インタビュー
2018年8月2日

視覚障がい者マラソンの女王と元実業団ランナーの邂逅。思い出は、“山登り”。マラソン道下美里×ガイドランナー河口恵(前編)│わたしと相棒~パラアスリートのTOKYO2020~ (3/3)

思い出は「目隠しをしての山登り」

――河口さんとしては、最初に伴走をやってみた時、どんな感触でしたか。初めて伴走したランナーが道下さんということですよね?

河口:そうですね。でも、道下さんは明るくて、すごく話しやすいんです。何の先入観もなく、自然に打ち解けていきましたね。

道下:それまでもサポートしてくれていた、私の仲間もまた素晴らしくて。『チーム道下』にメグちゃんという新しいメンバーが入ってきて、皆、伴走の楽しさをいろいろと教えちゃうんです(笑)。

河口:いろいろな経験をさせてもらいましたね。『チーム道下』の仲間が、伴走のコツや、人としての振る舞いについても丁寧に教えてくれる。このチームって素敵だな、と思いましたね。

――思い出深い出来事はありますか。

道下:私はメグちゃんから山を登りに行ったという話を聞いた時に、ちょっと涙が出そうになりました。目隠しをして山登りをしたっていうんですよ。

河口:はい。目が見えない人がどういう状態で歩いたり、走ったりしているのかを、まず自分で実際に感じ取ることで、伴走時の声掛けも変わってくるんじゃないか、という目的があるとのことで。

道下:(アイマスクを着けて)走るのは、皆体験するんですけど、山まで登ったって(笑)。とても怖いらしいです。

河口:脚をどれくらい上げれば良いのかも分からない(笑)。「脚を上げて」と言われても、「どれぐらい?」みたいな。一気に冷や汗が出てきましたね。

道下:疲れて、次の日すごく筋肉痛になってたよね。私も、見えなくなった当初はそうでした。恐怖心で上半身の筋肉がガチガチになるんですよ。体中がこわばってしまうんです。「もうちょっと上半身をリラックスして」と言われても、なかなかできないんですよね。

――それにしても、そんな経験(山登り)があったんですね。

河口:そうなんです。本当に良い経験でしたね。

⇒後編に続く!

[プロフィール]
道下美里(みちした・みさと)
1977年生まれ。山口県出身。視覚障がいマラソンT12クラス。中2の時に角膜の病気で右目を失明。のちに左目も発症して視力は0.01以下に。26歳で陸上を始め、31歳でマラソンに転向。2016年三井住友海上に入社、同年のリオパラリンピックでは銀メダルを獲得する。2017年の防府読売マラソンで2時間56分14秒の世界新記録を樹立。2018年『World Para Athletics Marathon World Cup』では大会2連覇を果たす。

[プロフィール]
河口恵(かわぐち・めぐみ)
1995年生まれ。福岡県出身。陸上長距離の強豪校である北九州市立高で活躍した後、2014年三井住友海上に入社。女子陸上競技部に所属する。2016年3月現役を引退。翌4月より道下選手の練習パートナーを務める。

<Text:吉田直人/Edit:丸山美紀(アート・サプライ)/Photo:玉井幹郎>

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