日本人初のオリンピック出場へ、ついにストックホルムへ旅立つ金栗四三と三島弥彦。『いだてん』第8回の見どころをチーフ演出・井上剛に聞いた (1/2)
日本人初のオリンピアンとなったマラソンの金栗四三と、1964年の東京オリンピック招致に尽力した田畑政治を描いた、宮藤官九郎さん脚本によるNHK大河ドラマ「いだてん ~東京オリムピック噺~」。第8回「敵は幾万」(NHK総合、2月24日20時放送)では、主人公の金栗四三がいよいよ決戦の地、ストックホルムに向けて旅立ちます。都内で、チーフ演出を務める井上剛さんが見どころなどを語りました。
[プロフィール]
井上剛(いのうえ・つよし)
『いだてん』でチーフ演出を務める。これまでに『あまちゃん』、『64(ロクヨン)』、『トットてれび』、『その街のこども』(のちに『その街のこども 劇場版』が映画作品として劇場公開された)、『クライマーズ・ハイ』、『ハゲタカ』など数々のヒット作を送り出している。大河ドラマの演出は、『利家とまつ~加賀百万石物語~』(2002年)以来2度目。
※写真は2018年の第1回完成試写会のもの。
ついに金栗四三と三島弥彦がオリンピック出場へ旅立つ
[第8回「敵は幾万」のあらすじ]
大金を携えて上京してきた兄・実次(中村獅童)から、春野スヤ(綾瀬はるか)の働きかけで資金を得られたと知る四三。スヤと無邪気に野山を駆けていた自分が、オリンピックのために海を渡る不思議さを感じつつ、兄に一生懸命戦うことを誓う。四三の壮行会が開かれるころ、スヤは熊本で嫁入りをする。見送る大勢の人々の「敵は幾万」の歌に包まれ、オリンピックに出陣する四三と弥彦(生田斗真)。まさに汽車が動こうとしたとき、弥彦の名を叫ぶ声がする──。
――第8話、ついに旅立ちの回となるわけですね。
はい。日本人選手として初めてのオリンピック出場を果たすべく、シベリア鉄道でストックホルム(スウェーデン)に向かいます。熊本の片田舎で育った金栗四三(演:中村勘九郎)にとっては、上京さえ驚きの連続だった。それが、本当にストックホルムなんて場所で、オリンピックなんてものが開催されるのかと、一体なにが待ち受けているのかと、気持ちを昂ぶらせていく様子が描かれます。金栗四三は抱えていたお金の問題を解決し、短距離の三島弥彦(演:生田斗真)はそれまで反対していた家族の理解を得ることができて。物語としては、ここでひとつのピークを迎えます。はっきり言って、感動します。
駅ではまるで壮行会のように、たくさんの日の丸の旗がはためく中で、詰めかけた人々から祝福を受けつつ見送られますが、このシーン、実はもっと先の展開につながる伏線にもなっています。日本は段々と、戦争の時代に突入していきますからね。このあたり、歴史ドラマとして楽しんでもらえたら。
新橋駅における別れの場面、生田斗真さんと白石加代子さん(弥彦の母、三島和歌子役)の演技は圧巻です。ネタバレですけれどね、これ以外に、第8話は驚きのシーンも挟みます。
――ストーリーとしては第8話だけれど、かなり初期の頃に撮影したと聞きました。
そうなんです、さすがに初日ではありませんでしたが。この日、三島家の俳優陣が初めて顔を揃えました。役者はすごいですね。生田斗真は、このとき初めて白石さんのことを「お母さん」と呼んだのに、とても良い演技でした。
あと、ロケーションも良かった。見ていただくと分かりますが、CGやVFXのすごさを思い知らされます。映像では新橋駅なんですが、ほとんど人の手でグラフィックを描いています。裏を明かすと、客車とホームは大井川鐵道の千頭駅です。線路の脇に、大群衆を集められる場所があって、撮影に最適だった。西日本でも、なかなかこんな場所はありませんでした。