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美しい、の多様性を知ること。┃連載「甘糟りり子のカサノバ日記」#2

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 アラフォーでランニングを始めてフルマラソン完走の経験を持ち、ゴルフ、テニス、ヨガ、筋トレまで嗜む、大のスポーツ好きにして“雑食系”を自負する作家の甘糟りり子さん。スポーツのあれこれをつまみ食いしながら、気になるあの話題やトレンドに、ときに鋭く、ときにゆる~く切り込んでいく本連載。女性のタイツ一枚スタイルについて触れた前回には、読者の皆さんからもたくさんの反響がありました。

 連載2回目の今回は、いまや一般的になったパーソナルトレーニングを体験。そこで感じた「美しさ」について。

どうして毎朝歯を磨くのに、毎朝腹筋をしないんですか?

 かれこれン十年頼の友人であるミカジョンこと元ピーチ・ジョンの野口美佳ちゃんと彼女のパートナーのりょうくんが経営する港区某所のプライベート・ジムに行ってきました。その名も「シルバーバック・トウキョー」。ちょっとした緊張感とともに向かいました。勝手に道場破りな気分もあったりして。

 というのもですね。ミカジョンのインスタには、時々、ジムの様子がアップされています。「#今日のお客様」というハッシュタグで映し出されているのは、(恐らくは追い込まれて)ヘトヘトになって床にうずくまっている人々なのです。中途半端な筋トレ好きの私としては、「ああ、私もあんなふうに自分の限界まで追い込まれたい!」という気持ちと、「いや、私はどんなにキツいトレーニングを受けてもすくっと立ち上がってみせたい!」という欲求が己の中で激しくぶつかっていたのです。あら、つい大げさになってしまいました。初めてのトレーナー&ジムを経験する時って、私はこんな心持ちになるのですよ。

 東京タワー近くに位置するビルの地下、薄暗い階段を下った先にある黄色いネオンの看板は、あちらが地下なのにまるで私が見上げているかのように感じます。扉を開けてジム内に入ると、そこにはジムばなれしたファッショナブルな空間が広がっておりました。ゆったりした革のソファやらバー・カウンターやらがあって、カウンターの頭上には鹿の剥製! とにかくいちいちおしゃれ。ここでバーボンの水割りかなんか飲みたいなあ、なんて思っちゃいました。何しに来たのか? 私は。

 着替えて早速トレーニングです。トレーナーのりょうくん曰く、トレーニングの前のストレッチは必要ない、とのこと。メロスの読者にはご存知の方も多いと思いますが、筋トレは、負荷をかけて動かすことによって筋肉を壊し、それが再生しようとすることによって筋肉が育つわけですね。ですが、動かす前に筋肉が伸びきってしまうと、負荷をかけてもちゃんと筋肉破壊ができないそうです。

 トレーニングは両足首をゴムの輪っかに通しての中腰カニ歩きから始まりました。これ、地味だけれどそこそこキツかった。や、見栄はりました、かなりきつくて身体も暖まりました。ゴムを纏ったまま、次はジャンプ。これらをしてみたところ、私の骨盤はバランスが良くないことを指摘されました。左の腰周りが硬い。これは今までずっといわれてきたことで、自分の弱点もあります。ゴルフもテニスもたまにするサーフィンもみんな左の腰が中心なのに。

 ベルトをはずし、骨盤矯正ベルトなるものが出てきました。骨盤に当たる部分にはネジのようなものがついており、腰にはめただけでけっこう痛い。なんでもセミナーを受けた人だけが使えるもので、はめることによって骨盤を正しい位置に戻してくれるのだとか。確かに腰が軽くなりました。もちろんこれは一時的なもので、また少しずつ元に戻ってしまいますが、定期的にこれをはめることで骨盤が矯正されていくとのこと。

 その後、下半身の強化メニューをいくつかして、最後は腹筋でした。私、思ったよりヘタってないじゃん! と内心思っていたのですが、四つん這いになって吊り輪にそれぞれの足をかけ、ヒップを上に引き上げるという腹筋で息が上がり、カウントが終わったとたん床に突っ伏してしまいました。最後の最後にぺしゃんこに……。残念無念、です。ちなみにこの日の朝食はバナナとコーヒーのみ。お腹が空いているはずなのに、水を飲んでもこみ上げそうになるこの感じ、わりと好きです。

 私はこれまで、さまざまなジムでいろんなトレーナーの人についてもらいました。最近は、時間がまとまって空いた時にジムに行って自分なりに追い込んでいます。ところが、りょうくんは、あんまり毎回オールアウトを目指さないほうがいい、という。

「トレーニングをもっと日常にしなくちゃ。どうして毎朝歯を磨くのに、毎朝腹筋をしないんですか? 僕はそう思っちゃう」

 ですよねえ。わかっちゃいるんだけど。いや、わかっているんなら、毎朝腹筋をやらなくちゃ。もとい、やろう!!!

 さて、トレーニング中に言われて印象的だった一言があります。たくましい脚がコンプレックスの私が、これ以上脚に筋肉をつけたくないというと、「大きさに美しさがあるんですよ」。

 多様性という言葉を人々が口にするようになった昨今、細いばかりが「スタイルがいい」わけではないのかもしれません。もっとそれを知ろうとしなくちゃね。

 ジムの名前である「シルバーバック」とは、ゴリラの群れのボスを指すのだそうです。ここは「強い」という美しさを求める人のための空間。会員になるとプレゼントされるというオリジナルの革ベルトには「got a pump?」と印されています。やっぱり、いちいちおしゃれだよ、このジム。

[プロフィール]
甘糟りり子(あまかす・りりこ)
神奈川県生まれ、鎌倉在住。作家。ファッション誌、女性誌、週刊誌などで執筆。アラフォーでランニングを始め、フルマラソンも完走するなど、大のスポーツ好きで、他にもゴルフ、テニス、ヨガなどを嗜む。『産む、産まない、産めない』『産まなくても、産めなくても』『エストロゲン』『逢えない夜を、数えてみても』のほか、ロンドンマラソンへのチャレンジを綴った『42歳の42.195km ―ロードトゥロンドン』(幻冬舎※のちに『マラソン・ウーマン』として文庫化)など、著書多数。『甘糟りり子の「鎌倉暮らしの鎌倉ごはん」』(ヒトサラマガジン)も連載中。

<Text & Photo:甘糟りり子>

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