インタビュー
2019年1月27日

天狗倶楽部(TNG)にとって「イタイ」「暑苦しい」は褒め言葉。『いだてん』チーフ演出・井上剛が振り返る (2/4)

勘九郎くんに「素顔じゃダメなんですか」と言われました(笑)

――中村勘九郎さんの登場シーンが歌舞伎の隈取でした。

実際に、帽子の塗料が落ちて頭から血を流しているように見えた、というのは史実のエピソードです。そこから空想しました。第1回のラストシーンで、やっと主人公が出てくる場面。それなのに顔が血だらけだったら、視聴者がドン引くだろうな、まずいことになるなと思って。

中村勘九郎さんの歌舞伎を鑑賞しているときだったか、隈取ってありかもな、と思いついたんです。そこで勘九郎くんに相談して中村屋の隈取を勉強し、アレンジしました。主人公を血だらけで登場させるより、少しファニーに、ファンタジックにやりたかった。最初は、勘九郎くんに「素顔じゃダメなんですか」と言われました(笑)。「登場からいきなりですか、すごい大河ですね」と言われて。

天狗倶楽部にとって、「イタイ」「暑苦しい」は褒め言葉

――天狗倶楽部など、個性的なキャラクターが多く登場しています。

『いだてん』は、痛快にやりたいという想いがあります。それが、あの天狗倶楽部の独特の盛り上がり方にもつながります。すぐ裸になったりして、暑苦しい人たち(笑)。三島弥彦役の生田斗真さんらは、撮影の合間にはエキストラを含めた演者で集まり、焼き肉を食べに行く“天狗会”を開催しているそうです。

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天狗倶楽部が大声を張り上げる「天狗コール」は、今後も出てきます。だから何度も練習しました。あの歌詞(テング、テング、テンテング、テテンノグー。奮え、奮え、天狗!)は資料が残るオリジナルのものですが、振り付けは、映像が残っていないので完全にこちらの創作。ダンスカンパニー「コンドルズ」の近藤良平さんに歌詞だけ見せて、ダンスを考案してもらいました。そこからアレンジを重ねて、応援っぽく見えるよう、それでいて現代の応援団とは異なるように工夫しています。

天狗コールは、やる側としては恥ずかしい。だから演者の皆さんには「視聴者が、イタイよと引くくらい、振り切ってやってください」とお願いしています。ここで暑苦しい、イタイ、は褒め言葉ですね。

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