと思ったアドバイスや、波風を立てないための配慮が、なぜこれほどまでにこじれてしまうのでしょうか。その背景には、自己愛の心理に特有の仕組みがあります。

誇大な自己像の裏に「もろさ」がある

頭ごなしの指摘が逆効果になりやすいのは、「自己愛的な傷つき」と呼ばれる反応が関係していると考えられています。

自己愛性パーソナリティ症の人は、誇大に見える自己像の裏に、もろく傷つきやすい自尊心を抱えていることが少なくありません。研究者はこれを「二つの顔」と呼びます。

堂々として押しが強い「誇大型」の顔と、批判に過敏で引きこもりがちな「過敏型」の顔。同じ人の中で、この二つの側面が入れ替わったり同居したりします。

「自己愛憤怒」という反応が出やすい

自己愛傾向が強い場合、批判や否定などを自己への脅威として受け止め、強い怒りや敵意につながることがあります。こうした反応を説明する概念のひとつが「自己愛憤怒(narcissistic rage)」です。

この概念は、精神分析家ハインツ・コフートが1972年の論文で提示したものです。提唱から半世紀を経た現在も、自己愛と怒り・攻撃性との関係を説明する概念として、臨床や研究で取り上げられています(※1)。

指摘の内容が事実であるほどかえって強い反発を招きやすいのは、こうした心の仕組みが背景にあると考えられています。

2021年に437件の独立した研究・約12万3000人を対象に行われたメタ解析では、自己愛傾向と攻撃性には関連がみられ、その関連は挑発のない状況よりも、挑発された状況で強いことが報告されています(※2)。

(※1)Kohut H. Thoughts on Narcissism and Narcissistic Rage. The Psychoanalytic Study of the Child. 1972;27(1):360–400. doi:10.1080/00797308.1972.11822721.
(※2)Kjærvik SL, Bushman BJ. The link between narcissism and aggression: A meta-analytic review. Psychological Bulletin. 2021;147(5):477–503.

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では、逆に相手を褒めさえすればよいのでしょうか。実は、相手の機嫌を取るために過度に持ち上げ続ける対応にも、注意が必要です。

過剰な称賛は一時的に関係を穏やかに保てたとしても、外部からの賞賛に頼らなければ自分を保てないというパターンを強めてしまう可能性があります。また、機嫌を取るための称賛だと相手に気づかれると、かえって不信感につながることもあるでしょう。

称賛そのものが悪いわけではなく、事実に基づいた評価を伝えることは自然なコミュニケーションの一部です。ただし、機嫌を取るための手段として使い続けることには注意が必要です。

自己愛性パーソナリティ症の人に振り回されないための対処法

避けたい対応がある一方で、自分を守るためにできる工夫もあります。相手との関係ごとに見ていきましょう。

家族の場合「やりとりを最低限に留める」

家族の場合は同居や親族関係などの事情から、簡単に距離を置けないことが少なくありません。すべての話題で張り合おうとせず、生活に必要な事務連絡に絞るなど、やりとりを最低限に留める意識が助けになります。

相手の性格を根本から変えようと期待しすぎず、まず自分自身の心を守ることを最優先に考えましょう。

パートナーの場合「周囲の視点を借りる」

パートナーの場合は自分の価値を相手の評価に委ねないことが大切です。関係を続けるかどうかも含めて、信頼できる第三者に相談しながら考えていきましょう。一人で答えを出そうとせず、周囲の視点を借りることが助けになります。

「モラハラ」という言葉があります。フランスの精神科医が1998年に書いた本が元になった言葉で、殴る蹴るではなく言葉や態度で相手を追い詰めていく暴力を指します。

こうした精神的な暴力も心身に重大な危害を受ける恐れが大きい場合には、日本でも2024年4月から配偶者暴力防止法の保護命令の対象になりました。身体的な暴力がなくても法的な保護を申し立てる道が開かれています。

つらいと感じたら、配偶者暴力相談支援センターや、全国共通の短縮ダイヤルであるDV相談ナビ(#8008)に相談してみてください。

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職場関係「やりとりの記録を行う」

職場の場合は、業務上のやりとりを客観的な事実として記録しておくことが有効です。指示や会話の日時や場所、具体的な発言内容をメモに残し、メールやチャットの履歴を保存しておきましょう。

感情的な対立を避け、業務に必要な範囲でのやり取りに徹するとともに、信頼できる上司や人事に早めに相談しておくと安心です。

日本では2022年から、すべての企業にパワハラ防止の措置が義務づけられました。人格を否定する言葉や人前での長時間の叱責は「精神的な攻撃」として、パワハラの類型に明記されています。

友人関係「距離を置く」

友人の場合は無理に関係を維持し続ける必要はありません。一緒にいることで精神的な消耗や負担が重すぎるようなら、少しずつ距離を置くことも、自分を守るための大切な選択肢です。

いずれの関係においても一人で抱え込まないことが大切です。精神保健福祉センターや保健所、公認心理師や臨床心理士など、信頼できる専門窓口に相談することが助けになります。

強いストレスが続いて心身に不調が出ている場合は、距離を取ることや関係そのものを見直すことも、自分を守るための正当な選択肢です。

辛い時、「悩みを相談できる人」がいない。誰かに話を聞いてほしい…どう切り抜ける?

監修者プロフィール

不登校/こどもと大人の漢方・心療内科
出雲いいじまクリニック 院長
飯島慶郎(いいじま・よしろう)

■公式サイト https://sites.google.com/view/izumo-iijima-clinic

■著書情報
『不登校は病気?〜医師の診断が子供と家族を救う〜』

著者:飯島慶郎(いいじまよしろう)/イラスト:わさび
出版社:みらいパブリッシング(健康・医療のフロントラインシリーズ)
発売日:2026年1月27日
判型:四六判・224ページ・ソフトカバー
価格:1,870円(税込)
ISBN:978-4-434-37267-4

心療内科医、臨床心理士、総合診療医、内科医、漢方医、産業医など、マルチドクターとして活動。得意とする分野は「心身症・不定愁訴」に対する漢方薬・向精神薬・心理療法・ケースワークを統合した総合的対人援助。心身の軽微な不調を入口にクライアントの「人生そのもの」を癒やすことを実践。近年は特に不登校診療に特化し、多くのこどもたちを改善に導いている。

<Text:外薗 拓 Edit:編集部>

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