【インタビュー】元プロサッカー選手の西山哲平氏、『AC長野パルセイロ』へ役職就任。チームやクラブを強くする“戦略”を聞いた
元大分トリニータの西山哲平氏が、2025年12月5日、AC長野パルセイロのスポーツダイレクター兼トップチーム強化部長に就任しました。今回の就任について西山氏にインタビューを実施したので、その内容をお届けします。
──役職に就任したときの率直な感想を教えてください。
西山氏:クラブが変革期を迎えようとしている中で、その役割は非常に重要ですし、重責を担っていると感じています。
トップチームの強化はもちろんですが、ビジョンの策定、組織の在り方の見直し、強い組織を作っていければと思っています。
──ファンや関係者に対して、最初に伝えたいメッセージは何ですか?
西山氏:外から来た人間として思ったのは、球技専用スタジアムを持つ長野パルセイロは、非常に恵まれているクラブだと。そのスタジアムをいっぱいにしたい。(現地に)足を運んで「長野パルセイロを見たい」と思っていただけるようなサッカーをお見せしたいと思っています。
──過去の経験の中で、今回の役職に活かせそうなエピソードはありますか?大切にしてきた価値観やこだわりなどもあれば教えてください。
西山氏:前所属の大分トリニータでは、チームがJ3に降格が決定したタイミングで強化責任者に着任しました。そこから幸いにもJ2・J1昇格を果たすことができました。
ケースは同じとは言えませんが、すべてのカテゴリーで昇格した経験はきっとパルセイロでも活かせると考えています。
また、大分トリニータは予算規模的にJ2では中位以下に位置付けするクラブでした。そのような環境では、いかにコストパフォーマンスを最大に発揮するかが肝で、そういったやりくりの経験も活かせそうだと思っています。具体的には、アイデアやグループ力で相手を上回ることだと考えています。
また、グループを構成するメンバーひとりひとりの『人間性』も重要視しています。しんどいとき、仲間のためにもうひと踏ん張りできるか、もう一歩足を伸ばせるかはそこ(人間性)に繋がっていると思っています。
──就任後、取り組みたいプロジェクトや改革案について教えてください。長期的に目指すビジョンや、この役職を通じて実現したい理想の姿とは。
西山氏:財政的に厳しい状況にあるというのは認識しています。そういった中で、選手の力を最大限発揮できる監督を招聘することが一番のミッションだと考えました。それが藤本主税監督になります。彼の持つ人間性、情熱、求心力、育成力は必ずやチームを良い個方向に導いてくれると思っています。
中長期的なビジョンとしては、アカデミーの強化です。将来、アカデミー出身選手がトップチームのスタメンの3~4人を占めることを目標にしたいと思っています。
そのためには、まずクラブとして目指すサッカーを確立し、風通しの良い組織を構築したいと思っています。時間のかかることですが、地道に進めていきたいです。
──ファンからの期待にどのように応えたいと考えていますか? ファンと一緒に作り上げたい未来像について教えてください。
西山氏:昨シーズン、ホーム最終戦を現地で見させていただきましたが、スタジアムの素晴らしさはもちろんですが、ゴール裏の熱気を非常に感じました。その輪をもっと広げていけたらなと思っています。(ファンと一緒に)スタジアムをいっぱいにしたいです。
このクラブは、J1のクラブのように完成した選手を獲得することは難しいと思っています。だからこそ、未完成の選手を皆さんと一緒に育てていく、みんなでチームを作っていく。そんな関係性を構築することができたら、これ以上ない幸せです。
──この役職に就くことで、どんなことに挑戦したいですか?
西山氏:ずばり『J2昇格』です。同時に強い組織を作ること。
長野は、地理的にもスポーツ文化的にも非常にポテンシャルがあるところだと思っています。J2に昇格することでそれが加速的に進むとも考えています。
(それらを通して)皆さんに違う景色を見てもらいたいと思っています。
──仕事を通じて、自分の成長につながると感じている部分はありますか?
西山氏:前所属でもチームの強化だけではなく、クラブの組織の構築やクラブ経営に携わってきましたが、パルセイロにおけるその難易度は前所属以上のものだと認識しています。それをやり遂げることが、自身の成長に繋がると思います。
──チームや組織において、どんなリーダーシップを発揮したいですか? チームメンバーや関係者とどのように協力していきたいか教えてください。
西山氏:私のモットーは『全員が当事者意識を持つこと』です。ひとりひとりがクラブを支えているという意識を持ってもらうことが大事だと考えます。
たとえば(クラブでは)どうしてもトップチームが脚光を浴びることが多いですが、裏方スタッフやアカデミースタッフも重要な構成員で、すべての人がクラブを支えていると思っています。感謝とリスペクトの精神も大事にしたいですね。
──就任を機に、ファンに新たに知ってほしいことはありますか? 自分ならではの強みやスキルなどあれば教えてください。
西山氏:実はブラジルに留学経験があり、日常会話であればポルトガル語が話せます。ブラジルとのネットワークを少なからずあるので、アカデミーの選手を短期留学させることも将来的には視野に入れています。
──就任から1~3年後には、どのような成果を目指したいと考えていますか?
西山氏:当然昇格したいですし、より上の順位を目指しますが、来期はまずチーム・クラブの基盤を作る年という位置付けになると思っています。
2年目以降、より具体的な目標を立てられるようにしたいと考えています。
──このポジションを通じて、どのように組織やプロジェクトに貢献したいですか?
西山氏:パルセイロが強くなることで、長野のスポーツ文化のさらなる発展に繋がればと。アカデミー改革を通してアカデミー出身選手が増えることでも貢献できると考えています。
──忙しい仕事の中でリフレッシュ方法や趣味があれば教えてください。
西山氏:現在小6の息子がサッカーをやっていまして、時間があれば練習や試合を見に行くのが楽しみのひとつです。忙しくてなかなか見に行ってあげられませんが。
温泉も好きなので、温泉巡りや自然を満喫したいと思っています。
──ファンともっと近い距離でつながるために、施策やイベントなど考えていたら教えてください。また、ファンに対して、どのように自分の活動を発信していきたいですか?
西山氏:あくまで自分(強化担当者)は裏方なので目立つ必要はないと思っていますが、どのようなビジョンで動いているかという『透明性』は必要かと思っています。
その一環がサポーターズミーティングであり、クラブから発信するSNSであるのかなと思います。すべては人と人なので、意見交換は大事にしていきたいですね。
プロフィール
西山哲平(にしやま・てっぺい)
千葉県柏市出身の元プロサッカー選手・サッカー指導者。現役時代のポジションはミッドフィールダー。
《選手歴》
専修大松戸高 → クリシューマEC → フジタ/ベルマーレ平塚 → モンテディオ山形 → 大分トリニータ
《経歴》
2010~2011年:大分トリニータ 強化部スカウト担当
2012~2014年:大分トリニータ 強化部強化担当
2015年:大分トリニータ アシスタントコーチ/強化・育成部長代理
2016~2019年:大分トリニータ 強化・育成部長
2020~2024年:大分トリニータ ゼネラルマネージャー
<Edit:編集部>