細野史晃が提唱する『楽ラン』とは。ラクに、楽しく、速くなる! (2/2)
ランニングというのは、常に片足が地面に対して反発しつつ、前へ重心を移動させる運動です。これは私が取り組んでいた三段跳びでも同じこと。軸を立てた状態で、いかに前へ平行移動させるかが大切になります。しかし、よく「日本人は骨盤が後傾している」と言われますよね。だから、骨盤の前傾した外国人選手のようには走れないのだ……と。まず『楽ラン』では、この点を疑ったんです。つまり、本当に日本人は、骨盤を前傾させられないのかという疑問です。
『楽ラン』では、ちょうどミゾオチからヘソの間あたりを起点にして身体を動かします。この部分を、斜め上前方へ引き上げて走るイメージです。大切なのは、重心を正しく支える姿勢や、着地時におけるバネの反射など。1つ1つ矯正していくと、日本人だって骨盤を前傾して走ることができるようになります。実際、これまで多くの方々に教えてきましたが、誰もが記録を更新させています。
例えば多くのランナーは、走りについて「力を込めて手足を動かすもの」だと思っています。でも本当は、身体のバランスを崩して重心を前に移動させ、着地反発によって跳ねながら進むことなんです。身体を倒すと重心が前に移動しますが、同時に重力によって落下もします。つまり斜め下に進みます。結果ブレーキ動作も出るような動きになります。それを斜め上に引っ張る感覚で重心を移動させると、スムーズに前へと進みます。つまり重力に逆らわず、上手く利用する走りに変えるんです。そのためには上半身を高い位置に引き上げてその重りの持つ力(物理で言うと位置エネルギー)を高くする。体重・筋力の6割は上半身にありますから、物理的に見ても、上半身にフォーカスした方が速く楽に走れるということなんです。
よく話題にもなるフォアフット、ミドルフット、ヒールストライクと言った接地の話ですが、楽ランでは基本的にはフォアフットになります。しかし走りの中での接地イメージは、フォアフットを着くイメージではありません。体重を上にあげて前に進むとき、つまり身体を上半身で支えれば、自然とフォアフットになってくるんです。結果、ふくらはぎに余計な負担はかからず、楽に走れます。もちろん、ある程度体幹などの強さは必要ですけどね。楽ランはこういったマジックワードのような理論を整理しつつ、トップアスリートの感覚をわかりやすく伝えているものと考えてもらえるとうれしいなと思っていますし、僕はそこを目指していきながら走る楽しさを伝えたいなと思っています。
―― 上半身を使うことで下半身へ負担を掛けずに走る。その理論がイメージできました。今回は、ありがとうございました!
細野史晃さんが指導をするランニングスクールも
「楽RUNメソッド」を開発した細野史晃が指導をするランニングスクールで、「楽RUNメソッド」を学ぶこともできます。
よりラクに楽しく、効率的でムダのないランニングフォームを習得したい人におすすめ。初心者からトップアスリートまで、個々にあわせたパーソナルトレーニングを実施してくれます。
筆者プロフィール
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表
【HP】http://www.run-writer.com
<Text & Photo:三河賢文>