ヘルス&メンタル
2025年10月30日

【意外】「セロトニンの9割は腸で作られる」が、脳には届かないってホント? (1/2)

「セロトニンの9割は腸で作られる」と聞いたことがある人は多いかもしれません。

セロトニンといえば、心の安定や幸福感に関わる“幸せホルモン”のひとつ。だからこそ、「腸内環境を整えるとメンタルにも良い」とよく言われます。

しかし、腸で作られたセロトニンは、脳には届かない仕組みになっています。「えー! 腸を整えればセロトニンにいいって話は、じゃあウソ?」驚きますよね。

腸でセロトニンを増やしても意味がないのでしょうか? 答えは「NO」。……どっちなのよ! 天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック院長の安江千尋先生監修のもと、くわしく見ていきましょう。

セロトニンの約9割は「腸」にある。でも、それは“脳のもの”じゃない

腸内には、私たちの体内にあるセロトニンの約90〜95%が存在しています。このセロトニンは主に消化管の運動(ぜん動運動)や血小板の働きなどに使われており、中枢神経のセロトニンとは別物と考えるのが正確です。

脳内で気分や睡眠、食欲に関わるセロトニンは、「トリプトファン」というアミノ酸から脳内で合成される必要があるのですが、腸で作られたセロトニンそのものは「血液脳関門(血液中の有害物質が脳に入らないようにするバリア的な仕組み)」を通過できないため、残念ながら脳には届きません。

セロトニンの場所 役割 脳との関係
腸内(約90%) 主に消化管の運動調節 脳には届かない
血中セロトニン 血小板などで存在、血管の収縮などに関与 脳には届かない
脳内セロトニン(中枢神経) 気分・睡眠・幸福感・食欲などの調節 ここがメンタルに重要!

じゃあ腸内セロトニンはムダ? いいえ、「腸脳相関」がカギ

ここで重要なのが、近年注目されている「腸脳相関(gut-brain axis)」という考え方です。

これは、腸と脳が神経・ホルモン・免疫を通じて相互に影響しあっているというもので、腸内環境が間接的に脳機能やメンタルに関わっていることが示されています。

  • 腸内細菌がトリプトファンの吸収をサポートすることで、結果的に脳内セロトニンの材料が増える
  • 腸内細菌が神経伝達物質様の物質(GABA、ドーパミンなど)を産生し、迷走神経を通じて脳へ情報を送る
  • 腸内環境の悪化が炎症やストレス反応を高め、脳のセロトニン系に悪影響を及ぼすことも

つまり、腸で作られるセロトニンそのものが脳に届かなくても、腸内環境を整えることが脳のセロトニンバランスを“間接的に支えている”というわけです。

実際に、近年の研究では以下のような報告があります。

  • 腸内環境を整えることでうつ病や不安症状が軽減される可能性
  • プロバイオティクス(乳酸菌・ビフィズス菌など)を摂取したグループの方が、ストレス耐性が高まった
  • 発酵食品を日常的に摂ることで、前向きな気分を感じやすくなるという傾向

これらはすべて、「腸が脳に影響を与えている」ことを裏付けるデータの一部です。

「腸で作られるセロトニンは脳に届かない」は事実だが……

というわけで、腸で作られたセロトニンは直接脳には届きません。しかし、腸内環境が整うことでセロトニンの材料がしっかり吸収され、メンタルの土台が支えられることは、今や多くの研究で示されています。

「腸で作ったセロトニンが脳に行く」→ ✕ ウソ
「腸を整えると脳のセロトニンバランスに良い」→ 〇 間接的にホント

「腸は第二の脳」とも言われるほど、私たちのメンタルや神経活動に影響を与えている器官です。直接的ではなくても、腸内環境を整えることは“心の健康”を整えることにつながります。

なぜ「腸内環境を整える」ことがメンタルケアにつながるのか。メンタルに不調を抱える人に共通する“腸内環境の特徴”

次:今日からできる! セロトニン分泌をサポートする4つの腸活習慣

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