インタビュー
2021年12月18日

クライミング銀メダリスト・野中生萌「パリでは金を獲りたい」|映画『THE WALL - CLIMB FOR GOLD』とメダリストたちのトークショー

 東京オリンピックで初めて正式採用された「スポーツクライミング」。その大きな舞台に立つ出場権をかけた4人の女性トップクライマーたちの葛藤や素顔を描き出した映画『THE WALL - CLIMB FOR GOLD』が、2022年初頭に動画配信サービスで公開されます。

 公開に先駆けて、先行プレミア試写会とスペシャルトークショー「『THE WALL – CLIMB FOR GOLD』プレミア試写会 supported by adidas」が都内で開催。映画に出演する4人のトップクライマーのひとりである野中生萌選手をはじめ、柔道の阿部一二三選手・詩選手、先日引退した体操競技の村上茉愛さんが登壇され、映画の感想や今年の振り返り、次の目標を語りました。

『THE WALL - CLIMB FOR GOLD』は、どんな映画?

 この映画は、アディダスがサポートする4人の女性トップクライマーである野中生萌選手(日本)、ヤンヤ・ガンブレット選手(スロベニア)、ショウナ・コクシー選手(イギリス)、ブルック・ラブトゥ選手(アメリカ)を2年にわたり密着取材をしたドキュメンタリー映画です。2021年夏の国際大会で新競技となるスポーツクライミングの出場権をかけた予選の模様や、新型コロナウイルスの感染拡大による大会延期の影響で、当初の予定に狂いが生じた過酷なシーズンのなかで、4選手が競技やトレーニングに励む様子も描かれています。

 また、各選手たちの素顔にも迫っており、自国開催の競技に日本代表として出場する野中選手が大きなプレッシャーを克服する様子が描かれています。

東京大会前のつらい時期のことを語る野中選手

 舞台挨拶では出演している野中生萌選手と映画をサポートしているアディダス ジャパン株式会社 トーマス・サイラー副社長が登壇し、質問が飛び交いました。

— (司会者から野中選手に対して) 映画をご覧になっていかがですか?

野中:この映画はオリンピックの舞台にいくまでの裏側そのもの。メダルにいきつくまでには楽しいとか嬉しいことばかりではなくて。やっぱりつらいこともたくさんあったなぁと、映画を観て改めて思い出しました。

— (トーマス副社長から野中選手に対して) 東京大会で日本代表に選ばれるまでに大変な時間がかかったが、その時期どのような気持ちで過ごしていたか教えていただけますか?

野中:あの期間はほんとうに精神的につらい時期でした。世界選手権でオリンピックに選ばれるために必要な最低条件の結果は残してはいたんですけど、なかなかそこから公式にオリンピック選手に決まるまでがとても長くて。もちろんオリンピックに向けてその間も練習はするんですけど、確実なものなのかどうかわからないものに対して、ずっとがんばり続けるというのは大変でした。

— 東京大会の前に大きな怪我をされていた時期の気持ちを教えてください。

野中:コロナの影響でオリンピックが1年延期ということで、トレーニングがたくさんできました。なので私は今までで1番強いと思える自分であったのですが、オリンピック1ヶ月前のワールドカップでの競技中にアクシデントで怪我をしてしまって......正直絶望的でした。頭が真っ白になりましたね。病院に行って「1ヶ月後にオリンピックがあるんですが怪我の状況はどうですか?」と訊いたら、「治るのに3ヶ月かかります」と言われました。最初は歩けもしなかったので、正直メダルは無理かもしれないと思った瞬間はあったんですけど、これまでたくさんの方々が応援してくださって、私がそこであきらめてしまったらみなさんの努力も無駄になってしまうと思ったので、あきらめずにがんばり続けられました。

4人のメダリストによる豪華トークセッション

 スペシャルトークセッションでは阿部一二三・詩選手と村上茉愛選手も登壇し、映画の感想や今年の自身を表す漢字、次なる目標について語りました。

映画『THE WALL - CLIMB FOR GOLD』を観ての感想

村上:オリンピックの時はすごく緊張していて、メダルを獲っている選手を見ると焦りを感じるので他の競技は見れなかった。この映画をとおして『クライミング』を知ることができたし、自分が東京五輪に出た時のことが甦った。涙もろいので、最後に金メダリストが決まったシーンでウルウルした。

一二三:アスリートとして共感できることがたくさんあり、観ていて自分のためになった。

— 野中選手、このお話を聞いて嬉しいですよね?

野中:クライミングをここまでしっかり観ることがなかなかないと思うので、そう言っていただけて嬉しいです。

クライミングの経験は?

詩:クライミングをする合宿があり怪我で参加できませんでしたが、ナショナルトレーニングセンターの壁は何度か登ったことがあります。

一二三:小学生ぐらいのときに1回だけしたことがあります。次は野中選手に教えてもらいたいです。

— 野中選手、アディダスアスリートでどなたが一番クライミングのポテンシャルが高いですか?

野中:やっぱり詩ちゃんじゃないですか? ”持つ力”がありますし、最強ですから!

今年を振り返る漢字を発表

阿部一二三 選手 「輝」

今年は絶対に輝いてやると思って2021年をがんばってきたので、オリンピックという舞台で今までの人生で一番輝けたかなと思う。

阿部詩 選手 「笑」

オリンピックまではつらい期間が続いて少し涙を流すこともあったんですが、いま一年を振り返ってみると、笑顔で一年を終えられそうだと思ったので「笑」の漢字にしました。

村上茉愛 さん 「次」

競技のことを振り返る漢字にしたいと思ったんですけど、引退をして次の生活がまったく想像できないなかで、毎日が楽しく0からスタートしているので吸収することしかないという状態。次に向けて考える一年になったのかなと思います。

野中生萌 選手 「信」

今年はオリンピックを控えるなかで困難やたくさんの壁を乗り越えてきたんですけど、何が自分を前進させてきたかというと「信じる気持ち」。何があってもやってきたことを信じていたから得られた結果だと思う。

次なる目標を語る

最後に4名のメダリストたちの「次なる目標」を語ってくれました。

村上:東京オリンピックでの体操個人種目のメダル獲得は私しかいなかったので、指導者として次のオリンピック選手やメダリストを育て上げたいと思っている。選手に信頼される指導者になるためにたくさん学びたい。

一二三:パリオリンピックで二連覇することはもちろんですが、まずは2022年を負けなしでいきたいと思っています。

詩:パリオリンピックの代表権を勝ち取って二連覇すること、そして兄弟でも二連覇することを目標に、さらに強くなれるように努力していこうと思います。

野中:今回東京オリンピックに出て「パリも行きたい」と思ったし、次こそは金メダルを獲りたいと強く思ったので、そこに向けてコツコツとがんばりたい。