2018年4月3日

【エンデュランス馬術競技】まるで馬のウルトラマラソン!種類・ルール・注意点┃一度やってみたい!珍しい海外スポーツ #4

 国内ではあまり競技人口の多くない海外スポーツを取り上げ、その特徴やおもしろさを紹介する本連載。今回取り上げるのは、「エンデュランス馬術競技」です。競技について詳しくご存知の方は、おそらく少ないことでしょう。実はこの競技、以前にMELOSで取材した小野裕史さんが取り組んでいるものです。その概要を紹介していきましょう。

過酷を極める“馬のウルトラマラソン”

 エンデュランス馬術競技は、いわゆる五輪種目にもなっている「馬術競技」のひとつ。数10㎞におよぶ長距離を、騎乗してタイムを競う“馬のウルトラマラソン”です。一般的な競馬とは異なり、騎乗時間が数時間にもおよびます。そのため、騎手は馬の体調も気遣う必要があり、人馬一体となってゴールまで向かわなくてはいけません。

<馬術競技の種類>

◎五輪種目
・障害馬術
・馬場馬術
・総合馬術

◎非五輪種目
・エンデュランス
・レイニング(ウエスタン)
・馬車
・軽乗

 日本では毎年「全日本エンデュランス馬術大会」を開催しています。2017年大会(9月)は120㎞・80㎞・60㎞で実施されました。120㎞の部は午前3時スタートで始まり、9時間18分37秒というタイムで、荒井三冬選手&キセキノヒカリ(北海道エンデュランス協会)が優勝。平均時速13.17kmで120㎞を走破しています。

 速度は人がジョギングするよりも少し速いペースです。しかし、120㎞・80㎞・60㎞の各部門でそれぞれ約半分しか完走者が出ておらず、いかに過酷な競技であるかが判断できるでしょう。少しでも馬の体調が優れないと判断された場合には即失権となるため、騎手は騎乗しつつ、馬の変化を感じ取りながら進まなくてはいけません。なお、一定の区間ごとに獣医師が健康診断をし、獣医師の判断により競技の続行が決定されます。

エンデュランス馬術ならではのルールや苦労

 馬を使った長距離移動が競技として行われるようになったのは、1950年代とされています。1982年にはFEI(国際馬術連盟)が馬術競技として認定。その後、急速に競技人口や大会開催数が増加していき、2000年からは日本でも全日本大会を実施するなど普及が進んでいます。

 この競技には実際にレースへ参加する人馬以外に、「クルー」と呼ばれるサポートスタッフの存在が重要です。コース上に設けられるクルーポイントでは先まわりして選手と馬を迎え、給水や身体を冷やすなどのケアに努めます。もしもこの作業を怠った場合、失権へと繋がってしまうからです。

 この競技では優勝など通常の表彰に加え、「ベストコンディション賞」というものが存在します。これは、完走した馬のなかからもっともコンディションの良い馬を表彰するもの。道中、馬を気遣い続けた選手やクルーのための表彰といえるでしょう。それだけ、チームでの取り組みが必要となる競技でもあるのです。

 2018年には8月のアジア競技大会(インドネシア・ジャカルタ)に加え、9月には世界馬術選手権大会(アメリカ・トライオン)が控えています。海外レースでは輸送などの手間もかかり、いっそう大変な道のりにとなるでしょう。しかしそれだけ、多くの猛者を虜にする競技だと言えそうです。

国内で乗馬を楽しめるクラブ・スクール

 あまりに特殊な競技のため、国内でエンデュランス馬術を行える環境は限られます。しかし乗馬は全国で楽しめますので、競技の導入として挑戦してみてはいかがでしょうか。ここでは、昨年の全日本大会に出場した選手の所属先にもなっている乗馬クラブを、一部ご紹介します。

・乗馬クラブ「クレイン」(全国33ヶ所)
https://www.uma-crane.com/

・八王子乗馬倶楽部(東京都)
http://www.hachioji-rc.co.jp/

・浅間クレールライディングサークル(群馬県)
http://www.asamaclair.jp/

 いきなりエンデュランス馬術競技へ出場するのは、やはりハードルが高いでしょう。まずは普通に乗馬を楽しみ、そこから少しずつ大会へ出場する流れが一般的と言えそうです。全日本大会で優勝した荒井選手は、まだ19歳という年齢。幼少期から乗馬に慣れ親しみ、その後にエンデュランス馬術の第一人者へ駆け上がるという道筋も考えられます。

 なお、日本で行われている大会については、公益社団法人日本馬術連盟のホームページに記載されています。ご興味のある方は、ぜひ一度チェックしてみてください。

・参考サイト
公益社団法人日本馬術連盟 エンデュランス本部

<Text:松永貴允/Photo:Getty Images>