インタビュー
2017年12月4日

翼は、サッカーの申し子。永遠に10番です。高橋陽一先生が語る『キャプテン翼』に託した夢(後編)│熱血!スポーツ漫画制作秘話 #2 (1/3)

 スポーツ漫画が描かれた制作秘話を探る本連載。実際に作者にご登場いただき、名シーンが生まれた舞台裏やあのキャラクターが生まれたきっかけをお訊きします。

 前編に引き続き後編は、国民的サッカー漫画『キャプテン翼』の生みの親である高橋陽一先生に作画のこだわりや、翼に託した夢について伺いました。

▼前編はこちら

サッカーは自由なスポーツ。その楽しさを伝えたかった。高橋陽一先生が語る『キャプテン翼』に託した夢(前編)【熱血!スポーツ漫画制作秘話 #2】 | 趣味×スポーツ『MELOS』

ダイナミックな試合展開に隠されたこだわり

——主人公である大空翼をはじめとした魅力的なサッカー選手たちが繰り広げる試合の数々に、世界中のファンが今もなお熱狂しています。先生自身は試合を描くときにどんなことを意識しているのですか?

サッカーの醍醐味はゴールが決まるときで、そこが最大のカタルシスを得られる瞬間ですから、シュートを打つシーンと、ボールがネットに突き刺さるシーンはカッコよく描きたいので自然と熱が入りますね。

あとは、野球だとある程度動きが決まってくるのですが、サッカーは動きも自由で広いフィールドの中を人とボールが行き交っているのが特徴ですよね。その情報を伝えるために、テレビのサッカーの試合だと基本は俯瞰の映像が多いのですが、テレビで見るよりも迫力のあるサッカーのシーンを描きたいので、ピッチのあらゆるところにカメラを配置して、いろんな構図で描いていこうというのは意識しています。

なので、寄りの絵を描いていても頭の中では逆サイドを誰かがオーバーラップしてきて……、というイメージは常にあって、常に寄りと俯瞰のスイッチを入れ替えながら描いてますね。

——先生の大胆かつ変幻自在の構成とコマ割りは、そういったイメージが反映されているのですね。長年試合を描き続けていて、以前と描き方や試合を描く際に意識するポイントの部分で変化が出てきたところはありますか?

“監督目線”というのは描くにつれて大きくなっていったかなと思います。やはり最初の頃はプレーヤー目線というか、11人vs11人のプレーヤーだったりチームだったりという戦いだったのが、サッカー自体の理解も深まっていくにつれて、より監督の重要性だったり、采配の部分だったりのウエイトが占める割合が多くなってきているのかな、と。11人+交代枠3のその3をどう使うかというところまで、試合を考える上で意識することが多くなりました。

——そういった試合の描き方で、影響を受けたり参考にした作家さんはいらっしゃるのでしょうか?

構図や動きに関していうと水島新司先生の影響が大きいと思いますね。最初の頃は水島先生の野球漫画をサッカー漫画にしたら……という作り方をしていたのではないかと思います。

——水島先生といえば、空振りさせるつもりがいいスイングをしてる絵が描けちゃったからホームランにしたなど、途中からご自身の意思とは無関係に試合が動き出すといったお話もありましたが、高橋先生はそのようなことはありましたか?

それに近いことはありましたね。早田誠のカミソリタックルがすごい迫力で描けたときに、「このタックルはかわせないよな」とか(笑)。

——試合展開自体は割とかっちり決めてから描かれるのでしょうか?

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