ライフスタイル
2020年8月12日

子どもの姿勢の悪さは「親の教育」が影響する。姿勢教育は小さい頃から始めるべき理由

最近、姿勢の悪い子どもが多く目につきます。教育現場にいる筆者は園児たちと触れ合う機会がありますが、すでに姿勢の悪い子が少なくありません。

また、大学生と高校生の講義授業を受け持っていますが、立位姿勢が悪いだけでなく、座位姿勢も悪い子どもがとても多いようです。

中には机と頭が10cmと離れていない学生がいたり、横長の紙を配ったはずが縦置きにして体をねじりながら書いている学生がいたり……。

部活動などでは親子を同時に見る機会もありますが、姿勢も親子で似ていると感じます。子どもの姿勢を見直すとともに、自分の姿勢も見直してみませんか?

姿勢教育は小さい頃から始めるべき理由

姿勢教育は子どもが小さい頃から始めるべきです。

なぜならば、最初のうちは筋肉に左右差があるだけだったものが、その横にある骨に不均等に力がかかり続けることで、骨の歪みへと繋がってしまうから。

骨が未熟な子どもの時期には、影響を受けやすいでしょう。

関節の可動域も大きく異なってしまう

また、筋肉は関節をまたぐようについています。そのため、関節の可動域が左右大きく異なってしまうのです。

将来つらい思いをしないためにも、小さいうちから気をつけた方がいいでしょう。

発達の観点から見ても姿勢教育は大切

小さい頃の筋肉は、おもに遅筋繊維が発達します。姿勢に関わる筋肉は持続的に力を発揮することが求められるため、この遅筋繊維が重要となってくるのです。

そのため、小さい頃から姿勢が変わるような遊びをしたり、姿勢を正して姿勢筋に刺激を与えておくとよいでしょう。

よい姿勢とはなにか

それでは「よい姿勢」を確認しましょう。

立ったときの正しい姿勢

まず立ち姿勢からです。

後ろから見たとき、「後頭部(後頭隆起)」「背骨(椎骨棘突起)」「お尻の割れ目(殿裂)」「膝の間(両膝関節内側の中心)」「内くるぶし(両内果の中心)」にかけて、左右にずれていないこと。

横から見たときには、「耳たぶ(耳垂)」「1番先にある肩の骨(肩峰)」「腰骨の下の出っ張った骨(大転子)」「膝の裏(膝関節前部・膝蓋骨後面)」「外くるぶしの5cm前(外果の約5cm前部)」が一直線になっていることが重要です。

座ったときの正しい姿勢

次に座った姿勢です。横から見たときに、「耳たぶ(耳垂)」「1番先の肩の骨(肩峰)」「お尻の下の骨(坐骨結節)」が一直線になることが大切です。

立った姿勢・座った姿勢で姿勢が悪くなるのは、背中が丸まった状態。しかし背中が悪いのではなく、その土台となる骨盤が後ろに倒れてしまう骨盤後傾の状態が原因です。

よく「姿勢を良くしましょう」と言われると、胸を張って背中を伸ばします。

しかし本当は骨盤を前傾させて、結果的に胸や背中が治るようにしなければ、すぐに悪い姿勢に戻ってしまいます。

また、このとき腹筋が弱いと、骨盤が後傾しやすくなります。

そのため、大人は腹筋のトレーニング、子どもは姿勢がいろいろと変わる遊びを取り入れることで、腹筋も刺激され、姿勢が良くなってくるでしょう。

ここからは、姿勢がいろいろと変わる遊びを紹介していきましょう。

骨盤と腰を動かすエクササイズ

両手・両膝を着いた四つん這いの状態で、背中を丸めたり反ったりしましょう。

幼児に行うときには、背中を丸めるときには「ボール、コロコロ」と言わせ、背中を反るときには「ネコ、ニャー」と言わせています。

このとき、イメージしやすいように「背中」と言いましたが、実際は腰・骨盤を動かすように行ってください。

また、立った状態でもやってみましょう。

腰に手を当てて、腰・骨盤を後ろに倒して背中を丸める動作「ボール、コロコロ」、腰・骨盤を前に倒して腰を反る動作「ネコ、ニャー」を行います。

できない人によくあるパターン

ちなみに、できているつもりでも、実際にはできない人が結構います。できない人には2パターンあります。動かし方が分からない人と硬くて動かない人です。

また、できていても動きが遅い人が少なくありません。そして、できているようで動かしきれていない人もいます。

腰・骨盤をスムーズに動かせない子は姿勢も悪いですが、運動に関しても苦手な場合が多いようです。

体幹を使った動きができず腕や足だけの動きとなってしまい、力をうまく伝えられなかったり、こぢんまりとした動作になってしまったり。

また、体幹にあるインナーマッスルも使えないため、動きがぎこちなくなってしまうこともあるでしょう。

骨盤を動かす運動でおすすめの種目

骨盤がしっかりと動かせるように、以下のような運動を推奨しています。

お尻歩き

床にお尻をつけて座り、お尻だけで前後に歩く。

壁スクワット

壁と向かい合い、脚を肩幅に開いた状態で壁につま先をつけ、強制的に膝がつま先よりも前に出ない状態にしてスクワットする(骨盤を前傾させながら行うと、後ろに倒れないでできます)

小さい子の場合、お尻歩きは行いますが、壁スクワットはさせないようにしましょう。

マット遊びやアスレチック、親子遊びなどで、遊びながら骨盤を自然と動かせるように導いていくようにしましょう。

姿勢は遺伝より教育の影響が大きい

身長に関しては遺伝の要素が強いですが、姿勢に関しては骨格だけでは決まりません。そのため、その後の取り組みの影響が大きいでしょう。

姿勢は作るものです。第一印象にもつながり、内臓の機能にも関わってきます。

ぜひ、小さいうちから気をつけるようにしてあげてください。

著者プロフィール

赤堀達也(あかほり・たつや)

1975年生まれ。静岡県出身。小中学校・大学でバスケを指導し、小・大で全国出場、公立中学で県Best4 に入るなどの実績を残す。最高は全国準優勝。選手育成は独創的理論による論理的指導で行い、新体力テストが最低水準校で県大会優勝、高校時代に日の目を見ない大学の選手で東海1部に昇格した。また幼児・高校の体育も行い、全年齢の子どもに携わる。現在は群馬医療福祉大学で教鞭を執り、幼児の体育・健康の授業や研究を行っている。また学校における働き方改革の部活動問題の解決に向け、社会体育クラブを設立・活動している。
[HP] https://mt-a.jimdo.com

<Text:赤堀達也>