インタビュー
2019年9月11日

寺田明日香「10年ぶりの世界陸上は図太く行きます」。日本新記録樹立の要因は“3つの改善”[特別インタビュー] (3/3)

「そんなにひとりで悩まなくてもいいんじゃない? と伝えたいですね。悩んで苦しんでいるのはひとりだけじゃなくて、周りも私のことを考えて一緒に支えてくれているからねってアドバイスしたいです。あのとき、いろんなアドバイスを聞いて、自分から行動を起こしていれば、もっと早く苦しみから抜け出せたかもしれません」

 第一次陸上選手時代は伸び悩む自分と期待してくれる周りとのコミュニケーションが取れなくなってしまい、ひとりで悩みを抱えてしまったといいます。だからこそ現在は、さまざまな人の意見を聞いて、もらったアドバイスは一度試してみる精神を大切にしているとのこと。自分に合わなかったらやめればいいだけという寺田選手。彼女の“自然体”がここでも活かされているようです。

 支えてくれる人たちとの関係を大切に、前を向いている寺田選手。最後に2009年以来10年ぶりとなる世界陸上選手権への想いとは。

10年ぶりの世界陸上は「図太く行きたい!」

「2009年に出場したときは、世界陸上に出ることがゴールだと思っていました。当時は、世界陸上に行って勝負したいとはいいつつも、出場がゴールでその先のビジョンが見えていなかった気がします。惨敗だったのも、目指すものが明確ではなかったからなのかもしれません」

「今回の世界陸上は、日本代表になれてうれしいと思っただけの感情とは違います。世界陸上に焦点をあてるのではなく、今の最終目標である東京オリンピックでどう勝負できるかだと思って戦ってきます!」

 今は、2020出場へという明確な目標があるからこそ、世界レベルを肌で感じ勝負していきたいという寺田選手。約1ヶ月後に迫った世界陸上までに強化したいこととは。

「走るスピードを上げるために低酸素のなかで行なうトレーニングや筋力を上げるウエイトトレーニングを再開して身体をつくっています。現時点の“寺田明日香”の力がどれだけなのかを試すこと、世界トップレベルの選手たちがどんな走りをしているのかも高野コーチと確認したいですね。トップレベルの選手を肌で感じることができる世界陸上が楽しみです。結婚や出産も経験して、人生経験が豊富になったぶん図太く行きたいと思います!」

 世界のトップレベルの選手が集まるレースを走ることで、12秒97を出した今の自分の置かれている現状や足りないものがわかるという寺田選手。彼女が今、一番注目している海外選手は、寺田選手と身長がほぼ同じで小柄にもかかわらず2016年に世界新記録となる12秒20を出したアメリカのケンドラ・ハリソン選手とのこと。

 
 
 
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 今回のインタビュー中、寺田選手はずっと目を輝かせ、純粋に世界トップレベルの選手と走ることをワクワクしているように感じました。10年ぶりの世界陸上出場を決め、今日も止まることなく2020へと走り続けています。

[プロフィール]
寺田明日香(てらだ・あすか)
1990年1月14日生まれ。北海道札幌市出身。血液型はO型。ディズニーとカリカリ梅が好き。会いたい人は、大谷翔平と星野源。小学校4年生から陸上競技を始め、小学校5・6年時ともに全国小学生陸上100mで2位。高校1年から本格的にハードルを始め、2005~2007年にはインターハイ女子100mハードルで史上初の3連覇。3年時には100m、4×100mリレーと合わせて同じく史上初となる3冠を達成。2008年、社会人1年目で初出場の日本選手権女子100mハードルで優勝。以降3連覇を果たす。2009年世界陸上ベルリン大会出場、アジア選手権では銀メダルを獲得。同年記録した13秒05は同年の世界ジュニアランク1位だった。2010年にはアジア大会で5位に入賞するが、相次ぐケガ・病気で2013年に現役を引退。翌年から早稲田大学人間科学部に入学。その後、結婚・出産を経て女性アスリートの先駆者となるべく、「ママアスリート」として、2016年夏に「7人制ラグビー」に競技転向する形で現役復帰した。同年12月の日本ラグビー協会によるトライアウトに合格。2017年1月からは日本代表練習生として活動した。2018年12月にラグビー選手としての引退と陸上競技への復帰を表明。2019年シーズンから競技会に出場し、6月に日本選手権女子100mハードルで9年ぶりの表彰台となる3位に入り、7月には100mでも自己記録を更新。8月には19年前に金沢イボンヌ氏が記録していた日本記録13秒00に並ぶと、9月1日に「富士北麓ワールドトライアル2019」で史上初めて13秒の壁を突破し、12秒97の日本新記録を樹立。カタール・ドーハで開催される「世界陸上」に出場する。再び陸上競技選手として、2020年東京オリンピックを目指す。

◎所属企業:株式会社パソナグループ
◎主な記録:100mハードル日本記録保持者(12秒97)/100mハードルU20日本記録保持者(13秒05=2009年世界ジュニアランキング1位)/100mハードル日本高校歴代2位(13秒39)/100m:11秒63

【今後のスケジュール】
・9月27日(金)~10月6日(日):世界陸上競技選手権@カタール・ドーハ ▶詳細はこちら
・10月20日(日):田島直人記念陸上競技大会@山口 ▶詳細はこちら

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<Text & Photo:山本 有怜子(アート・サプライ)>

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