インタビュー
2022年7月8日

ビーチフラッグスってどんな競技?世界ランキング1位・堀江星冴選手に聞いた競技の魅力と、ライフセーバーとしての想い(前編) (2/2)

ライフセービングで初めての夏、初めての救助活動

――ライフセーバーをしていて記憶に残っているエピソードを教えてください。

大学1年生で、初めてパトロールを行ったときのことです。パトロールには2種類あり、ひとつが「サーフパトロール」といって、海に入って行うパトロール。もうひとつが「ビーチパトロール」といって、ビーチを歩いて熱中症の人がいないか、波打ち際で溺れているお子さんがいないかなど見て回るものです。

そのとき僕はビーチパトロールをしていました。あまり人が多くないタイミングで、歩いていたら何となく海から視線を感じたんです。海を見ても誰もいない。人はいないと思ってまた歩き始めようとしましたが、ちょっと気になって、波打ち際に近づいてみたんです。そうしたら、水中に男の子が沈んでいました。呼吸もなく目を見開いた状態で、こっちを見ながら海中にいたのです。

すぐ上級生にレシーバーで報告して、僕は救出に向かいました。救い出したとき、目は開いていたのですが意識がない状態で、もうこれはAED、電気ショックが必要だなと思いました。ビーチに運んでいると、本当に奇跡的に僕の胸の中で大量に水を噴き出してくれて、そこで戻ってきてくれたんです。

その後、浜に上がり処置をしてからレスキュー隊へ引き継ぎ、男の子は救急搬送されていきました。結果、その子は命が助かったのです。

初めてのことだったので年齢とか名前とか今でも覚えていますね。本当にあるんだなと思いました。ライフセービングをスタートして初めての夏、初めての事故でした。その出来事から、僕のライフセービングスピリッツに火がついたかなと思います。

――それはすごい体験ですね。海辺では、波打ち際での注意がもっとも重要なのでしょうか。

波打ち際は危ないことが多いですね。あと、いわゆるドン深というのですが、通常の海って、浅いところから徐々に深くなるじゃないですか。それが、海に入ってから一気にドンっと深くなる穴みたいな場所があるんですね。そういうところに、ちっちゃい子とかはまってしまうことが結構あります。なので、ライフセーバーは配属された海岸の危ないところを把握して、さらに全体を見てパトロールをしています。

――ライフセーバーとして、読者のみなさんに伝えたいことはありますか?

まず、飲酒して泳いでしまって事故に遭われる方が多いので、飲酒をしたら泳がないということ。そして、お子さんから「目を離さない」じゃなくて、「身を離さない」こと。それは、ライフセービング協会のJLAからもお願いをしていることです。

また、ライフセーバーの話に少しでも耳を傾けていただきたいです。僕らは定期的に海のコンディションをチェックしています。たとえば先ほど話に出たドン深の有無や、強い水の流れが起きていないか。離岸流(浜から海に流れる強い流れ)という、水泳選手が立ち向かって泳いでも流されちゃうぐらい強い流れなのですが、そういうのが起きていないか。

あとは危険生物で毒性が強いクラゲがいないか、エイがきていないか、水温が冷たくないか。そういうのを朝一でチェックしていますが、本当にいろいろなものを見ています。その日の遊泳エリア、赤旗、青旗、ここいいですよ、だめですよとか、全体を見て出しているので、僕らを頼って欲しいなというのはあります。

――ライフセーバーはみなさん、そういうことはチェックされているのでしょうか。

例えば、勝浦には大小4つの海水浴場があって各々もち場の浜に向かい、その上で始業時に管轄エリアを決めた上で、タワーが4塔ある浜ならそれぞれメンバーを適正配置し、そこを全体的にチェックする人間がいて、全員に情報共有されます。

――海に行ったときは、ライフセーバーさんにあらかじめ注意点を聞いたほうがいいですか? それとも何か言われたら話を聞くほうがいいですか?

たとえば勝浦だと、朝や昼の放送で海のコンディションをお伝えしますが、疑問に思ったことはライフセーバーに全部聞いてもらって大丈夫です。

――海の知識はもちろん、人名救助を目的としたトレーニングをしているライフセーバーさんがパトロールされていることで、安全で楽しい海水浴が楽しめるわけですね。ありがとうございます。

後編の記事では、アスリートとしてのトレーニングや食事内容、現在取り組んでいるパーソナルトレーニングジムなどについて伺います。

[プロフィール]
堀江星冴(ほりえ・しょうご)
1994年9月14日生まれ埼玉県秩父市出身。身長170cm 体重72kg。埼玉県立浦和東高等学校卒業。在学中はサッカー部に所属。国際武道大学への入学を機にライフセーバー競技に出会い、日本ライフセービング界の パイオニアである山本利春教授に師事、ライフセービング競技に目覚める。毎日ひたむきに練習し、白い砂浜 が黒くえぐれて”堀江道”と周辺住民に呼ばれるほどの猛特訓を重ね、翌年からはビーチ・フラッグスのインターカレッジで卒業まで3連覇を重ねる。日本代表入りしてからも、国際大会でメキメキと頭角を現し、ライフセービングの花形競技ビーチ・フラッグスで、現世界ランキング1位をキープしている。

【公式Instagramアカウント】
https://www.instagram.com/shohgo_horie/

【パーソナルジム「THE REAL」公式Instagramアカウント】
https://www.instagram.com/thereal_futakotamagawa/

<Text & Edit:MELOS編集部/Photo:MELOS編集部、株式会社TANK>

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