• Facebook
  • Twitter

トラブル時の感情も準備しておく!【ビジネスにも活きる“本番に強いメンタル”の作り方(後編)】

  • LINEで送る
  • はてなブックマーク

 多くのトップアスリートのメンタルトレーナーとして活躍する清水利生さんに“本番に強いメンタル”の作り方を聞く今回のインタビュー。前編では「ポジティブ=メンタルが強いではない」「緊張するのは悪いことではない」など、印象的な言葉がいくつも飛び出しました。

 後編では実戦を想定した具体的なメンタルトレーニングの方法についてさらに掘り下げていきます。トラブル時に備えてどのようにメンタルの準備をすれば良いのか。そしてOKラインメンタルトレーニングとは?

 スポーツの試合はもちろん、ビジネスシーンなどさまざまな場面で訪れる緊張の一瞬。ここぞという場面で普段通りのパフォーマンスを見せたいと思う方にぜひ読んでいただきたい内容です。

◆前編はこちら
ポジティブ=メンタルが強いではない!【ビジネスにも活きる“本番に強いメンタル”の作り方(前編)】

▶全国約1,100のスポーツ教室を検索するなら「EPARKスポーツ」へ

完璧にプレーしようとせず、現実的なOKラインを設定する

――本番に強いメンタルを手に入れるために、「自分の感情と向き合い、その中でも行動を起こせるようにする」以外に注意する点はありますか?

完璧なプレーを求めすぎないことです。プレッシャーの掛かる時ほど、無意識のうちに完璧なプレーを追求しがちになります。例えばサッカーであれば、序盤から主導権を握って、こうやって相手の裏を取って、最後はこういう形で崩してゴールを決める……といった具合に、勝ちたいという気持ちが強い試合ほど理想的なプレーを思い描いていきます。不安を強く感じる時ほど「安心」したくなりこのような考え方になりがちになってしまうことはよくあることです。しかしこのように、試合前に良いイメージばかりを作って臨むのは非常に危険です。

――え、そうなんですか?むしろ試合に向けて良いイメージを作るのはメンタル的に良いことなのかと思っていました。

もちろん、良いイメージを持つのも大事ですが、一方で自分と相手の力を客観的に見比べて、現実的な想定をしておくこともお勧めしています。というのも、頭の中に良いイメージばかりを描いていると、いざ試合に入った時にそのイメージのギャップを生みやすくなってしまうからです。

完璧に近いプレーをイメージして試合に入ると、実際に起こっていることがイメージ通りではなかった場合、理想とは程遠い自分を目の当たりにしながらプレーすることになります。「こんなはずじゃない」と自己否定感が膨らんでしまい、パフォーマンスもどんどん下がってしまいます。

そこでリコレクトでは、今の自分に確実にできる「OKライン」を設定することを提唱しています。OKラインとはうまくいっている・いっていないの境界線のことです。例えば相手の方が実力が上なのであれば、その現実を認めた上で「ではその劣勢な中でも自分たちにできることは何か」を客観的に、且つ正確に把握しておきます。しっかりと現状を把握したなかで「それならこの試合では最低限これができればOK」というOKラインを決めておくんです。

――先ほどのサッカーの話で言えば、強豪相手にスーパーゴールで先制するのは難しいけど、「まずは前半のうちに1回シュートチャンスを作る」とか、「前半10分までに失点しない」とか、例えばそういうイメージですか?

そうです。そうやって今の実力でも達成できそうなラインを1つ1つクリアしていくことで、プレーの中で「自分たちのやるべきことはやれているぞ」という自己肯定感を感じることができます。この自己肯定感が自信に繋がりパフォーマンスにも好影響を与えるんです。

――自己肯定感が自信の根拠となるのですね。

はい。OKラインは今の自分と向き合って、「頑張れば現実的に達成可能なライン」に設定するのが大切です。OKラインメンタルトレーニングは、目標を達成するために自己肯定感を積み上げていき、絶対的な自信を作っていくメソッドなんです。自分ができることを積み上げて、「よしできてるぞ!」という自己肯定感を何度も重ねていくことで自信を持った自分に変えていく。自信を持った状態であれば当然本来の力を発揮しやすくなります。先ほど話した「自分の感情と向き合い、その中でも行動を起こせるようにする」のと同様に、本番で力を発揮するためには非常に大事になってきます。

事前に最悪の展開を想定しておくことで、想定外を無くしておく

――ここまで本番に強いメンタルを作る方法をいくつか伺ってきましたが、他にも何か有効な準備方法はありますか?

最悪の展開を想定しておくことも非常に大事ですね。事前に悪い流れをシミュレーションしておくことで、いざその展開になったときにパフォーマンスの低下を防ぐことができるようになります。

――なるほど。最初から悪い展開もあり得ることを現実的に認めておくことで、想定外を無くしてしまうんですね。「最悪の展開も想定しておく」って、パッと聞いた感じだと先ほどの「自己肯定感を得ることで自信を持った自分を作る」こととは矛盾しているように感じますが、実際にはそうではなくて、「今日の相手は強いし、こういう悪い展開だってあり得るよね」ということを現実的且つ客観的に把握しているんですね。先ほどのお話と繋がります。

そうなんです。ただその際に注意すべき点があります。「最悪のことが起こった時の対応策は考えていたけど、いざ実際にそうなったら頭が真っ白になっちゃった」っていう人がけっこういるんです。そういう人は、起こった出来事に対する対処法は用意できていても、「いざそうなった時にどういう気持ちになるか」という感情の準備ができていないケースがほとんどです。

――前半の話で出てきた「自分の感情と向き合い、その中でも行動を起こせるようにする」というプロセスが踏めなくなってしまったんですね。

そうですね。いざそうなった時にどういう感情を抱くかまではイメージできていなかったことで、出来事自体は想定内なことでも、慌てるという感情を抱いたことが想定外になってしまうんですね。

対策として、「最悪の展開になったらどんな気持ちになるか」を事前にできるだけリアルに想定しておくと良いです。「多分頭が真っ白になるな」とか「すごく焦るな」とか「周りの目が気になって緊張するな」という風に具体的にイメージすることで感情の準備までしてしまうんです。そうすることで、いざ本番でそうなったときに「あ、実際頭真っ白になったな」という風に客観視できている自分が作れます。しっかりと感情まで準備しておけば、「アクシデントが起きて、自分は実際にこんな気持ちになった。こういうときはこういう行動をしよう」という風に、アクシデントが起こってからリカバリーする行動に移るまでがすごくスムーズになるんです。

――どんな感情を抱いても行動が起こせる、冒頭のメンタルが強い選手のパターンですね。

実は今日の話の途中で紹介したプレゼンが苦手だったビジネスマンの方には、まさにこの「トラブル時の感情も準備する」方法を実践してもらいました。それまでは「緊張して頭が真っ白にならないようにするにはどうしたら良いか」と、感情を打ち消そうと考えてらっしゃったのですが、もうそれは諦めてもらって(笑)「頭が真っ白になることも想定しておいて、じゃあその中でまずはカンペを見て、もう一度ゆっくり話すことから始めるようにしましょう」という風に、その時の感情も想定した上で、どういう行動を取るかを何度も確認しました。何か起きた時に「完璧に話してリカバーしようとする」のではなく、「カンペを見てゆっくり話す」というところまでOKラインを下げたんです。

――そうすることで自己肯定感を得られるようにしたんですね。

そうです。まず客観的にその状況や自らの感情を受け入れて、その中でやれることを1つ1つ積み重ねて、自己肯定感を得ることで自信を回復していくということですね。そうやってアクシデントが起きた状況から1つずつリカバリーしていく経験を積むことで自信が付いてくるんです。

――正しいメンタルコントロールを覚えればスポーツの場面だけでなくそういったビジネスの場面にも応用が利きそうですね。

はい。スポーツでも仕事でも、あるいはお芝居のような芸事などでも、本番で起こりうる心理状態は似ている部分もあると感じています。普段の感覚じゃなくなってしまって、できることもできなくなってしまうという点などはどんな場面でも起こり得ることだと思います。

今回紹介した「自分の感情と向き合い、その中でも行動を起こせるようにする」「OKラインを設定して、自己肯定感を重ねながら自信を得る」「最悪の展開になったときの感情を具体的にイメージしておくことで想定外を無くす」といった方法は、スポーツに限らずあらゆる分野で応用が利くと思います。本番で自分の力を発揮したい!という人は、ぜひ一度試してみてください。

◆前編はこちら
ポジティブ=メンタルが強いではない!【ビジネスにも活きる“本番に強いメンタル”の作り方(前編)】

▶ヨガ、ゴルフ、ダンス、パーソナルジムなどのスポーツ教室を探す

[プロフィール]
清水利生(しみず・としき)/(株)リコレクト所属
1985年7月17日生まれ、山梨県出身。強豪・山梨県立韮崎高校サッカー部出身の元プロフットサル選手。現役時代はフウガドールすみだ、デウソン神戸(Fリーグ)でプレー。自身がOKラインメンタルトレーニングを受けていたことをきっかけに、引退後メンタルトレーナーに転身。現在は(株)リコレクトに所属し、さまざまなトップアスリートのメンタルトレーナーを務めている
【公式サイト】https://www.recollect.co.jp/

<Text:福田悠/Photo:@kazuend>

  • LINEで送る
  • はてなブックマーク

ランキング
Ranking

  • 最新

オススメ記事
Special

注目キーワード