インタビュー
2019年4月24日

この時代に間に合ってよかった。プラスサイズモデル活躍から考える、美しさの基準│連載「甘糟りり子のカサノバ日記」#28 (2/2)

 「Savage X Fenty」というこのブランド、ショーツのサイズはXSからXXXLまで、ブラジャーのサイズは32Aから44DDまで取り揃えています。2018年の秋に行われたショーには、さまざまな肌の色や体型のモデルが登場。中にはプラスサイズモデルの活動家や臨月のモデルもいたそうです(なんでも、ショーの後に病院に直行し、出産したんだとか)。

 布に自分を合わせるのではなく、自分に合わせた布を選ぶようになったのです。かつてココ・シャネルがコルセットから女性を解放してジャージ素材でスーツを作ったように、リアーナは女性たちをサイズの呪縛から解き放ってくれました。映画『オーシャンズ8』では女優に挑戦していたリアーナですが、こういう人には歌手だの女優だのという肩書きは必要ないのかもしれませんね。

▲「Savage X Fenty」を立ち上げたリアーナ

 とはいえ、流行れば流行るほど「プラスサイズモデル」という言葉が一人歩きして、そこにいくつかの問題も生まれてくるわけで。まず、そうはいっても、モデルとして活躍している人の多くはごく標準のサイズで、モデルとしてはプラスサイズなだけではないかという意見や、アジア人や黒人のプラスサイズモデルがほとんどいないという意見もあります。

 私はツイッターで「藤井美穂さん」というハリウッドを拠点とする女優&プラスサイズモデルのかたをフォローしております。彼女は163センチで80キロとのこと。正真正銘の「プラスサイズ」で「アジア人」のモデルさんです。ハリウッドでは役をもらうのは大変らしく、主にコメディ俳優をされていて、脚本家もこなすそうです。彼女のツィートによると、やはり最近はプラスサイズモデルとしての仕事が増えているみたい。ぜひググってみてください。勇気付けられるんじゃないかな。体型云々ではなく、その戦っている姿に。

 プラスサイズモデルが注目されるのはとてもいいことだと思いますが、自堕落に太っているのを都合よく肯定しようといっているではありません。美しさの基準は多々あるということ、他人が感じる美しさと自分の感じるそれが違っても批判しないこと、この二つを主張したいです。

[プロフィール]
甘糟りり子(あまかす・りりこ)
神奈川県生まれ、鎌倉在住。作家。ファッション誌、女性誌、週刊誌などで執筆。アラフォーでランニングを始め、フルマラソンも完走するなど、大のスポーツ好きで、他にもゴルフ、テニス、ヨガなどを嗜む。『産む、産まない、産めない』『産まなくても、産めなくても』『エストロゲン』『逢えない夜を、数えてみても』のほか、ロンドンマラソンへのチャレンジを綴った『42歳の42.195km ―ロードトゥロンドン』(幻冬舎※のちに『マラソン・ウーマン』として文庫化)など、著書多数。『甘糟りり子の「鎌倉暮らしの鎌倉ごはん」』(ヒトサラマガジン)も連載中。河出書房新社より新著『鎌倉の家』が刊行。

<Text:甘糟りり子/Photo:Getty Images>

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