
「生きがい?そんなのないんだけど」という人にこそ読んで欲しい調査レポ (2/2)
日常にある楽しみや喜びを発見すること=生きがい
調査結果をもとに生きがいについて、メンタルケア・コンサルタントの大美賀直子さんにお話を伺いました。
[プロフィール]
大美賀 直子(おおみか・なおこ) メンタルケア・コンサルタント
公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラーの資格を持ち、カウンセラー、作家、セミナー講師として活動。現代人を悩ませるストレスに関する基礎知識と対処法を解説。
大美賀さん:生きがいと聞くとその言葉の重みから「素晴らしいものじゃなきゃいけない」と捉えがちです。でも実際は、日常にある楽しみや喜びを発見することが生きがいにつながります。
例えば料理を作るとき、ちょっとひと工夫をしたらおいしくできたとか、そんな日々の小さな発見が積み重なって生きがいになる。「人生の小さな宝探し」ですね。
今回の調査でも、生きがいが「ある」と答えた人にとっての生きがいとして、日常生活のささやかな瞬間が多くあげられましたが、この価値観はとても今っぽいですね。
ワークライフバランスが重視されたり、コロナ禍を経て人と接することの大切さを社会全体で実感したりしたことで、大きな夢だけが生きがいでなく、自分の気持ちの豊かさや心地よさが生きがいだと気付いたのではないでしょうか。
ですから、夢や目標など人生を懸ける壮大なものだけが生きがいと決めつけてしまうのはもったいない。身近にある小さな生きがいに気付き、楽しんでほしいですね。
今回の調査でも生きがいがあると答えた人は、40代が最も少なくなっています。40代は仕事も家庭も何かと忙しい年代で、気持ちにも時間にも余裕がなくて、日常の小さな喜びにも気付きにくい年代なのかもしれません。
常に何かに追われているような感覚になったり、自分の中に漠然と焦りがあったりすると、生きがいとは今の自分ではない何かで、頑張ってつくり出さなければならないものと思いがちです。
すると、ついありふれた日常の中にある生きがいを見逃しやすいのですが、実際には生きがいがある人も、そうでない人も、日常の体験自体に大きな差があるわけではないのです。その違いは喜びに気付けているかどうかだけです。
ゆとりが足りないと、同じ体験をしてもその価値に気付かず、通り過ぎてしまう、つまり、生きがいをスルーしてしまうのです。
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“生きがいスルー”を防ぐために、日々の暮らしにアンテナを張ろう
大美賀さん:では、“生きがいスルー”をしないようにするにはどうしたらよいのでしょう?
生きがいに気付けるようになるためには、日々の暮らしにアンテナを張ることが重要です。日々の暮らしに慣れてしまうと、新しい情報や小さな感動を見逃しがちになるので、常に“気付く姿勢”を持つことが“生きがいスルー”を防ぐカギとなります。
他者との対話は生きがいの発見において重要です。家族や親しい友人に限らず、SNSや職場での何げない会話からも、意外な刺激や発想の転換を得ることができます。
また、頑張り過ぎて余裕がない人は、あれもこれもと全部をこなすのではなく、できたことに目を向けてみましょう。ゆとりが生まれ、小さな幸せに気付けるようになれるかもしれません。
そのほかにも、「布団にくるまれて安心した」などといった日常の実感を、毎日の中で確認するだけでも“今ある幸せ”に気付くきっかけになります。日々の暮らしの中で生まれる気持ちを書き出してみることもいいですね。
大事なことは、「ない」ことに意識を向けるのではなく、「ある」ものに気付くこと。ネガティブな言葉(「どうせ」など)を使ったり他者と比べたりすると、生きがいを見いだしにくいので、ポジティブな言葉に言い換えて、ささやかな幸せを探してみるのもいいですね。
また、通勤ルートを変えてみたり、部屋の模様替えをしてみたりするなど、何げない日常の中にいつもと違う行動を取り入れてみてもいいですね。新たな生きがいに気付くかもしれません。
世代で異なる生きがい
大美賀さん:10代ではゲームや SNS、音楽など 自己完結型 の楽しみが中心で、部屋の中で一人で楽しめる生きがいを持つ傾向がみられます。
20代になると、パートナーや友人など 他者との関わりが生きがいに影響するようになり、外向きの価値観が広がっていきます。30 〜 40代にかけては 、仕事や家庭などにおける責任が増し、他者のために生きがいを見いだす時期となる一方で 、自分の感情と向き合う時間は減少しがちです 。
とくに40 代は「ハピネスカーブの底」とも言われ、幸福感が一時的に低下しやすい時期であり、生きがいを実感しにくくなる傾向がありそうですね。
しかしその後、50代以降になると時間的・心理的な余裕が生まれ、今あるものへの感謝の気持ちが育まれることで、生きがいを再び感じられるようになることがわかりました。
シニア世代に学ぶささやかな喜びの尊さ
大美賀さん:シニア世代が持つ「日常のささやかな幸せを大切にする姿勢」はすべての世代にとって学ぶべき示唆を与えてくれます 。
たとえば家族との何げない会話や、季節の移ろいを感じる瞬間、美味しい食事を味わうひととき。こうした当たり前に見える日常にこそ 、生きがいが宿るという考え方は、人生経験を重ねたからこそ得られる成熟した視点です。
忙しさの中で見逃しがちな「今ある幸せ」に目を向けること。シニア世代の生き方は現代を生きる全ての世代に生きがいのヒントを届けてくれています。
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<Edit:編集部>