
氷をボリボリ食べたくなる人は要注意。氷食症は「鉄分不足」のサイン[医師監修] (1/2)
気がついたら冷たい氷をボリボリかじっている――実はその習慣、単なるクセではなく「氷食症」と呼ばれる症状の可能性があり、鉄欠乏性貧血と深い関連があると報告されています。
特に20〜40代の女性には隠れ貧血の割合も高く、放置すると疲労感や集中力低下、肌・髪のトラブルまで引き起こすことも。
予防医学の観点から、新百合ヶ丘総合病院の袴田拓先生に、鉄分の役割、見逃しがちなサイン、食事での工夫などをお聞きしました。
氷を食べたくなる「氷食症」は鉄分不足のサインかも
氷をかじる行為を繰り返す状態は「氷食症」と呼ばれ、原因は完全に解明されていないものの、鉄欠乏性貧血との関連が強く示されています。
袴田先生によれば、「鉄が不足すると体温調節や自律神経に影響を与え、口内が熱く感じられて氷を食べたくなることがあると考えられています」とのこと。
氷食症は20〜40代の女性に多く、鉄欠乏性貧血患者のうち約10〜16%で見られるとされています。身近な“クセ”が、体の重要なサインである可能性を覚えておきましょう。
鉄は「血」を作るだけじゃない。体のあらゆる機能に関与する必須ミネラル
「鉄の主な役割は血液中のヘモグロビンを構成し酸素を運ぶことですが、それだけではありません。鉄は細胞レベルのエネルギー産生に関与し、不足すると疲労感、倦怠感、集中力や記憶力の低下、風邪をひきやすくなるといった症状が出ます。
さらにコラーゲン合成にも関与するため、皮膚トラブルや歯茎からの出血、知覚過敏、抜け毛、冷え、関節・腰の違和感、不妊など多岐にわたる不調につながることがあります。鉄は美容とパフォーマンスの両面で重要な栄養素です」(袴田先生)
血液検査で見逃される鉄不足「隠れ貧血」に注意
血液検査で明確な貧血と診断されなくても、体内の鉄貯蔵が減っている「隠れ貧血(貧血のない鉄欠乏)」の状態は少なくありません。
厚生労働省のデータを踏まえると、鉄欠乏性貧血と隠れ貧血を合わせると日本人女性でかなりの割合に上ると推定され、特に20〜40代女性では約半数が隠れ貧血に該当するという報告もあります。
「だるさや疲れ、肌の調子の悪さを感じる場合は、鉄の摂取状況を見直すとともに医療機関での検査も検討しましょう」(袴田先生)
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