インタビュー
2018年12月4日

中学まで剣道と野球。型にはまることが大嫌いな大柄少年でした。柔道家・小川直也(前編)│子どもの頃こんな習い事してました #19 (2/3)

高校入試でスカウトされて柔道へ

――柔道との出会いは?

高校、厳密に言えば中学3年生の終わりです。高校入試(私立八王子高校)の面接で、恩師となる小野実先生に出会ったことがきっかけです。もともとはラグビー部がある都立高校が第一志望でした。ドラマ「スクールウォーズ」を見て「俺に向いているかな」と思って。

面接って普通はその学校を志望した理由なんかを話すじゃないですか。そういうことを暗記して行ったのに、いきなり「キミ、いい体してるね」から始まって、「キミは柔道に興味ないか」「100メートルは何秒で走れるの?」とか終始そういう話。こっちはマニュアルにない質問ばかりでテンパって、とにかくいい印象を持たれたいと調子のいいことばかり言うじゃないですか。それが始まりです。

――運命の出会いですね。

後から聞いた話によると、前日の筆記試験で「すごく体の大きなやつが受けてたぞ」と先生たちの間で話題になって、小野先生がわざわざ受験番号を調べて自分が面接を担当したいと頼んだそうです。

その後、都立高校の試験が終わったころに小野先生から電話が来て、熱心なスカウトを受けました。それまでほめられたことがなく、「体が大きいことはダメだ」という中で育ってきたでしょう。なのに、「柔道はその体と体力を生かせる」「君は柔道に向いている」とほめられたことがうれしかったんでしょうね。そこまで言うなら柔道をやってみようかな、と。小野先生は自宅の1階に道場を設けて指導していたので、そこに通い始めました。1983年3月6日のことです。

――進学先の変更について親御さんはなんと言いましたか。

第一志望の都立高校も合格したんですが、親は僕の選択にまかせてくれました。ただ「柔道部にちょっと入ってみて、やっぱり厳しいからやめるというのはナシね。高校3年間、一生懸命がんばりなさい」と。競技の厳しさは剣道やリトルリーグで経験があるので大丈夫だと思いました。中学校の先生は気の迷いじゃないかと思っていたみたいです。高校の柔道部なんて小さいころから柔道を習っている子ばかりですから、確かに当時は大冒険でしたね。

入部してみたら案の定、僕だけですよ、受け身から始めたのは。最初の3ヶ月間はひたすら受け身の練習。それだけ。でもうれしかったですね。部員は大きい人ばかりでみんなよく食う。それが心地よかった。今までは「もっと体を絞れ」ばかりだったけど、「どんどん食え食え」に変わった。だから柔道を好きになれたということもあったでしょうね。

僕だけ初心者という焦りはありませんでした。剣道で対人競技は慣れていたので「同じ武道だし、こんなやつらに負けない」と思ってましたね。最初はよく投げられていましたが。

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