インタビュー
2020年10月22日

女性アスリートの選択肢の幅を広げるために。マラソン・岩出玲亜が語るリスタートの決意 (1/2)

 実業団に所属して活動するのが一般的な女子長距離界において、プロランナーとして活躍する岩出玲亜選手。今年8月31日、株式会社ドームとの契約が満了となり、当面はフリーとして活動していくことを発表しました。2019年3月の名古屋ウィメンズマラソンでは2時間23分52秒という好記録をマーク。東京五輪日本代表選考会のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)にも出場した実力者が、これからどのような競技生活を送ろうとしているのかを聞きました。

東京五輪への挑戦。やれるだけやって負けた

 アテネ五輪の女子マラソン金メダリスト、野口みずきさんに憧れて、マラソンランナーになりたいという思いで競技を始めたという岩出選手。実業団を離れ、プロランナーとなったのも、マラソンへの思いがあったから。

「東京五輪という目標に向かっていくときに、マラソン一本に絞ってトレーニングをしないと後悔するなと思ったんです。実業団に所属しているとそれが難しい状況だったこともあって、プロの道を選択しました。ドームとの契約も最初から東京五輪までというものでした。私自身、東京五輪でマラソンを走って競技生活を終えようと思っていたぐらいなので」

 東京五輪を目指し、2017年にプロランナーに転向。2019年3月の名古屋ウィメンズマラソンで、2時間23分52秒で日本人1位になり、MGCへの出場権を獲得。MGCのスタート地点に立ったときは、五輪出場が決まらなかったとしても、自分の力を出し切れたら、競技人生を終えても良いかなと思っていたそうです。

「MGCのときは調子が上がりきってなかったこともあったのですが、想定していたレース展開とも全然違って、簡単に振り落とされてしまいました。ハーフを過ぎたときには、このレースで五輪を決めることは120%できないと思っていましたし、頭の中では残り1枠を決めるファイナルチャレンジに気持ちが切り替わっていました」

 それでもダメージを考慮してリタイアすることはせず、岩出選手はフィニッシュラインまで走ります。沿道の観客とハイタッチをしながら走るシーンを、覚えている方もいるのではないでしょうか。

「正直、体はキツかったですし、やめたい気持ちもあったんですけど(笑)。最後尾を走っていた私への沿道からの声援に応えたいという気持ちと、最後までMGCの景色を楽しみたいという思いがあって、最後まで走ったんです」

 東京五輪、最後の1枠をかけた2020年の名古屋ウィメンズマラソン。代表の座は得られなかったものの、気持ちは晴れ晴れとしていたそうです。

「名古屋の前はちゃんと練習が積めて、ベストな状態を作ってレースに挑めたので、終わったあとはすっきりしていました。やれるだけやって負けたので、相手が強かったなと」

次ページ:市民ランナーの方たちと一緒に強くなる、楽しく走りたい

1 2