インタビュー
2018年8月9日

立場は違えど目標は一つ。たくさんの人に祝福されてスタートラインに立ちたい。マラソン道下美里×ガイドランナー河口恵(後編)│わたしと相棒〜パラアスリートのTOKYO2020〜 (3/3)

“笑顔”のランナーと、“穏やか”なガイド

――河口さんも、今後はガイドランナーとして、シビアなレースにも帯同していく機会が出てくると思います。今後チャレンジしてみたいことは?

河口:伴走を通して本当にさまざまなことを経験したり、学ばせてもらっています。そういった経験で自分自身も成長できるし、2020年というまず大きな目標があるのですが、道下さんが目指している「東京での金メダル」に向けて一緒に走っていきたいし、東京の舞台へ挑戦したいという気持ちはありますね。

道下:一緒に走り始めて2年ちょっとだっけ?

河口:そうですね。ちょうど2年ぐらい。

道下:本当に、出会った頃と比べて伴走の指示出しも変わってきているんです。若さの吸収力ってすごいなと。正直、最終的に誰と東京パラリンピックを走るかは、本当に直前にならないと分からないんですよね。人間なので故障することもあるわけです。実際、東京パラリンピックに向けて、いろいろな方から支援をいただいて走っているので、結果を出したいと思っています。そうなるとガイドランナーも選ばれる立場だと思いますし、私自身もまだ選考に引っかかっていないわけです。お互いに頑張って、東京の舞台で一緒に走れれば……超幸せだよね?

河口:笑

道下:今、一番練習でも一緒に走ってくれていて、会社も同じ。たぶんメグちゃんと走れたら、皆が喜んでくれる。それに向けて頑張りたいですけれど、ガイドランナーの方もたくさんいて「皆同じ舞台に立ちたい!」と、切磋琢磨しているので、最終的には、皆が決めるという形になると思います。

――でも、ガイドランナーの方同士も切磋琢磨しているというのは、とても良い雰囲気ですよね。

道下:皆すごいですから。本当に人間力溢れる人ばかりだもんね。

河口:そうですね。

――道下さんに魅力があるからでは?

河口:本当にそうですね。

道下:私も学びながら、一緒に成長していけたらな、と思います。

――改めてなんですが、東京パラリンピックの開催される2020年が一つの区切りになると思います。それ以降も、もちろん走り続けられると思うんですが、2020年に向けての目標を伺えますか。

道下:金メダルを獲りに行きます。プラス、本当にたくさんの人に祝福されてスタートラインに立ちたい。皆に応援してもらって、喜んでもらえるような走りができたら最高ですね。

河口:2020年に向けて、練習や仕事で道下さんと一緒にいる時間が長いので、お互いを信頼しながら、絆をより深めながら、金メダルに向けて一緒に走り続けていきたいと思います。

道下:もっと穴を埋めていかないといけないね。

道下&河口:笑

――お互いにとって、相手をひと言で表すとすれば? 河口さんにとっての道下さん、道下さんにとっての河口さん。

道下:私は、“穏やか”ですかね。伴走をする上ですごく重要な、大事なことなんです。どんなにキツい時でも、苦しい時でも、平常心。その意味でも伴走者に向いていると思います。

河口:私は……、“笑顔”かな。

道下:確かによく笑ってるかも。走ってる時も。でも、笑顔じゃない所もいっぱい見てるでしょ(笑)。

河口:いやいや、ホントにずっと笑顔なんですよ!

[プロフィール]
道下美里(みちした・みさと)
1977年生まれ。山口県出身。視覚障がいマラソンT12クラス。中2の時に角膜の病気で右目を失明。のちに左目も発症して視力は0.01以下に。26歳で陸上を始め、31歳でマラソンに転向。2016年三井住友海上に入社、同年のリオパラリンピックでは銀メダルを獲得する。2017年の防府読売マラソンで2時間56分14秒の世界新記録を樹立。2018年『World Para Athletics Marathon World Cup』では大会2連覇を果たす。

[プロフィール]
河口恵(かわぐち・めぐみ)
1995年生まれ。福岡県出身。陸上長距離の強豪校である北九州市立高で活躍した後、2014年三井住友海上に入社。女子陸上競技部に所属する。2016年3月現役を引退。翌4月より道下選手の練習パートナーを務める。

<Text:吉田直人/Edit:丸山美紀(アート・サプライ)/Photo:玉井幹郎>

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