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2018年1月9日

「僕らには『キン肉マン』があるやないか!」ゆでたまご・嶋田隆司先生が語る『キン肉マン』(前編)│熱血!スポーツ漫画制作秘話 #3 (3/3)

何十年も経ってから西村さんに聞いたら、「アテなんてなかったよ。ハッタリ」って言ってましたよ(笑)。

▲西村繁男氏のハッタリにより、61巻も続く大人気作品が生まれた

キン肉マンの人気に車田正美先生が激怒!?

——そしていよいよキン肉マンの連載が開始されますが、連載当初から物凄い人気だったとか。

キン肉マンって連載1回目のアンケート、最初に出てくる速報が1位だったんですよ。その頃は車田正美先生の「リングにかけろ」がすさまじい人気に毎回1位を独占していた状況だったので、当時は天才って言われましたね(笑)。そのとき、車田先生が「速報何位だった?」と担当に聞いたそうで。いつも1位って返ってくるわけだから、今回もそう答えると思ったら担当が「先生、ちょっと言いにくいんですけど、キン肉マンっていうのが1位で……」ってなったら車田先生が「なんだそりゃ! 俺はそんな奴は絶対に負けない!」と激怒したというのをあとで伺いました。

——さすが車田先生というべき熱さですね。

でも結局最終順位は2位で、「リングにかけろ」に負けたんですけどね。そのときに連載を1年確約されたんですよ。ふつうは10週様子見ないとダメなんですけどね。だからすごく気持ちがラクになりましたよ。毎週戦わなければならなかったのが1年間なんとか我慢してくれると言ってくれたわけだし、中野さんも気長にやりましょうって言ってくれて。それでも1年間は人気が下がらなかったですね。ずっとベストファイブに入ってました。

——連載が1年保証されたことで、キン肉マンのストーリー展開に影響を及ぼした部分はあったのでしょうか?

だいたいやることは決まっていたので、そこまで大きな影響はなかったです。最初はあくまでウルトラマンのパロディみたいなもんだったので。世の中に優等生っぽい強いヒーローはいたけど、ドジでダメなヒーローっていうのはいなかったじゃないですか。ドジでダメだけど責任感は強くて、わけのわからない力で勝っていくのがキン肉マンで、それは当時主流だったスポ根漫画に対するアンチテーゼっていうものありましたよね。子どもって努力キライですし、キン肉マンも全然努力しないで火事場のクソ力ですからね(笑)。そういうところに子どもは惹かれたんじゃないかと思ってます。

——確かにキン肉マンが努力しているシーンは少ないかもしれません。カメハメのところで唯一してるくらいですよね。

楽しくて強い、でもドジ。決してカッコよくない。あくまでもギャグ漫画ですからね、キン肉マンは。

▼後編に続く!

「解散したら今までが嘘になる。だから僕らは死ぬまで続ける」ゆでたまご・嶋田隆司先生が語る『キン肉マン』(後編)【熱血!スポーツ漫画制作秘話 #3】 | 趣味×スポーツ『MELOS』

[作品紹介]
『キン肉マン』(全61巻)、「週プレNEWS」にて連載中
地球を襲う怪獣達に軽くあしらわれ、相手にもされないドジな超人・キン肉マン。しかし、その正体はヒーローの中のヒーロー・キン肉族の王子だった!超人オリンピックなど、幾多の戦いを通して友情を育み、仲間とともに悪の超人と戦うッ!!

・ゆでたまご公式サイト
http://www.yudetamago.jp/index.html

・週プレNEWS
http://wpb.shueisha.co.jp/

[プロフィール]
嶋田隆司(しまだ・たかし)
1960年生まれ。大阪府出身。1978年に『キン肉マン』で第9回赤塚賞に準入賞。『週刊少年ジャンプ』にて連載を開始。その後アニメ放映もスタートし、「キン消し」ブームなどが起きた。1987年、惜しまれながらもジャンプでの連載が終了。1998年から『キン肉マンⅡ世』を『週刊プレイボーイ』で、2011年からは『キン肉マン』の続編をWebサイト『週プレNEWS』にて連載中。

<Text:関口裕一+アート・サプライ/Photo:有坂政晴(STUH)>

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