ウェルネスフード
2019年12月6日

野生の鳥獣肉「ジビエ」はなぜダイエット食材としておすすめなのか

 食肉として飼育される牛や豚などと異なり、狩猟によって捕獲された野生の鳥獣肉、ジビエ。もともとは秋冬の狩猟解禁中だけ楽しめるフランス料理の高級食材というイメージでしたが、最近では年間を通して気軽にジビエ料理を楽しめる飲食店も増えてきています。

 特に近年、ジビエが高タンパク、低カロリーで栄養価が高く、アスリートの身体づくりにぴったりなヘルシー食材だということに注目が集まっています。実際にジビエを摂ることで、身体にどんな効果が期待できるのでしょうか。名古屋のジビエレストラン『百獣屋 然喰(ももんじぜんくう)』のオーナーでありアスリートフードマイスターの資格をもつ國井克己さんにお話を伺いました。

筋肉量を落とさず体重を落とす。シカ肉は減量中のアスリートにオススメ

 國井さんは猟期には愛犬とともに山を駆け巡りジビエを調達。調理もこなします。アスリート向けに食事を提供する一方で、自身もバイアスロンを嗜み、毎日トレーニングをかかさないアスリートです。

「国内で食べられるジビエにはシカ、イノシシ、クマ、野鳥などがありますが、アスリートにすすめるのはシカ肉とイノシシ肉。特にシカは牛や豚に比べて、低カロリー低脂肪ながら栄養素が群を抜いて豊富。まさに究極のダイエットフードです」(國井さん)

 下の表を見ると、シカ肉のカロリーは牛肉の約3分の1、脂質は約7分の1であるのにもかかわらず、たんぱく質は約1.5倍! シカ肉を摂ることを続ければ、筋肉を維持しながら脂肪を大幅に落とすことが可能です。実際に、減量中のボディビルダーに提供することが多いとのこと。

【参考】栄養成分比較(100gあたり)

▲出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

 さらに注目したいのが、鉄分の豊富さ。日々ハードなトレーニングをしているアスリートが陥りやすいスポーツ性貧血の予防に最適な食材といえます。

「なかでもエゾシカの肉は圧倒的に鉄分が多い。実際に自分は毎日エゾシカを食べ続けて、1か月間でヘモグロビン量が11g/dlから16.5g/dlまで増えました。体内の鉄分が増えることで持久力も上がりますよ」(國井さん)

エネルギー不足を補いたいときは、イノシシ肉でカロリー摂取

「イノシシ肉は必須脂肪酸を豊富に含んでいます。低糖質食でエネルギー不足になりやすいアスリートはイノシシ肉を食べれば良質の脂肪でカロリー摂取することができます。鍋など煮込み料理に脂溶性ビタミンを含む根菜、野菜類を加えればより効果的なビタミン摂取が可能です」(國井さん)

 イノシシ肉はシカ肉に比べれば高カロリーですが、それでも牛や豚に比べれば低く、シカ肉同様ビタミンや鉄分などの栄養素が豊富に含まれています。

「数値で見ると脂質も多いように感じますが、イノシシの脂の成分は不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。魚の脂のように、体内に溜まりにくい良質の脂なんです」(國井さん)

 シカ肉もイノシシ肉もビタミンB群が豊富に含まれており、疲労回復効果も期待できるそう。アスリートの身体にはいいことずくめですね。

家庭でも食べられるジビエの調理方法

 レストランへ行かなくても、家庭でおいしくジビエ料理を食べることはできるのでしょうか。

「イノシシ肉は豚肉と一緒。豚肉料理と同じ調理方法でおいしく食べられます。シカ肉はしっかり火を通す必要があります。薄切りにして焼くのがおすすめです」(國井さん)

「ジビエ肉の肉質は、誰が捕獲して、誰が解体して、誰が肉にしたかで決まります。ジビエは臭みがあるとか、硬いとか、マイナスイメージがある人もいるかもしれませんが、しっかり処理された肉であれば間違いなくおいしく食べられます。今はデパートの肉売り場で買えるところもありますし、きちんとした業者の肉がネット販売でも手に入ります」(國井さん)

 きちんと管理された商品は製品表示ラベルの個体番号によって管理されており、生産者がわかるようになっています。安全・安心なジビエ肉を選び、しっかり加熱調理をしておいしくいただきましょう。

【監修者プロフィール】
國井 克己 (くにい・かつき)
飲食店主であり猟師でもある。ジビエの捕獲から調理販売までこなすジビエのエキスパートでアスリートフードマイスター。店ではアスリート向けメニュープランの相談にも応じてくれる。

<店舗情報>
百獣屋 然喰(ももんじぜんくう)
https://theroast-and-grill.owst.jp/

<Text:丸山美紀(アート・サプライ)/Photo:Getty Images>