インタビュー
2018年5月24日

ロシア発祥格闘技「サンボ」のキッズ向けスクールとは?【取材レポ】 (1/3)

 2018年8月の「アジア競技大会」(インドネシア・ジャカルタ)で初めて採用された、ソ連発祥の格闘技「サンボ」をご存知でしょうか。

 実はロシアのプーチン大統領が国際サンボ連盟の名誉会長を務めており、2014年には日本の千葉県成田市で世界選手権が行われたこともあります。

 全身を鍛えられることから子どもの習い事にも有効ですが、一体どのような競技なのか、また、国内でどの程度普及されているのか。

 今回は、一般社団法人日本ジュニアサンボ連盟会長である吉澤昌さんにお話を伺い、実際のキッズサンボのスクールにもお邪魔しました。現場ではどのような指導がされているのか、レポートします。

2001年に「チビッコサンボ」としてスタート

 今回お邪魔させてもらったのは、サンボとレスリングのスクール「SKアカデミー」のキッズクラスである「SKキッズ」。普段の練習は東京都新宿区にある「トライフォース柔術アカデミー」の道場を借りて行われ、毎週火曜日と金曜日がレスリング、水曜日と土曜日にサンボのクラスが開催されています。

 ロシア発祥のサンボは40年以上も前から日本でも普及が始まっていますが、「ジュニアサンボ」の歴史は非常に浅く、2001年に「チビッコサンボ」として幼児・小学生を中心としたサンボ指導が始まりました(※現在のジュニアサンボは幼児から中学生が対象)。

 その当時から子ども向けのサンボに深く関与してきたのが、SKキッズで水曜日のコーチを担当している吉澤昌さん(日本ジュニアサンボ連盟会長)と、土曜日担当の田中泰秀さん(同連盟事務局長)。2009年には初めて子どもだけのサンボ大会『少年少女サンボオープン大会』を単独で開催し、2011年に日本ジュニアサンボ連盟を設立するまでに発展を遂げます。

 しかし、そこに至るまでの道のりは簡単なものではありませんでした。

▲日本ジュニアサンボ連盟会長の吉澤昌さん

「サンボはマイナースポーツなので、競技人口を増やすためには子どもの頃から始めさせることが重要です。ところが、ジュニアの普及を始めた当時は今みたいにYouTubeのような動画サイトもありませんでしたし、『どうやって子どもに教えていこうか』と試行錯誤の連続でした」(吉澤さん)

 そんな地道な努力も実り、サンボは徐々に“シニア世代”から“ジュニア世代”へと根を下ろしていきます。現在はこの「SKキッズ」のほか、東京都の「三多摩サンボスクール」、「アカデミア・アーザ」、大阪府「M-WORKS」などで子ども向けサンボ指導が行われており、未来のサンボ選手“サンビスト”を育成しています。

キッズサンボの魅力とは

▲キッズサンボでは幼児から中学生までを対象としている 【写真:上溝恭香/冨田実布/MCアブソリュート】

 日本における格闘技といえば柔道、レスリングなどが主流ですが、子どもの習い事として考えた時に、サンボはどのような魅力があるのでしょうか。

「サンボは『柔道』と『レスリング』をミックスさせて、関節技を加えたもの。タックルにも対応でき、柔道みたいに組んできても耐えられるように、立って構える高さがちょうど2つの中間くらいなんです。また、柔道に比べて組み手の制約がないのも特徴の1つ。いろんな攻撃が想定されるため、それらに対応しなくてはいけません。子どものうちからサンボを学ぶことで、身体的な強さを身に付けることができます」(吉澤さん)

▲サンボは攻撃パターンが多いため、マット運動や基礎的な身体能力を高めるトレーニングが必須になる 【写真提供:田中泰秀さん】

 サンボの大会は通常「スポーツサンボ」とスポーツサンボに打撃攻撃を加えた「コンバットサンボ」の2つがありますが、日本で行っているキッズサンボの試合では特別に「キッズルール」が適用されます。サンボは脚への関節技が特徴ですが、キッズサンボでは安全面を考慮して関節技が認められていません。ケガのリスクが抑えられるという意味で、保護者は安心して子どもに取り組ませることができるでしょう。

 一方で、昨年12月に初開催された全日本中学生サンボ選手権(RIZIN 格闘技EXPO2017 会場内)では大人と同じ国際ルールが採用され、「今後はキッズルールを残しつつ、国際ルールとの2本立てでいくかもしれない」と、吉澤さんは将来的なプランを口にしました。

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