どんな習い事も、野球に役立てようと思えば役立つ。絵を描くことも野球に活きた 元プロ野球選手・五十嵐亮太(前編)|子どもの頃こんな習い事してました #34 (1/2)
スポーツ界の第一線で活躍しているアスリートに、幼少期の習い事について訊く連載。自身の経験を振り返っていただき、当時の習い事がどのようにその後のプレーに活かされたか、今の自分にどう影響しているかを伺います。
第33回は、元メジャーリーガーにしてヤクルトスワローズのクローザー、日米通算で史上4人目となる900試合登板を達成した五十嵐亮太さんに、「野球に役立った」と思う習い事について伺いました。絵画も「プロ級」と称賛されている五十嵐さんですが、絵と野球の意外な関係とは⋯⋯?
さまざまな習い事、とりあえずやってみたい子どもでした
――子どもの頃、どんな習い事をしていましたか。
たぶん一通りやってるんじゃないかな。水泳でしょ、ピアノでしょ。ピアノは幼稚園のときかな、母の友人に教えてもらってました。それから、そろばん、公文、ワープロ教室にも行ってたし、習字、絵も習ってました。どれもそれなりに続いてたと思う。もちろん野球も小学校1年からやってたし。
――どれも自分から「習いたい」と言って始めたのですか?
自分で習ってみたいものと、母が「習ってみる?」と、僕に合いそうなものを提供してくれたのと、半々ぐらい。比較的何でも受け入れちゃうタイプだったので、「とりあえずやってみよう、合わなかったらやめればいいし」と。その頃はそうはっきりと思ってたわけじゃないけど、そういう人間でした。スタート時点から嫌だということはあんまりなかったと思います。
――好きだった習い事、嫌いだった習い事などエピソードがあれば教えてください。
水泳は嫌でしたね。スムーズに進級しなかったのと、先生がめちゃくちゃ怖かったんです。理不尽に怒る先生で「やってられない」と思ってやめちゃった。小学生のうちは楽しく習うことが一番。指導者は「楽しいな、続けたいな」と思うような練習をさせることが大事なんじゃないかと思います。
――ファンから「画伯」と呼ばれ、絵の腕前もプロ級です。絵はどれぐらい習っていたのですか。その頃から才能は開花されていたのですか。
絵を習っていたのは小学校1年から3年くらいまで。4年のときに北海道から千葉に転校するまでやってました。模写が好きなんで、子どもの頃から暇なときにふとペンを持ってアニメのキャラクターや風景画を描いていました。学校でコンクールに出されたり表彰されたりすることもよくありました。
そうするとうれしいじゃないですか。今は才能があるなんて思ってないですけど、当時は「もしかして才能あるかな」みたいに勘違いして、そこから今も気分が乗ったときだけですが描き続けているので、うまくいって評価されることは子どもにとっては大事ですよね。
野球にも発想力やイメージする力が大事
――野球以外のスポーツは得意だったのでしょうか。
体を動かすことは好きでした。家の中でも走り回って「落ち着きがない」とよく言われたし、タンスの上から飛んだりして、もう親からしたらサイアクですよね。Jリーグができたときにサッカーに流されかけたんですけど、野球の方がうまくいってたんでそのまま続けました。
野球は小学生の頃は地域のチームに入って、中学校ではシニアリーグに入りました。土日しか練習はないので、平日は陸上部に入部。足はそんなに速くなかったけど、肩は強いので砲丸投げでいけるかなと思ったら、そんな簡単じゃなかった。バトミントン部にも入ってました。バドミントンは投げる動作に近いのでちょっと自信がありました。
顧問の先生には最初、「平日参加するだけでいいよ」と言われたんです。ある時、たまたま1回だけ、土日に何校か集まる合同練習会に参加したら、他校の先生が僕のことを気に入ってくれて、「君、いいもの持ってるからちゃんとやった方がいいよ」と言われて、「僕は野球があるんで」と話したことを覚えています。その先生がうちの顧問にも「あの子、見込みがあるからちゃんとやらせた方がいい」と言ったらしいんです。それで、顧問が「土日も出た方がきっと良くなる」と言い出して、なんか面倒くさいなと思ってやめました(笑)。
――もしかしたらバドミントン選手になって大活躍していた可能性もあったわけですね。
いや、ないですよ。プロ野球選手になれて野球人生を謳歌することができたので、そこに対して悔いはない。自分の選択に間違いはなかったと思ってます。
――北海道ご出身でスキーもお得意だと聞きました。ただ現役時代はケガしないよう1度も滑らなかったそうですね。
父がスキーをやっていたので(元アルペンスキー国体選手)、その影響は大きいですね。引退してから即、ウェアを買って家族でスキーに行きました。スキーは野球引退後の楽しみの一つ。「いよいよ始まるぞ、俺の第二の人生」と(笑)。
――さまざまな習い事の中で、野球に役に立ったものはありますか。
役に立てようと思えばなんでも役に立つと、高校生くらいになってから気づきました。習字でも絵でも、集中力を持って継続すること、この感覚があることが大事だと思うんです。
野球は、毎年毎年自分をマイナーチェンジしていかなきゃいけない。でもそれは、遠目から見たらそんなに変わらない。「よくそんなに同じことを続けられるね」と思われることの繰り返し。その繰り返しの作業から何かを見つけ出さなければならないんです。その作業を僕はしんどいと思ったことはありません。やはりそれは集中力や継続する力があるのだと思います。