インタビュー
2019年2月23日

日本人初のオリンピック出場へ、ついにストックホルムへ旅立つ金栗四三と三島弥彦。『いだてん』第8回の見どころをチーフ演出・井上剛に聞いた (2/2)

四三の歌声にも注目

――金栗四三が『自転車節』を歌うシーンもあるとか。

あるきっかけから、東京高等師範学校の壮行会で、フルコーラスを歌うことになります。それを聞く周りの人たちが呆気にとられる様子を撮りたかったので、現実の世界でも、直前まで他の俳優陣には歌を聞かさずにおきました。皆さん、はじめはポカンとして聞いていたけれど、次第に盛り上がってくれた。これも良いシーン。

――視聴率が伸び悩んでいるとの見方があります。

これまでずっと“テレビ屋”としてディレクター業をやってきたので数字は気にはなりますが、現場の人間は作品を良くすることしか考えていないものですから、あまりそこに気をとられず、とにかくより良い、楽しいドラマをつくることに邁進しています。これだけの俳優陣、スタッフが集まっているので、自分たちを信じて、おもしろいと思うものを出し続けていくだけです。そこが揺らぐことはありません。

“歌舞伎ブラザーズ”と呼んでます

――金栗四三のお兄さん(金栗実次、演:中村獅童)がお金を持って熊本からやって来ますね。

獅童さんは熊本のシーンが多くて、いつもだいたい和服でした。上京する場面の衣装合わせのとき、たまたま思いつきで洋装してもらったら、これが非常にかわいかった。田舎の人が、目一杯のオシャレをした感じが出ていてね。中村勘九郎と中村獅童、ボクらは2人のことを“歌舞伎ブラザーズ”と呼んでいるんですが、この2人が揃うと独特の楽しさ、間、可笑しさ、悲哀が生まれる。ここで四三は、初めて兄貴と一緒に浅草十二階に登って兄弟で東京の街を見下ろし、ともに語らいます。これも良いシーン。

――駅のシーンは、真夏の炎天下のロケだったと聞きます。

エキストラは200人くらいいました。皆さん、水分を補給しながら、日陰で休みながらの撮影でした。役者は、重たくて暑いフロックコートを着ていましたが、現場の熱気に背中を押された部分もあったのではないでしょうか。熱気は、このドラマの背景にある中心的なテーマです。ちなみに第8話のサブタイトルは「敵は幾万」。群衆に飲まれるのか、背中を押されるのか。それぞれの役柄で、リアクションも違います。そこも楽しんでもらえたらと思います。

 井上さんの話によれば、宮藤官九郎さんの脚本はいま30話を超えたあたりだとか。今後の展開が、ますます楽しみになってきました。

[番組情報]
『いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~』
《放送予定》
全47回/毎週日曜[総合]20時/[BSプレミアム]18時/[BS4K]9時
《作(脚本)》

宮藤官九郎
《音楽》

大友良英
《題字》
横尾忠則
《噺》

ビートたけし(古今亭志ん生)
《出演(キャスト)》
中村勘九郎(金栗四三)、阿部サダヲ(田畑政治)/綾瀬はるか(春野スヤ)、生田斗真(三島弥彦)、杉咲花(シマ)/森山未來(美濃部孝蔵)、神木隆之介(五りん)、橋本愛(小梅)/杉本哲太(永井道明)、竹野内豊(大森兵蔵)、大竹しのぶ(池部幾江)、役所広司(嘉納治五郎)

荒川良々(今松)、池波志乃(美濃部りん/おりん)、井上肇(内田公使)、岩松了(岸清一)、柄本時生(万朝)、大方斐紗子(金栗スマ)、小澤征悦(三島弥太郎)、勝地涼(美川秀信)、川栄李奈(知恵)、小泉今日子(美津子)、近藤公園(中沢臨川)、佐戸井けん太(春野先生)、シャーロット・ケイト・フォックス(大森安仁子)、白石加代子(三島和歌子)、髙橋洋(池部重行)、田口トモロヲ(金栗信彦)、武井壮(押川春浪)、永島敏行(武田千代三郎)、中村獅童(金栗実次)、永山絢斗(野口源三郎)、根岸季衣(田畑うら)、ピエール瀧(黒坂辛作)、平泉成(大隈重信)、古舘寛治(可児徳)、ベンガル(田島錦治)、星野源(平沢和重)、松尾スズキ(橘家圓喬)、松坂桃李(岩田幸彰)、松重豊(東龍太郎)、満島真之介(吉岡信敬)、峯田和伸(清さん)、宮崎美子(金栗シエ)、山本美月(本庄)ほか
《制作統括》

訓覇圭、清水拓哉
《演出》
井上剛、西村武五郎、一木正恵、大根仁
《公式サイト》
https://www.nhk.or.jp/idaten

<Text:近藤謙太郎/Photo:NHK提供>

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