インタビュー
ライフスタイル
2019年6月10日

スポーツは地域の社会的価値を創出できるのか。埼玉発のスポーツコミュニティが目指すものとは? (2/2)

 東京のベッドタウンとして発展を続ける川口市。川口に限らずベッドタウンの多くはつながりが希薄であると言われています。住民が年齢や国籍、職業にとらわれず参加できて、スポーツを楽しみながらさまざまな人と交流ができるサードプレイスとして、きゅぽらスポーツコミュニティは機能しています。そこで生まれたつながりがコミュニティを飛び出して、新しいイベントや仕事などを共同で手がけるようになるケースもあるそうです。

▲バドミントンには男女問わず、新規の参加者が多い

「国籍や文化、世代の違いを超えて相互理解が進めば、日本が抱えるいろいろな問題の解決にもつながるでしょう。そしてもうひとつ、スポーツを楽しむことが社会課題を考えるきっかけにもなればいいなと常々考えています。以前、防災運動会というイベントを開催したことがあります。バケツリレーをアレンジして、バケツにテニスボールを入れてみんなで運んだり、スポーツと防災を組み合わせて社会の課題を理解してもらうという試みですけれど、多くの参加者に楽しみながら防災についての理解を深めてもらえたと思います」

スポーツの敷居を下げて、誰もが参加できるコミュニティを目指す

 大学時代に都市計画を学んだ石井さんは、学生時代から当時まだ多くの人々にとって親しみのなかったNPO団体のコーディネート事業を手がけるなど、積極的に社会課題についての取り組みを進めていました。提案やアイデアだけで終わってしまう大学の勉強よりも、実際に社会に出て変えていきたいと考えるようになり、卒業後は営業アウトソーシング会社とイベント運営会社で、営業のノウハウやイベントを手がけるスキルを磨きます。

 独立前には1カ月半の間に80人ほどの方に相談をして、現在の総合型地域スポーツコミュニティを核にすることを決意したそうです。

「趣味といっても、スポーツにはどうしても経験者がストイックに取り組むものという印象があるので、それを変えたいと考えています。どんな人でもスポーツを楽しめる場を川口以外の地域に増やしていきたいですね。ただ、私1人でできることは限られているので、もっと多くの人に興味を持ってもらい、参加者も運営側も増やしていきたいです」

 きゅぽらスポーツコミュニティは大人だけでなく、子どもを対象にしたスポーツレクや、水鉄砲やお菓子の家を作って楽しむ「あそつく」というプログラムも提供しています。大人も子どももそろって楽しめるスポーツをはじめとしたレクで、地域をつなぎ社会に新しい価値を創出する。地域コミュニティの重要性が見直される今、同様の試みは各地で見られるようになるかもしれません。

[プロフィール]
石井邦知(いしい・くにとも)
総合型地域スポーツクラブきゅぽらスポーツコミュニティ代表理事。一般社団法人日本コムスポーツ協会代表理事。筑波大学卒業後、営業アウトソーシング会社(主に新規開拓の法人営業)、イベント企画・運営会社(主に公益法人での企画・運営・広報業務)を経て、2011年2月に埼玉県川口市を拠点とした総合型地域スポーツクラブ「きゅぽらスポーツコミュニティ」を設立。フットサルやバレーボールなどのチームスポーツを経験者も未経験者も一緒になって楽しみ、年代や業種など異質で普段つながることのない人々が堅苦しくなく交流し、仲良くなれる場をつくっている。また小学校の学童保育などで運動レクを実施している。2014年3月には一般社団法人日本コムスポーツ協会を設立、スポーツを支える方向けのwebメディア「こむすぽ」を開設。
【公式サイト】http://cupolasports.com/

<Text:舩山貴之(H14)/Photo:辰根東醐>

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