インタビュー
2017年9月26日

気持ちは谷底に置く。親は子どものチャンスが見えても冷静に┃内村周子の子育て論(前編) (3/3)

 期待してダメだったときの悲しさを考えると怖いので、『うまくいくといいね』くらいに考えて、私自身はいつも谷底に気持ちを置いていましたね。

−−それでも航平選手は個人総合銀メダルという偉業を成し遂げられました。

 私は、夢は叶えるものだと思っています。叶えたいって頑張ることが楽しいので、たとえ叶わなくてもそんなにしょげることはないんです。人生、こんなもんだって諦めることも時には大事だと思っているんですね。だけど子どもには「これは諦めなさい」、ではなくて、「次に別の道を行こうよ」って違う言葉にして思考を変えてあげる。諦めたんじゃなくて、夢を別の道で叶えていくっていう。わが子たちにも、みんなそう声をかけてきました。

動くこと、考えること、生きていること。すべてがスポーツ

——周子さんにとってスポーツはどういうものですか?

 私は、スポーツはプレイヤーだけがするものだと思ってないんです。旗を振って応援している人も、ベッドに寝ていて目で競技を追ってる人も、すべてがスポーツだと思うんですね。身体を動かす遊びもスポーツだし、芸術や勉強なら頭を動かしている。これだってスポーツです。つまり、この世の中で『スポーツは生きていることの証』だと私は思っています。

——航平選手は10月には世界選手権で7連覇を目指しますね。

 生まれて来てくれた時に全部の幸せをもらったと思っているので、私のほうから連覇とか、優勝してほしいという気持ちはありません。彼自身が達成感のある演技ができたらそれでいい。ただ、母として応援したいからまた頑張って旗を作って応援に行きますよ(笑)。

[プロフィール]
内村周子(うちむら・しゅうこ)
長崎純心女子学園を卒業後、現在の長崎県立大学に進学。卒業後、体操教室で幼児体育の指導にあたる。1992年に夫・和久氏とともにスポーツクラブ内村を開設。現在、スポーツクラブ内村・Shuバレエスタジオで2歳から大人の方までの指導に携わっている。2008年北京オリンピック個人総合銀メダル・世界選手権(2009年ロンドン・2010年ロッテルダム・2011年東京)2012年ロンドンオリンピックで個人総合金メダル、2013年アントワープ世界選手権個人総合金メダル、2014年中国南寧世界選手権団体銀メダル個人総合金メダル、そして2015年イギリスグラスゴーにて団体金メダル・個人総合金、2016年リオデジャネイロオリンピック団体金メダル・個人総合金メダルと史上初の連覇となった内村航平を1989年に、91年にはその妹・春日(ハルヒ)を出産。2児の母でもある。現在、渋谷区にある「渋谷スポーツ共育プラザ&ラボ すぽっと」にて幼児・児童の体操教室の講師も行なっている

▼後編を読む

いくら泣かされても悩まされても楽しい。子どもには個性があることを知っているから┃内村周子の子育て論(後編) | 子育て×スポーツ『MELOS』

<Text:パンチ広沢+アート・サプライ/Photo:斉藤美春>

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