子どもを運動嫌いにさせない。体を動かすのが楽しくなる、手軽なエクササイズ4選
子どもの体力や運動能力の低下が社会問題になってからしばらく経ちます。文部科学省が1964年から毎年公表している体力・運動能力調査(2015年からはスポーツ庁)によると、子どもの体力と運動能力は1985年をピークに低下傾向が続いています。
その原因としてよく指摘されるのが、子どもが外遊びをする時間、場所、そして仲間が減っていることです。子どもがゲームなど室内で過ごす時間が長くなり、自由に遊び回れる空き地や公園が減少。そして、少子化の影響から一緒に遊ぶ兄弟や友達が少なくなっていることは誰の目にも明らかでしょう。
子どもが運動不足になってしまうと、単に学校で体育の成績が悪くなる、将来スポーツの分野で活躍できなくなるだけではありません。むしろ肥満や生活習慣病など、健康面において大きな悪影響に繋がるおそれの方が深刻です。
▲外で遊ぶ時間をたくさん取ることで子どもはスポーツ好きになっていく
先に挙げた調査によれば、子どもの体力・運動能力は全体に低下傾向にあると同時に、優れているグループと劣るグループの2極化が進んでいるということ。自然に任せていては、現在の子どもは運動不足になってしまう状況です。そのため、意識的に子どもと遊んだり、運動する機会を探してあげることも、親の重大な役割になってきたといえるでしょう。スポーツが友達よりうまくできなくて運動が嫌いになり、さらなる体力低下を招く。こういった悪循環に陥らないようにしなくてはいけません。
子どもと遊ぶ時間が取れないときは
しかし、いざ子どもを連れて公園などに行っても、どうやって遊んであげていいかわからない親も多いかと思います。あるいは仕事や家庭の事情で、子どもと遊ぶ時間が充分に取れない親もいるでしょう。そのような場合は、スポーツ教室などに連れていくことも選択肢の1つです。
クロスフィットトレーナーである筆者は、幼児からティーンまでの子どもクラスも受け持っています。親もクロスフィットをやっているという理由から、家族で通ってくる子が半分ほど。残りの半分は、親がどうしても子どもに運動をさせたいからとジムに連れてきた子たちです。その中でも5歳~10歳までのクラスを教える際、もっとも心がけているのは「とにかく運動を楽しんでもらうこと」です。たとえうまくできなくても、すぐに飽きたり疲れたりしても、子どもが運動嫌いにならないように気をつけています。
ここで、実際のクラスで行っているエクササイズの中から、小さな子どもたちが喜び、器具がいらないものをいくつかご紹介します。
1.「Bear Crawl(クマ)」
両手両足を地面につけて前後に動きます。ここでは「クマ」と呼んでいますが、同じような動きでも速く動くときは「チーター」、ゆっくり動くときは「ゾウさん」なんて変化をつけるだけで子どもは喜びます。
一度に長い距離を動かないで、こまめに方向を変えるのも集中力を切らせないコツの1つ。もし10メートル行うなら、5メートルごとに引き返したり、左右に曲がったりするといいでしょう。
2.Bunny Hop(ウサギ)
両足を揃えて小さくジャンプして前に進みます。両手を胸の前で揃える必要はないのですが、これを入れるだけで子どもの笑顔が変わってきます。
3.Frog Jump(カエル)
いわゆるカエル跳びですが、もちろん長い時間や回数をやるわけではありません。両膝をいったん深く曲げて、それを伸ばす勢いを利用して前方に大きくジャンプします。大人が行っても、瞬発力アップのためのよいエクササイズになるでしょう。
4.Super Man(スーパーマン)
体幹を鍛えるプランクのバリエーションのひとつです。お腹を地面につけて、両手両足を浮かした姿勢を維持します。「●●秒この姿勢でガマンしよう」と言うより、大人が目の前で同じポーズをとって変な顔をしてあげる方が長続きします。
親が一緒に体を動かして遊んであげることも効果的
こうしたエクササイズは、大人の工夫次第で子どもの楽しみ具合が変わってきます。動作の種類はさほど問題ではありません。体を動かすことを楽しむのが最優先です。本来であれば、自由な運動遊びの中で、体の動かし方を自然に身につけていくのがもっとも望ましいでしょう。しかし親が一緒に遊んであげることも、運動遊びの代わりか、少なくとも何もしないよりは足しにはなります。
まとまった時間は必要ありません。ジムでは運営上、1クラスを30分~1時間などに定めていますが、実はそれだけの間、ずっと集中できている子どもはほとんどいません。5分でも10分でも構いませんので、子どもと一緒に体を動かす遊びをやってみましょう。
[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
【公式Facebook】https://www.facebook.com/WriterKakutani
<Text & Photo:角谷剛>