インタビュー
2018年6月26日

「共通体験は組織にとって大切」。会社で運動会を行うメリットを、“社内運動会”の仕掛け人に聞いてみた (1/2)

 運動会といえば赤白チームに分かれ、小学校の校庭でいろいろな演目と競技を披露するもの。そんなイメージをお持ちの方は多いでしょう。

 しかし実は、企業でも社員向けに “社内運動会”を開催するケースがあります。いったい、企業はどのような狙いから運動会を開催するのでしょうか。今回は社内運動会の仕掛け人であり、企画・運営をサポートする株式会社運動会屋の代表取締役CUO(Chief UNDOKAI Officer)米司隆明さんにお話を伺いました。

社会的課題に“運動会”という解決策を

 会社を設立し、運動会の企画・運営をサポートする「運動会屋」の活動がスタートしたのは2007年のこと。営業職など会社員を経ての独立でしたが、米司さんは幼少期より起業志向を持っていたそうです。

「なんとなく、幼い頃から社長になりたいと思っていました。何か、自分で事業をやってみたかったんですね。大学卒業後は金融系の営業職に就き、なんとなく営業のやり方は分かったのですが、どこか心のない営業のように感じていました。その後はネット系企業に転職し、広報やマーケティングをはじめとしたプロモーションを担当。2年ほど勤務し、勢いで独立したという感じです」

 独立当時はITバブルの直後。働くことへの価値観や、企業あるいは会社員のあり方、意識などが大きく転換した時期です。その変化の裏に見え隠れする社会的課題が、運動会屋という事業を考えるキッカケになったと言います。

「社内の人と飲みに行かなくなったり、終身雇用から成果主義にシフトしていったり。あるいはパソコンを多用するようになって、リアルなコミュニケーションもこれまでのように求められなくなりましたよね。この流れの中で、世の中に歪みが生まれているような気がしました。さらに子どもの引きこもりなどもよく話題になって、企業はもちろん、社会的にコミュニケーションが不足していると思ったんです。じゃあ、どうすれば解決できるのか。私は子どもの頃から野球をやっていて、そこから自然と友達とのコミュニケーションが生まれていたんですよね。そんなスポーツの価値なら伝えられると思い、スポーツで起業しようと決めました」

 いざ起業したものの、最初からうまくいったわけではありません。そもそも、最初はスポーツの中でも、運動会ではなく球技大会を考えたとのこと。運動会を軸とした事業が確立するまでは、さまざまな困難があったようです。

「最初は球技大会がいいかと思ったんです。でも、たとえばフットサルなどの球技って、少人数しかできませんよね。企業みたいな大人数で、全員が参加するのは難しいんです。そこで着目したのが運動会。運動会なら、いろんな規模で開催できます。

実は、最初の運動会が開催されるまで1年ほどかかったんです。私は“7つの無い”と呼んでいるんですが、まず起業したてでは当然ながら仕事がないし、お金もない。お金については、しばらくアルバイトしながら繋いでいました。そんな中でホームページを作り、初めて運動会開催についての問い合わせを受けたものの、今度はやり方が分からないし、スタッフもいないわけですよ。さらに道具もないから、手作りとリースを中心にやりくりしました。

それでも初開催となった運動会はものすごい盛り上がりで、これこそ自分の使命なんだと感じましたね。少しずつお金が得られるようになって、道具も増えていきました。そうしたら、今度は道具の置き場所がない。当時アパートの1室を使っていたんですが、ベランダまで道具を出していたほどです。周囲からは不審がられますよね。見えないようにブルーシートで隠したら、まるで事件の現場みたいになっちゃいましたよ。でも、諦めない。だからこそ、次第に問い合わせが増えていき、今では運動会の開催数は年間230件に及んでいます」

 現在は企業を中心として、学校や自治体、あるいは芸能関係の運動会イベントをお手伝いすることもあるそうです。当初は親兄弟や友人に頼んで手伝ってもらっていたものの、現在はアルバイトを含めて何人ものスタッフを抱えています。倉庫には、実にさまざまな運動会用具が、所狭しと並んでいました。

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