インタビュー
2017年11月1日

葛飾北斎の人物画とヨガが融合!? 北斎ヨガの魅力にせまる(前編)

 生涯に渡り3万点を越える作品を残したという葛飾北斎。そのユーモア溢れる作品の数々は、かの有名な画家ゴッホやセザンヌに影響を与えたともいわれています。そんな北斎が描いた生き生きとした江戸の人々にインスパイアされて生まれた「北斎ヨガ」。考案者のオカザキ恭和さんにお話を聞き、実際に体験してきました。

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北斎の絵から伝わってくる、江戸の人々のスピリット

――まずは、どういったきっかけで「北斎」と「ヨガ」が結びついたのでしょう?

図書館で『北斎漫画※』見たのがきっかけです。すぐに、北斎が描くユーモア溢れる世界観に魅了され、「この本の中に入ってみよう」って思ったんです。もともと私はコンテンポラリーダンサーとして身体を使った表現活動をしていたんですが、絵の真似をしてポーズをとってみると、既存のヨガのポーズに似ている物が数多くあることに気付いて。ポーズを真似ているうちに、江戸の人々の身体の使いかたに日本人のDNAのようなものを感じてきて、どんどん探究心が掻き立てられていったんです。
※北斎漫画:江戸時代に葛飾北斎が絵手本として残したスケッチ画集

――江戸の人々の絵から何が伝わってきましたか?

江戸時代は今でいう下腹部に当たるお腹の部分を「肚(はら)」と呼んでいました。「腹をくくる」とか「切腹」という表現があるように、肚にはその人の魂や命、スピリットが宿っているという思考があったとされています。北斎の人物画を真似するときも、肚をしっかりと意識していないとバランスが取りづらく、グラグラするんです。

「肚」は、ヨガでいう「チャクラ」という野性のチカラ、生み出すチカラを表す概念に近いのではないかと思います。江戸時代は文化がとても発達していき、人々が自ら物を生み出したり、世の中を発展させたりするチカラが活発であった時代です。肚を身体の軸としていた生活様式が、江戸の人々の創造性に繋がっていったのではないかと思うんです。そんな時代を過ごす江戸の人々の身体から、今をもっと豊かに生きていくヒントを見つけることができるのではないかと感じました。

――「肚」を意識することとヨガの精神は通ずるものがあるということですね。

ヨガで重要な「丹田呼吸 (=腹式呼吸) 」とはまさに自分の肚を感じながら呼吸をすることです。身体のどこかに意識を向けて集中すると、そこにエネルギーが集まってきます。丹田(肚)は、実際に目に見えるものではないので、感じようとするチカラが大事。こういった精神的な面にも影響を与えてくれるのが、北斎ヨガの魅力です。

北斎ヨガを体験! まずは「肚」を意識してみよう

◆肚を意識したエクササイズ 「ゆらゆら」

 最初は、自分の「肚」を感じることから始めていきます。おへそから指4本分くらい下の部分が丹田(肚)の位置とされています。肚を光の玉のようにイメージし、深呼吸しながら前後左右にゆらゆらと揺らしてみます。

 たったこれだけの動きで、こわばりからくる身体の縮みがスッと伸びていく感覚が! あっという間に、緊張が解けたような気持ちの良い力の緩み、抜けを実感しました。日頃、無意識に身体に余計な力が入ってしまっていたのがよく分かります。

◆富士山のポーズ

 肩幅程度に足を開き、足裏を通して大地深くに息を吐いていくイメージで深呼吸をします。吐く時、肚に声を響かせるイメージで「オーーー」という声を出します。

 何回か行っていると、肚に集中を集めていくことで不思議と気持ちがとても落ち着いていきました。腕を思いっきり上に伸ばすことで背筋がピンと伸び、姿勢が正される感じ。大きく伸びをすると、やっぱり気持ちいい! 

 身体の軸となる「肚」を意識したエクササイズ。ちょっと意識しただけで、精神が安らぎ、身体の内側が落ち着いていく感じがありました。忙しなく生活している中で、こういった落ち着ける時間を持つことはとても大切ですね。

 後編では、「北斎ヨガ」ならではのユニークで珍しいポーズを体験していきます!

後編はこちら

江戸の人々も体幹を鍛えていた?北斎ヨガの魅力にせまる(後編) | 趣味×スポーツ『MELOS』

[プロフィール]
オカザキ恭和(おかざき・やすか)
神奈川県生まれ。大学卒業後、仕事の息抜きとして始めたダンスがきっかけで身体表現、ダンスに関心を寄せコンテンポラリーダンスやヨガに取り組む。すみだの下町にあるアトリエ兼アートスペースyahiro8(ヤヒロエイト)を拠点に、町と町の人々とつながるイベント公演や企画を中心に活動中
[HP]http://hokusaiyoga.com/

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<Text:こいけおとふみ(オフィス・サウス)/Edit:アート・サプライ(丸山美紀)/Photo:玉井幹郎>