翼は、サッカーの申し子。永遠に10番です。高橋陽一先生が語る『キャプテン翼』に託した夢(後編)│熱血!スポーツ漫画制作秘話 #2 (3/3)
そうですね……。翼は誰でもないんですよ(笑)。きっとメッシみたいな小刻みなドリブルもできるし、クリスティアーノ・ロナウドみたいなダイナミックなドリブルもできる。翼はサッカーの申し子なので。
——確かに翼は、一度見た技は全部自分のものにしてしまいますよね。もう1つ、翼といえば“10番”ですが、いま現実のサッカーでも世界的に10番の場所が失われつつあります。図らずも日本代表にもそのような流れが見受けられている中で、今後、サッカー選手として翼はどのような変化、進化を遂げていくのでしょうか?
いつの時代も翼は10番ですね。永遠に10番です。
翼に託した思い〜自由と楽しさ〜
——『キャプテン翼』という作品は、長年に渡って日本のみならず、世界中のサッカーファンから愛されています。国や言語、文化の壁を超えて、これだけ多様な人々に刺さった、翼の持つ魅力とは、先生はどこにあるとお考えでしょうか?
普遍的なテーマ、スポーツっていうのは楽しいよ、サッカーって、自由で楽しいスポーツなんだよっていう部分が、いつの時代でも常に受け入れられているんだと思います。それに合わせてサッカーというチームスポーツ、仲間がいて、ライバルがいてという関係性ですよね。よくサッカーは人生の縮図に例えられますけど、人間同士の普遍的な繋がりの部分にも通じるところがあると思うので、そういう部分も共感しやすい部分ではないでしょうか。
——そういった先生の思いを端的に表現されているのが、ロベルトノートのなんじゃないかと思います。
サッカーという競技は年々、戦術の部分で細かくなってきていたり、難しくなってきている部分があると思います。でも、どんなに戦術を整備しても、一人のズバ抜けた選手に打ち破られることもあるわけだし、理屈を飛び越える部分を常に持っているスポーツだと思うんです。その根底にあるのは、サッカーがもつ自由さと楽しさだと思っているので、それはいつまでも伝えていきたいですね。
▲ロベルトノート52ページ(JC35巻掲載)
——これまでも『キャプテン翼』を読んで翼に憧れ、数多くのサッカー選手が生まれたように、翼にはこれからもずっとサッカー選手を目指す子どもたちの憧れであり続けてほしいし、サッカーの楽しさを一人でも多くの人に伝え続けてほしいと思います。そしていつかは、翼がW杯で優勝する姿が見られたらと願います。
今はオリンピック編のことしか考えていませんが、2011年になでしこがW杯で優勝して澤穂希さんが大会MVPを取られたときに、「翼くんて、女の子だったんだな」って思いました(笑)。翼でやりたかったことを全部実現してしまいましたからね。今は翼を追い越してみんなW杯にも出場して、日本サッカー界を牽引してくれていますが、やはり男子選手からも翼くんが出てきてほしいというのは常に思っています。日本がW杯で優勝できたらすごいことだと思うし、それはいつ見れるかわからないですけど、そういう夢を常に抱いて、僕も漫画を描き続けたいと思うので、実際にやってる選手たち、サッカー選手を目指す子どもたちも同じ夢を抱いて、頑張って欲しいです!
[撮影協力]
集英社グランドジャンプ編集部
▼前編はこちら
サッカーは自由なスポーツ。その楽しさを伝えたかった。高橋陽一先生が語る『キャプテン翼』に託した夢(前編)【熱血!スポーツ漫画制作秘話 #2】 | 趣味×スポーツ『MELOS』
[作品紹介]
『キャプテン翼』(全37巻)
サッカーボールを友達に育った少年、大空翼は小学6年生。南葛小に転校してきた翼は、修哲小の天才GK・若林源三と出会う。翼は若林に勝負を挑むが、決着は両校の対抗戦でつける事に!!『キャプテン翼ライジングサン』(1〜7巻。『グランドジャンプ』にて好評連載中) スペイン プロサッカーリーグ「リーガ エスパニョーラ」の名門チーム、バルセロナに入団した大空翼は、新人ながらゲームメーカーとして、リーグ優勝をかけたシーズン最終戦に臨んでいた。そして、その先に翼が目指すもの、それはU-23日本代表を率いての、五輪での金メダル。翼たちの新たなる挑戦が、今ここに幕を開ける!!
・集英社グランドジャンプ公式サイト
http://grandjump.shueisha.co.jp/manga/tsubasa.html
[プロフィール]
高橋陽一(たかはし・よういち)
東京都葛飾区生まれ。1980年、『キャプテン翼』(集英社)でデビュー。1983年にはアニメ化。同作品は現在の日本でのサッカー人気はもとよりサッカーの普及に大きく貢献した。芸能人女子フットサルチーム「南葛シューターズ」の監督も務めるなど、漫画家以外の活動も積極的に行っている。
<Text:関口裕一+アート・サプライ/Photo:玉井幹郎>