2020年12月17日

ゴルフはなぜ難しいのか

 “ゴルフはオジサンのスポーツ”であるとか“ゴルフに運動神経は要らない”と言われます。ゴルフをやったことがない人が、持つイメージでしょう。ゴルフをやってみると、その認識が間違っていたことに気が付き、なんてゴルフは難しいのだと後悔するはずです。

みなさんの中にあるゴルフのイメージは?

 確かに、ゴルフをしない人が持つゴルファーのイメージは、“オジサンが多い”であるとか“カッコよくボールを打っていない人が多い”と感じているかもしれません。確かにプレーする人の年齢層が高く、ゴルフコースにも練習場にも若い世代の人が少ないので、こんな印象を持たれるのではないでしょうか?

 他のスポーツのように、長身で身体を鍛えたマッチョなアスリートしか、プロになれないということもありません。プロゴルファーは長きに渡って活躍でき、他の競技と違って、歳を重ねても頂点に立てることも、そう感じる要素かもしれません。確かに、昔のプロゴルファーはオジサンっぽかったです。

ゴルフを簡単だと思わせてしまうこと

 簡単に感じるのは、球技の多くはボールが動いていますが、ゴルフは止まっているボールを打つことです。しかしプロ野球選手やプロテニスプレーヤーがゴルフを始めても、簡単には上手くなりません。確かにボールを遠くに飛ばすことに長けていますが、スコアメイクには皆さん苦労されています。

 ではゴルフはどうして難しいのでしょう。

 まず一つは、止まっているボールを打つからです。「止まっているから簡単」と思う人が多いのですが、残念ながら違います。止まっているからこそ難しいのです。「えっ?ボールが止まっているとどうして打ちにくいの!?」と思うでしょう。

 野球やテニス、卓球などは、動いているボールを打ちます。ボールが動いていると、ボールのタイミングに合わせて打つ事ができます。相手(ボール)に合わせて振ればいいわけです。相手に反応して打てるというのは、タイミングさえあわせれば、特に考える必要がないのです。

 柔道や剣道、相撲を経験したことがある人なら理解できると思いますが、自ら技を仕掛けることよりも、相手に反応する『カウンター』の方が、自然と動けるのです。反復練習を繰り返し自分の型をつくれば、相手の動きに反射的に身体が動きます。

 しかし、止まっているボールを打つと、自分がタイミングを作る必要あります。静止したところから、スイングしていくのですが、自分のタイミングで動き出し、自分のリズムでスイングする。自由にできるのでやさしいと感じるかもしれませんが、ここがゴルフの難しいポイントでもあります。

ゴルフが難しい2つの理由を知っておこう

 メンタル面の影響も見逃せません。プレッシャーが掛かる場面で、頭の中が真っ白になりながら、自分のタイミングでクラブを振るのはかなり難しいのです。ゴルフには手が動かなくなる。イップスという、病気のような症状が出ることがあるのですが、自分のタイミングで動き出すことが難しいからです。

 実は野球もイップスがあるそうです。飛んでくるボールを打つバッターは、イップスにほとんどならないそうですが、ピッチャーは意外と多くイップスの症状がでるそうです。野球もピッチャーは自分のタイミングで投球することができるので、この症状が出るそうです。

 もう一つゴルフが難しい理由は、クラブの構造です。

 テニスのラケット、野球のバット、道具を使う球技の道具のほとんどが、グリップした延長線上でボールを打つことができます。しかしゴルフはシャフトの延長線上から外れたところにヘッドがあります。ボールが止まっているとはいえ、打ちたいところでなかなか打てないのがゴルフクラブなのです。

 このイラストをみれば、理由は簡単です。

 テニスでこんなラケットだったら、難しそうですが、ゴルフクラブはこういう構造になっています。シャフトの軸線上に、芯がないからです。シャフトの軸線から芯までの距離を重心距離といいますが、この重心距離がゴルフを難しくしています。

 肉眼では、見えませんが、スイング中、ゴルフクラブのシャフトは、かなりしなっています。重心距離があることで、シャフトへの負荷がかかり、シャフトの動きが複雑になり、結果としてクラブヘッドの挙動を安定させることが難しいのです。しかし重心距離があるからボールを遠くに飛ばすことができます。

 僕が作ったドライバー、バンパードライバーは、重心距離がほとんどありません。クラブヘッドも安定していて、簡単に芯に当てることができます。飛距離的には少し落ちますが、初心者ゴルファーにドライバーを真っすぐ飛ばせる快感を味わってもらいたいのですが、簡単に芯に当てることができるので、ルールで規制されていて競技等では違反クラブとなります。

 ゴルフが難しい理由は、意外な理由に感じたと思います。でも難しい理由がわかれば、簡単にする答えが見えてくるもの、その答えはこの連載で徐々に紐解いていく予定です。

[著者プロフィール]
マーク金井(まーく・かない)
クラブアナリスト。ゴルフ誌だけでなく、TV、ラジオなどさまざまなメディアで活躍する、自称「ゴルフ芸人」。ハンデ3の腕前と豊富な知識を活かした、わかりやすい試打レポートには定評がある。最近はクラブ設計者としても活躍、メーカーが作れなかった、アマチュアを救うクラブを設計。悩めるゴルファーのために自らゴルフスタジオ・アナライズを主宰している。最近発売した電子書籍「一生役立つゴルフ」シリーズ3部作は、アマチュアゴルファーを救うコースマネジメントや考え方が話題となり、電子書籍としては、記録的な売上を記録して、書籍として発売される。
■ANALYZ
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<Edit:松田政紀(アート・サプライ)/Photo:Getty Images>