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運動経験ゼロだった投資家・小野裕史。砂漠マラソン世界一を経て、“馬のマラソン”で五輪を目指すワケ(前編)

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 運動ゼロの状態からマラソンを開始。数々のレースを経験し、やがて砂漠マラソンでチーム世界一を獲得した小野裕史さん。MELOSでも以前、小野さんの著書『マラソン中毒者』(https://melos.media/business/1584/)についてご紹介しました。

 現在はマラソンではなく、新たな競技『乗馬』に挑んでいるとのこと。いったい、なぜ乗馬への挑戦を決めたのでしょう。また、ベンチャーキャピタル代表で投資家として活躍するビジネスパーソンでもある小野さんが考える、ビジネスとスポーツの相互作用などについても伺いました。

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新たな挑戦への飢えと新たな競技との出会い

−−国内外で数多くの過酷なマラソンレースを走破し、アタカマ砂漠のマラソンではチームで世界一を獲得されたと聞きました。そこまでマラソンにのめり込んだうえで、なぜ今度は『乗馬』に挑戦しようと思ったんですか?

根っこは、とにかく見たこともない、やったこともない何かにチャレンジしたいという気持ちですね。人が走るマラソンでは北極や南極などの大会に出場したし、250kmの砂漠マラソンでは3人一緒に走るチーム戦で世界一にもなりました。散々、いろんなことを経験してしまうと、「もっと何かないか」って、さらなる未知のレースに飢えてしまうんですよ。

−−未知への挑戦……。スケールが大きいですが、そこで新たなる何かを求めたんですね。

そうなんです。そんなタイミングで、ひょんな縁から“馬のマラソン”であるエンデュランス馬術なる競技を知りました。これは一人の人間が一頭の馬にまたがり、160km先のゴールを目指すというもの。まさに馬のウルトラマラソンですね。これを知った瞬間に頭を過ぎったのは、「意味が分からない!これは面白いぞ!」という気持ちでした。

一人で走るより複数人のチームで一緒に走る方が難しかったし、ゴール後もより大きな達成感がありました。それなのに、人の言葉が通じない馬と一緒に走るんですよ。おもしろいに決まっているじゃないですか。しかも頑張れば、なんと世界選手権に出られるかもしれないんです!おもしろすぎて、「やるしかない」と思いましたね。

乗馬を始めて、世界選手権へ出場するまで

−−確かに、馬とウルトラマラソンなんて想像すらできませんね。では、いざ乗馬を始めようと考えたとき、実際にどんなことから取り組まれたのでしょうか?

まずは、ゴールを決めちゃうんですよ。そして、恥ずかしげもなくSNSで目標宣言しちゃう。しかも公開設定でね。今回は「最短で2年後の世界選手権を目指す」と。まだ、ほとんど馬なんて乗ったことないんですけどね。

この目標から逆算すると、ものすごく特訓を積まねばなりません。もちろん実践だけではなく、馬のことも学ぶ必要があります。そのため、空いている週末はすべて乗馬に費やしました。片っ端から乗馬技術や馬の生態、馬の筋肉・骨格など、さまざまな本を漁り読みましたよ。

特にエンデュランス馬術で重要なのが、馬の身体や生態、性格を把握してなければ、完走すら難しいということ。160km走る間に何度も獣医チェックがあって、少しでも馬の体調や様子がおかしいと即座に失権なんです。つまり、ただ乗るだけではダメなんですね。馬の体調や気持ちを把握し、管理しながら乗り続けなくてはならない。そのため、馬の気持ちを知ろうと、馬にまつわる本も山ほど読みました。

−−実際にチャレンジしてみて、率直にどんな感想を持ちましたか?

思い立ってすぐ始めたので、まさに考える暇もなく馬に乗ることになりました。実際に乗ってみると、馬上って思った以上に高いんです。これ、本当にビックリしましたね。少し馬が動いただけでも反動きが大きくて、常に落ちてしまいそう怖い。しかも、まったく思うように動かせられないんですよ。内膝の皮が剥けたり、膝や足首も痛くなったり……。マラソンを通じて体幹や体力には自信を付けていたんですが、たった1時間の練習で打ちのめされましたね。1週間ずっと朝起きるのがツラいくらい、身体がバッキバキになっているんですから。

でも、そのダメージ感がとても新しくて、むしろ楽しいんですよ。「俺、全然ダメじゃん!」って。「本当に、こんなので世界選手権を目指せるのか?」と、不安っていうよりワクワクしてしまいました。

−−乗馬を始めて、これまでどのような大会に出場されましたか?

乗馬を始めてからは、毎月大会です。レース中に落馬して右腕骨折したことがあるんですが、その後も残り20kmを乗り続けました。ギプスしながら練習して、その翌月には初めての120kmも完走しています。

そもそも、世界選手権出るには資格が必要なんです。人のマラソンみたいに、いきなり「42.195km走ります!」とか「100km走ります!」と言って大会に出ることはできません。まずは実技と筆記の試験を受けるんですが、乗馬技術はもちろん知識も必要。その試験に受かって、ようやくまずは20kmの大会に出られます。そして40km、60km,80km……と、少しずつステップアップしてかなければいけません。

世界選手権まで逆算すると、毎月大会に出ても間に合うか絶望的じゃないですか。ですから、時にはアメリカまで飛んで、120km・160kmと2日間連続で大会に出場することもありました。そして昨年の9月、スロバキアで開催された『エンデュランス馬術世界選手権』に日本人で唯一参戦・無事に完走できたんです。でも実は、その大会に出られる権利を取ることができたのって、大会2ヶ月前にカナダで出場した160kmの大会を完走できたからなんですよ。本当にギリギリでしたね。ハッキリ言って、「よく行けたな」と思います。本当にラッキーでした!

−−世界選手権への出場を遂げ、現在は何を目指して競技されているんですか?

世界選手権に出てみて、打ちのめされました。「世界のレベルは、ここまで自分と違うのか」と。まぁ、乗馬を始めてたった2年の人間ですから、世界のレベルと比べたら当たり前なんですけどね(笑)。

将来、目指しているのはオリンピックです。2028年か2032年か……もしかしたら、東京オリンピックの次の2024年かも!? ただ、まだエンデュランス馬術はオリンピック競技に選ばれていないんですけどね。しかし、将来必ず行われるであろう中東開催のオリンピックでは、ほぼ間違いなく競技になると思っています。

中東の王子は皆さんこの競技を行っていますし、何より2006年、中東のカタールで開催されたアジア大会では正式競技になったことがあるんですよ。オリンピックに採用される時、いったい私は何歳なのか……。でも、大丈夫です。2008年の北京オリンピックでは、馬場馬術に60歳の方が出場されていますから!その時はただ出場・完走するだけではなく、世界と渡り合える走りをしたいですね。

運動が小野さんにもたらした変化とは

−−オリンピック、ぜひ実現してください!しかし小野さんはベンチャーキャピタルの代表として、多忙な日々を過ごしていると思います。それだけ忙しい中で、そもそも、なぜ運動を始めようと思ったのでしょうか?

いくら時間がタイトでも、充実してやりたい事に向かっている時って、気持ちも身体も付いてくるものなんですよ。一方、なかなか充実できてない時は生活すべてがだらしなくなり、ますますつまらなくなってしまいます。そんな中、ぶくぶく太った自分のふしだらな身体を見て、ショックを受けたんですよね。「やっつけてやる!」って、なんだか罰を与えてやりたくなったんですよ。

でも運動なんて経験がなく、スポーツ嫌いだし苦手。むしろインドアが大好きでした。そこで思い立ったのが、身体を動かせるゲームだったんです。テレビに向かってゲーム機を持ち、実際に身体を動かしてみる……、すると意外と楽しかったんですよね。それで今度は「ちょっと、外でも歩いてみるか」って外に出て、やがてマラソンにハマってしまいました。人間、何がキッカケで変わるかなんて分からないものです。しかし、たとえ小さなキッカケでも、少し動いてみたことから、将来の大きな変化に繋がる一歩になったのかと思います。

−−実際に運動を始めて、どんな変化や学びがありましたか?

まず、メンタルが変わりました。仕事でも人生でも、自分が思うようにならないことって山ほどありますよね。そういった事態に遭遇しても、周囲のせいにするようなことが減ったんです。
長く走っていれば、雨に打たれたり風に吹かれたり。まして馬と一緒なら、「自分は大丈夫だけど、馬が疲れてダメになる」なんていうこともあります。当たり前なんですが、人生って自分ではどうしようもならない外的要因で、自分の思うようにならないことだらけなんですよね。そういった当たり前のことが、仕事はもちろん生きていく中でも大いに役立ちます。

一方、自分の心が要因でレースを完走できなくなったり、自信のなさや諦めの心が馬に伝わって、馬まで走れなくなったりしたこともあります。つまり、内的要因で上手くいかないときもたくさんあるんです。

しかしマラソンで長い距離を走っていると、「もうダメかも」というときでも、ふと気づくと劇的に復活することがあります。乗馬だって自分が弱気になりそうな時、馬の頑張る姿を見て奮い立ち復活したり、逆に馬が弱っている時に元気づけようとして、馬が突如復活したりすることも。内的要因で上手くいかなそうな時も、いずれ状況が良くなる可能性はあるんですよね。これも、大きな学びでした。

−−なるほど、参考になります。ちなみにビジネスマンに運動を勧めるなら、どんな人に最適な趣味・習慣だと思いますか?

何か熱中できることを見つけた経験のある人なら、 運動に限らず、仕事以外に熱中できる何か取り組み続けるのことって、とても学びがあると思います。少しでも「おもしろい!」と思ったら、まずはゴールを設定しちゃいましょう。マラソンなら大会にエントリーしてしまう。これ、パソコンのボタンを考える隙さえなく「ポチッ」と押してしまうことから、私は“ノータイムポチリ”と読んでいます。そして、それのゴール設定をSNSなどで公開するんですよ。すると自分の覚悟が決まるだけではなく、応援者が見つかったり、一緒にチャレンジする仲間が見つかったりするかもしれません。

これは運動だけでなく、ちょっとでも興味のわいたことにまずは動いてみると、思いもよらない未来が拓けてきます。ビジネスでも役に立つことがあるかもしれませんが、何よりワクワクするような、熱中できるようなことが見つかったり、人生がより豊かになる仲間との縁が生まれたりするはず。ぜひ、オープンにチャレンジを!

→後編へ続く
次回はご自身の経験から、スポーツが人生に与える影響について伺います!
※27日(火)公開予定

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[プロフィール]
小野裕史(おの・ひろふみ)
インフィニティ・ベンチャーズLLP 共同代表パートナー。運動ゼロからテレビゲームをキッカケにマラソンを開始。北極や南極、ジャングルなど世界各地の過酷なマラソン大会に挑戦し、2013年にはチリのアタカマ砂漠で行われた250kmレース「Atacama Crossing 2013」に仲間と3人でチームを組み出場、チーム戦で世界一を獲得。その後、エンデュランス馬術競技への挑戦をスタート。2017年5月に国際大会「Biltmore Challenge 160km」を完走。オリンピック出場を目指し、日々トレーニングに取り組んでいる

[筆者プロフィール]
三河 賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表
【HP】http://www.run-writer.com

<Text:三河賢文>

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