ストレス発散に効果的な方法は?ストレスを溜めない予防策も紹介
日頃からストレスを感じやすい方や溜め込んでしまう方へ向けて、手軽にできるストレスの発散方法と溜め込まないための予防方法についてまとめました。ストレスの程度に合わせて対処できるよう、段階を分けて説明しています。今この記事を読まれている読者の方はもちろんのこと、ご家族や同僚などストレスを抱えている身近な方へも共有していただけたら嬉しいです。
ストレスって何?
この章では、「ストレス」とは何か?という基本概念についてのご説明をします。
(ストレスの発散方法だけ知りたいという方は次章に飛んでいただいて構いません。)
ストレスとはストレッサーによる反応のこと
ストレッサーとは、ストレスの”元となる要素”のことをいい、以下のようにいくつか種類があります。
- 物理的ストレッサー:寒さ、暑さ、臭い、騒音など
- 化学的ストレッサー:公害物質、薬物、酸素の欠乏や過剰など
- 心理・社会的ストレッサー:人間関係、困難な仕事、国籍や年齢・性別による差別的風潮など
ストレスとはストレッサーによる”刺激に対する反応”のことをいいます。
この「ストレス反応」もまた、以下のように分類することができます。
- 身体的ストレス:心拍数や呼吸が速くなる、筋肉が緊張する、不眠、頭痛や胃の不快感など
- 行動的ストレス:飲酒や喫煙量の増加、注意欠如など
- 心理的ストレス:不安や焦燥感、イライラ、集中力の低下など
ストレス要因が多いと自覚するのは難しい
ストレスの要因(ストレッサー)は多岐にわたります。多くの人に共通するもので例えると、仕事や学業に関するプレッシャーや過度の責任感、人間関係の葛藤、経済的な不安、健康上の問題、環境の変化などが挙げられますね。
仕事や学業における過度の期待や競争、時間の制約などの外的要因でストレスになることもあれば、過去のトラウマや不快な経験、自己イメージや自己評価の低さなどの内的な要因もストレスの発生に影響を与えることがあります。
さらに、このような要因が重なることで複合的に多様なストレスを引き起こすため、自覚し管理することは簡単なことではありません。
長期的なストレスによる影響
厚生労働省:こころの耳「ストレスからくる病」によるとストレス関連疾患(心身症)として、高血圧や気管支喘息、顎関節症などの身体疾患の発症リスクになり得るとされています。
また、心理的な影響としてストレッサーによる不安、抑うつ、イライラ、集中力の低下、自己否定感などが長期間続くと、うつ病や希死念慮などの精神的な問題を引き起こす可能性があります。
さらに、ストレスの増大や長期化で人間関係が悪化し孤立する、経済的に困窮するなどの社会的な影響に及ぶ可能性もゼロではありません。
これらの影響は個人の感受性や環境によって異なりますが、健康的な生活を送るためには適切な自己管理とストレスの発散方法を身につける必要があります。
ストレスとの向き合い方
論理的にはストレスとストレッサーの関係を分析し、理解することでストレス発散までのステップを見いだせるように思うかもしれません。しかし実際には、個々人の置かれている状況や感じているストレスの強さによってはこれらを区別し、判断することが難しい場合もありますよね。
そのため、頭で考えるよりも胸に手を当てて、「自分がいま感じているストレスの強さがどのくらいなのか」を問いかけ、日頃から把握しておくことの方が大切だと思います。また、このストレスの強さというのは誰かが決めた尺度ではなく、自分で決めた尺度で大丈夫ということを忘れないでくださいね。
「少し疲れたな」と感じたら、次の章でご紹介するストレスの発散方法を試してみてください。
ストレスの発散方法
ここでは、ストレスを軽度から重度までの段階に分類し、それぞれに適した発散方法をまとめました。なお、以下に記載している段階の定義は筆者の恣意的なものになりますので、個人の感じ方や環境によってアレンジしていただければ幸いです。
軽度のストレス
身体的な不快感や心理的な疲労があるが、日常生活に支障を与えない程度のストレス。
一時的なストレスや短期的なイベントに対する一般的な反応。
軽度なストレスの発散方法
- 運動や趣味に没頭する
- 友人や家族と話す
中程度のストレス
日常生活に一定の支障をきたし、活動能力やパフォーマンスに影響を与える程度のストレス。
身体的な症状が表面化し、不安やイライラが継続的に現れる。
中程度のストレスの発散方法
- 何もしない時間を確保してリラックスする
- 自己肯定感を高める
- 専門家のサポートを受ける
重度のストレス
日常生活に深刻な支障をきたし、日常活動や社会的関係に大きな影響を与える程度のストレス。
慢性的な身体的症状や精神的な問題が顕著になり、生活の質や幸福感が著しく低下する。
重度のストレスの発散方法
- 休養、自己ケアに専念する
- 専門家のサポートを受ける
- 問題解決に向けたアクションを取る
逆効果になるストレス発散方法
一部のストレス発散方法は、逆にストレスを増大させる可能性があります。以下に逆効果になるストレス発散方法をいくつかご紹介します。
過度の飲酒や喫煙
アルコールやたばこは、一時的にはストレスを和らげるように感じるかもしれませんが、過剰な摂取は身体に負担をかけ、ストレスを増大させる原因となります。
感情の抑制や無視
感情を抑え込んだり無視したりすることは、ストレス発散には何の役にも立ちません。ネガティブで恥ずかしい場合もあるかもしれませんが、自分の内側にある感情を認め、できれば身近な人に表現するようにしましょう。もしかすると、正直に話すことでより良好な関係を築くことだってあるかもしれません。
ストレスを受けやすい人の特徴
ストレスに対する感受性は個人によって異なりますが、一般的に以下のような特徴を持つ人々がストレスを受けやすい傾向があります。
パーソナリティ特性がある人
J-Stage「タイプA行動パターンとストレス反応」(佐藤 豪)によると、神経質である、仕事熱心で完璧主義者であるなどのパーソナリティ特性(「タイプA」と呼ばれる)がある人は、自分の幸福が不安定なものであるという恐怖心から過度な適応努力をしてしまい、結果としてストレスを感じやすく、重度のストレス反応を示しやすいと言われています。
生活環境にストレッサーが多い人
高ストレスの職場環境や家庭環境に身を置いている人は、日常的にストレスを受けやすい傾向があります。環境を変えることは気軽にできることではありませんが、ストレスが慢性化してしまう前に転職や引越しなどを検討しましょう。
ネガティブ思考な人
ネガティブ思考によって自己肯定感が下がってしまうことはないでしょうか。1章で述べたように、ストレスには外的要因だけでなく、ネガティブ思考や自己肯定感の低下などの内的要因により引き起こされることがあります。
ネガティブ思考になるということは脳が疲れているとも捉えることができます。何も考えない、甘いものを食べるなどして、脳を回復させることに注力しましょう。
ストレスを溜めないための予防策
ストレスを溜めないために、日常生活の中でいくつかの予防策を取ることを心がけましょう。以下に、予防方法をいくつかご提案したいと思います。
ToDoリストと優先順位をつける
仕事や勉強に限らず、日常生活でもタスクや予定を整理し、重要なことから順に取り組めば、自ずと達成感と自己肯定感を得られます。面倒臭がらずに、ポジティブな気持ちで取り組んでみてほしい予防策です。
リラックスや休息の時間を確保する
忙しい日々の中で、自分のためのリラックスや休息の時間を確保することが大切です。趣味や興味関心のある活動を楽しんだり、マインドフルネスや瞑想を行ったりするのもおすすめです。
落ち着いた時間を作る、つまりは心に余裕を作ることで、軽度〜中程度のストレスなら自力でリカバリできるでしょう。
コミュニケーションを大切にする
コミュニケーションの不足や誤解は、度々ストレスを引き起こす要因になります。良好な人間関係を築くためにも、普段から周囲の人とのコミュニケーションを大切にし、適切に意見や感情を伝えられるようにしましょう。
健康的な生活習慣を維持する
適切な栄養摂取や十分な睡眠、定期的な運動など、健康的な生活習慣を維持することは、ストレスへの対処能力を高めるのに役立ちます。また、身体的な健康が維持されると心の安定にもつながります。心と身体の関係について厚生労働省のページを以下に引用します。
普段からだは自律神経系・内分泌系・免疫系のバランスによって微妙に調節されています。しかしストレスによりこのバランスが崩れたりすると、からだの病気が生じます。逆にからだの病気はこころにも影響します。””
自分に合うストレス解消法を見つけよう
今回はストレスの発散方法だけではなく、ストレスの基本概念からストレスを感じやすい人の特徴、NG行動まで幅広くまとめました。
この記事でご紹介したストレスの発散方法は汎用的なので、自分にぴったりの方法を見つけてアレンジしてみてくださいね。「自分はどうやったらストレスが解消されやすいのか」を考えてみるきっかけになれば幸いです。
監修者プロフィール
不登校/こどもと大人の漢方・心療内科
出雲いいじまクリニック 院長
飯島慶郎(いいじま・よしろう)
心療内科医、臨床心理士、総合診療医、内科医、漢方医、産業医など、マルチドクターとして活動。得意とする分野は「心身症・不定愁訴」に対する漢方薬・向精神薬・心理療法・ケースワークを統合した総合的対人援助。心身の軽微な不調を入口にクライアントの「人生そのもの」を癒やすことを実践。近年は特に不登校診療に特化し、多くのこどもたちを改善に導いている。
https://sites.google.com/view/izumo-iijima-clinic
<Edit:編集部>