インタビュー
2022年9月22日

「アイスクリーム屋さんになりたい」、柔道金メダリストを経て子どもの頃作文に書いた夢を叶えた 元柔道日本代表・松本薫(後編)|子どもの頃こんな習い事してました #32 (2/3)

「こんなアイスクリームがあったらいいな」という夢を叶えた

――引退後はアイスクリーム屋さんに転身。アレルギーを持つ人や、ヴィーガンの人も食べられる乳製品や白砂糖を使わないアイスクリーム「Darcy's(ダシーズ)」を提供してらっしゃいます。なぜアイスクリーム屋さんなのでしょうか。

子どもの頃からアイスが大好きなんです。小学校の作文で「大人になったらアイス屋さんかケーキ屋さんになりたい」と書いたことがあるくらいです。当時、先生に「いや、松本さんは柔道をがんばってるから、柔道について書いてみたら」って却下されてしぶしぶ「オリンピック選手になりたいです」と書いた記憶があります。

大好きな仕事に携われて楽しいのですが、歯がゆいところもあります。まだ子どもたちが小さいので時短で働いているんです。もっと働きたいとウズウズしているんですが、今できる限りのベストを尽くすしかないなと考えています。

――ダシーズのアイスクリームはとても濃厚でおいしいですね。低糖質アイスということでもっとあっさりしているのかと思いました。

「ル・ショコラ」は、豆腐を加えることで濃厚だけれども低糖質・高タンパクに仕上げています。「一番抹茶」は有機JAS認定を受けた静岡茶を使っています。抹茶は繊細なのでこの味にたどり着くまで製造法の研究に一番時間と手間がかかりました。「プレミアムココナッツミルクチョコクッキー」は、いろんなココナツミルクを試して、香りとコクいっぱいのこの味になりました。混ぜ込んでいるグルテンフリーのオリジナルチョコクッキーは少し塩味をつけてココナツミルクに合うように作っています⋯⋯柔道よりアイスのことの方がよくしゃべれる(笑)。

――現役中は、体重管理などもありアイスはなかなか食べられなかったのではないでしょうか。

いや、逆に選手はめちゃめちゃアイス食べるんですよ。減量して絞ると体の水分量が下がって体がほてってしまうので、体の内側から冷やそうとアイスを食べる。でも体が糖化するとけがに繋がったり回復が遅くなったりするとされているので、影響が少ない低糖質のアイスがあればいいなとずっと思っていたんです。

これから習ってみたいことがたくさんある

――2021年の東京オリンピックでは柔道の解説で活躍されました。

私、いろんなスポーツの解説を聞いていて、正直言って何を言ってるかわからないことが多いんです。専門的用語が多すぎて、「解説」になってないな、なんでもっとわかりやすく説明してくれないんだろうって。柔道に詳しい人は解説しなくてもわかる。そうでない人たちに向けて届く言葉で伝えようと解説をしました。

選手の気持ちもわかってもらえるようにということも心がけました。選手の気持ちが一番よくわかるのは選手経験者。負けたとき、選手はただでさえ落ち込んでいるのに、SNSなどの書き込みを見てさらに落ち込むんです。せめて私は解説者という立場ではありますが、選手を応援しよう、絶対に選手を悪く言わないようにしよう、ここまできたのは選手の努力な賜物だから、1人1人の良さを伝えられるようにしようと考えていました。

――技術についてもとてもわかりやすい解説だと話題になっていました。今は時短で働いているということですが、これからチャレンジしてみたいこと、習ってみたいことはありますか。

いっぱいあります。まずバク転してみたい。1回、道路でバク転しようと思い立ってやっちゃったんです。そしたら頭をめちゃくちゃ打って、それから恐怖を植え付けられてやったことがない。人生に一度はちゃんとバク転してみたい。

英語もしゃべれるようになりたい。ダシーズを世界展開していきたいという思いがあるので、そのときにコミュニケーションをとれるようになりたいです。

それから、小さい頃からピアノをやってみたいと思っていたんです。自分のリズムを音で表現したらどうなるだろうと興味があります。私の中では柔道はリズム。自分の鼓動のリズム、呼吸のリズム、動きやすい足のリズムがある。試合の前に音楽を聴く選手が多いのですが、私は聴くと音楽のリズムにつられてしまい自分のリズムが崩れるんですね。だから試合会場に入ったら絶対音楽を聞かないことが自分の中のルール。むしろ外に出て風のリズムや木の揺れるリズムのほうが居心地がいいので、よく試合会場で外を見ていました。

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