不整地を走るマラソントレーニング「ファルトレク」とは。効果とやり方、練習場所
ランナーの聖地・皇居を代表として、多くのランナーは練習の際にアスファルトの上を走っています。整備された道は確かに走りやすく、スピードも出しやすいでしょう。また、転倒リスクが少なく、走ることだけに集中できるのも大きなメリットです。実際、ほとんどのマラソン大会でも道路を走ることになります。
しかし走力アップを目指すのであれば、ぜひアスファルト以外の場所を走ってみてください。ここでは起伏のある不整地を走る「ファルトレク(野外走)」トレーニングについて、期待できる効果のほか、ペース、練習にオススメの場所、具体的なトレーニング方法をご紹介します。実際に私も積極的に取り入れている方法ですので、ぜひ参考にしてください。
ファルトレクとは
森や丘、草原など、起伏に富んだ自然の中で走るのが「ファルトレク」トレーニング。私は近所の森のほか、よく公園の中にある不整地を利用しています。ランナーとして総合的な走力アップが期待できるため、国内外を問わず多くのトップアスリートも取り組んでいる練習方法です。実際、私がコーチを務めるランニングチームでは、小学生から定期的に行っており、子どもから大人まで、走力を問わずメリットのあるトレーニングです。
ファルトレクで期待できる効果
ファルトレクによってどのような効果が期待できるのか。具体的には、以下のようなメリットが挙げられます。
1)心肺機能の強化
不整地や起伏のある場所を走ると、いつもと同じペースでも息が上がりやすくなります。これは、心肺への負担がアスファルトでのトレーニングより高いため。そのため、ファルトレクは心肺機能の強化に繋がります。
2)スピード・スピード持久力の強化
トレーニング方法は後ほど解説しますが、ファルトレクではある程度のスピードを出すシーンがあります。これを繰り返すことになるため、スピードあるいはスピード持久力の強化が目指せるでしょう。
3)身体バランスと脚力の強化
ファルトレクでは、足元が不安定な場所を走ります。アスファルトと違い、ゆっくり走るのでも“走りにくさ”を感じるでしょう。こうした場所でスムーズに走るには、安定した着地と左右前後の動きに対応する上体を含めた身体バランス、そして下肢の強さが欠かせません。ファルトレクを定期的に取り入れると、高い身体バランスと力強い脚力が磨かれていきます。
ちなみに私はこのメリットを最大限に享受するため、できるだけ裸足やそれに近い状態で走るようにしています。裸足ランニングのメリットについては、以下の記事を参考にご覧ください。
4)アップダウンの走り方とペース変化への対応がうまくなる
起伏のある場所を走るため、アップダウンの効率的な走り方が身に付いていきます。おもに使う筋肉の切り替え、上半身の使い方、そしてフォームの維持など。アップダウンには、平地とは異なる技術が求められます。
また、上り→下り→平地という変化の中では、自然とペースが変わってくるでしょう。その際、ペース変化へ身体がスムーズに切り替えて対応できるかは、競り合う場面はもちろん、最後まで無駄のない走りを継続するうえで非常に大切です。
ファルトレクのトレーニング方法
それではファルトレクについて、具体的なトレーニング方法をご紹介します。基本的には、ペースを変化させながら走るトレーニングです。なお、慣れないうちは転倒したり、筋肉がいつも以上に疲労したりするかもしれません。不安のある方は、まずは歩いたりジョギングしたり、不整地に慣れるところから始めてください。
・1分間ごとにペースを変化させる
1分ごとに「速いペース(ハイペース)」「ゆっくりしたペース(ローペース)」とペースを変えて走ります。時間は30分前後を目安として、この中でしっかり走り込めるペースを設定してください。なお、「1分“かなりの”ハイペース→2分ローペース」などバリエーションを持たせても構いません。ローペースでは、しっかり呼吸を落ち着けるようにしましょう。
・目印を決めてペースを変化させる
「木を1本超えるごとにペースを変える」など、時間ではなく目印ごとにハイペースとローペースを繰り返します。目印の区間は、同一である必要はありません。木が密集していて目印にしにくい際は、カラーコーンなど目立つものを用意し、適当にポンポン置いて目印にするのもよいでしょう。
・距離ごとにペースを変化させる
インターバル走のように決まった距離をハイペース、また決まった距離をローペースで走ります。500mごとにハイペースとローペースを繰り返したり、1kmから始めて100mまで段階的に距離を短くするなど、距離の設定は自由です。
気持ちのリフレッシュにも有効なトレーニング
自然の中で走るファルトレクは、いい気分転換にもなります。周囲から鳥や虫の声、あるいは風に揺れる枝葉の音が聞こえると、清々しい気分になれるでしょう。そのため、いつもと違う気分でリフレッシュする機会としても、ぜひ定期的に取り入れたいトレーニングです。なお、距離の短いコースを設定すれば、走力を問わず仲間とも行えます。そのため、チームでの練習にもオススメです。ただし追い抜く際は、必ず「右から抜きます」など一声掛けること。また、接触しないよう十分に注意しましょう。
[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。また、ランニングクラブ&レッスンサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室やランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】https://www.run-writer.com
<Text & Photo:三河賢文>