「国民的彼氏をつくる福袋」ってなに？松屋銀座の“スポーツ系福袋”がおもしろい

　読者の皆さんは、百貨店の初売りで「福袋」を買ったことがありますか？　イマドキの福袋は、ひと昔前とは比べ物にならないほどバラエティが豊富になっています。なかでも大手百貨店の松屋銀座は、毎年ユニークな「招福袋」を用意することで有名。今回も元プロ陸上選手の為末大さんによるかけっこ教室、プロの指導が受けられるゴルフセット、トレーニングジム付きの「国民的彼氏をつくる福袋」など、スポーツにまつわる意欲的（？）な商品ラインナップが揃いました。

　そこで編集部では、販売促進部に今回の福袋企画の背景について話を聞いてきました。

世相の反映と、松屋銀座らしさと

　案内された会議室で、松屋銀座の販売促進部・新井基哲さんは「銀座に本店を構える百貨店として、いまできることは何か。毎回、試行錯誤を繰り返しています」と切り出しました。若い従業員も自由に意見を出し合える雰囲気を大事にしつつ、柔軟な発想で毎年、福袋のテーマを決めているとのこと。世相を反映させる一方で“松屋銀座らしさ”も忘れない、そんなバランスにも配慮していると話します。

▲松屋銀座の販売促進部販売促進課販売促進チーム主任の新井基哲氏

　2018年のテーマは「魅せる福袋」に決まりました。「眼で見て楽しめるだけではなく、心も魅了する商品を揃えられるように心がけました」と新井氏。ちなみに福袋の販売個数は約400種類（30,000袋）と前年並みですが、このなかで体験型イベントが伴う福袋は約37種類へと急増しました。前年（13種類）の3倍近くに増えた理由について、新井氏は次のように説明しています。

「モノを買うことと同様に、体験にも大きな価値が認められてきた。そんな時代の流れを感じています。体験しないと成し得ないこと、そこのニーズに応えられれば」（新井氏）。

　百貨店では、商品の販売価格を値下げすることは容易ではありません。では、何が強みになるか。同氏は「お客さまに買い物プラスαの素敵な体験をしていただくことで、百貨店ならではの付加価値が実現できる。福袋にも、同じことが言えると思うんです」と話します。

「為末大プロデュース　かけっこスクールTRAC」体験つき福袋とは？

　体験イベントを伴ったユニークな福袋のなかで、まず目にとまったのが「為末大プロデュース　かけっこスクールTRACによる『めざせ9秒台！』」でした。君の足を速くする福袋、と説明が添えられています。これについて新井氏は「小学生をターゲット層に想定したもので、未来のオリンピック選手を輩出できるようなコラボ企画になりました」と自信を込めて説明します。一体、どんな内容なのでしょうか。

▲為末大プロデュース　かけっこスクールTRACによる『めざせ9秒台！』の招福袋が登場。一体、どんな内容なのでしょうか

　これはTRACによるかけっこスクール全2回の参加券と、シューズ引き換え券がセットになったものでした。為末さんが「特別レッスン」と「靴選びの指南」をするもので、松屋銀座6階に入っている子ども服売り場のシューズが、引き換え券の対象となっています。大手百貨店ならではの「商品」と「体験イベント」の組み合わせと言えるでしょう。価格は20,000円で、限定15個の販売です。なかには「為末さんに会いたいので購入したい」という人もいるそうです。

「為末大さんは言わずと知れたオリンピアン。日本記録の保持者であり、広く一般の人にも知られています。そのため、発表して以来、大きな反響をいただいています。実は、社会人の方からも『私も買いたい』とのご要望をいただいているんですが、今回はご遠慮いただいてて。為末さんのスクールは大人向けのクラスもあるので、そちらをご利用くださいとご案内しています」（新井氏）。

　でも再来年、もしかしたら大人向けの内容でも同招福袋が登場するかも知れません、と笑っていました。

福袋でつくろう、国民的彼氏

　そして、やはり気になったのが「国民的彼氏をつくる福袋」。ここで松屋銀座が言う“国民的彼氏”とは「同世代の女性だけでなく、母親やその上の世代からも支持される男性。さわやかで礼儀正しく、スポーツマン」だそうです。そんな男性を、福袋でつくり上げてしまうとは。ますます袋の中身が気になります。どんな発想から、ここにたどり着いたのでしょうか。

「こちらは、女性社員が女性目線で選んだ、幅広い世代から愛されるシンプルかつ上質なカジュアルファッション、身だしなみグッズなど10点と、トレーニングジムによる全身の3Dスキャン測定、パーソナルトレーニングがセットになっています。洋服でオシャレをしてもらいつつ、フィットネス体験を通じて健康的な体をつくってもらえれば」と新井氏。港区麻布の「3D Body Lab」で本格的なトレーニングが体験できるとのことでした。価格は27,000円で、わずか10個の限定販売となっています（75,000円相当の商品）。

▲シンプルかつ上質なカジュアルファッション、身だしなみグッズなど10点がセットに。ちなみに写真のモデルを務めたのは、松屋銀座紳士部の土屋宗大さん

　新井氏によれば、メインターゲットは20～40代の男性。男性自身で購入しても良く、またお付き合いをしている女性や夫婦間で、女性から男性にプレゼントすることも想定しているそうです。

「男性が外見だけでなく、内面も含めて変わるきっかけを提供できれば。購入に際して年齢制限は設けていないので、旦那さんにはいつまでも健康で若々しくいて欲しいと願う奥さま方にもお薦め。シャツ、インナーのカットソー、パンツ、ジャケット、マフラーと全身のコーディネートが揃うセットになっています」（新井氏）。

▲別々に購入すれば招福袋の価格を上回る全身のコーディネートが一度に揃うのもうれしいところ。女性社員が厳選したアイテムとあり、清潔感ある彼氏が完成することが期待できます。

福袋とホールインワンの深い関係

　MELOS編集部としては、「MYクラブでホールインワン福袋」も気になりました。福袋とホールインワン、どのような関係があるのでしょうか。福袋の価格についても驚きの要素があり、ほかの招福袋とは趣きが異なるのを感じます。

▲ゴルフ好きなら皆が憧れるホールインワン。福袋と、どのような関係があるのでしょうか

「こちらはお客様のスイングを分析させていただいた上で、個人の癖や特徴に沿った形でプロがカスタムオーダーしたクラブを提供します。また料金内でプライベートレッスンも用意しております。ゴルフ初心者にも経験者にもご購入いただければ」（新井氏）。ゴルフクラブ自体が高価であるため販売価格は190,000円と高価ですが、その内容から考えれば破格の安さとのこと。限定5セットとなっています。

▲PGA公認のインストラクター田中義彦氏による1回50分×5回分のプライベートレッスン付きです

　いわゆる銀座通りに面した、繁華街の中心地に店舗を構える松屋銀座ですが、その屋上にはゴルフの打ちっぱなし練習場があり、また6階ゴルフ用品売り場にはスイングを分析できる個室も用意されているというのは、あまり知られていないのでは？

▲計測器「トラックマン」で取得したデータを元に、クラブをカスタムオーダー

　新井氏は「世界で活躍できる日本人のプロゴルファーが出てきました。最近では、若い女性にもゴルフ人気が拡がっています。2018年は、この招福袋を購入いただいてマイベストスコアを更新してもらえたら」とアピールしていました。

教育熱を感じる

　毎年6月頃から世間のニュースや出来事、エピソードをチェックし始め、8月に入ってから本格的にテーマを決めていくと新井氏。「販売促進課と広報課を中心にアイデアを出し合い、ブラッシュアップしていくわけですが、当然のことながらボツになったアイデアの方が圧倒的に多い。練り直し、練り直しの繰り返しですね」と苦笑いします。

　ここ最近の傾向として、子どもの教育に関心が高い家庭が増えてきたとのこと。「今年の10月にお子様向けのワークショップを開きましたが、台風と重なってしまいました。タイミングの悪いことに、屋外で行う体験イベント。でも、結果として去年よりも参加者が多かったんです。学ばせる機会があれば参加させたい、という教育熱の高まりを感じています」。為末さんの福袋も、そんな想いが形になったものと言えそうです。

　百貨店として商品を販売すると同時に、「上質なサービスを提供することでお客様に良い思い出をつくっていただければ」と新井氏。“究極の満足感”の実現を目指しており、「新年1発目の招福袋の販売には、毎年力が入ります」と話していました。ほか、定番となった人気の「リタズダイアリー招福袋」、販売価格1300万円の「ロマネ・コンティ6本セット福袋」など、ユニークな招福袋が2018年にも登場します。

　発売は1月2日の朝9時30分から。招福袋の内容は同社ホームページで確認できるほか、新聞の折り込みチラシでも告知していく予定です。気になった方は、チェックしてみると良いでしょう。

《参考サイト》
・松屋銀座「招福袋」
http://www.matsuya.com/m_ginza/sp/20180102_fukubukuro_e.html

＜Text & Photo：近藤謙太郎＞