コロナ禍の“自宅筋トレ”、思うように進んでいない人が増加中。その理由とは? (2/2)
効果的な筋トレのために
では効果的な筋トレを行うために何が必要となるのでしょう? ひとつは「科学的な根拠に基づいた正しいトレーニングを行うこと」。その人に最適な、負荷重量、動作速度、反復回数、セット間の休息時間が考えられたトレーニングメニューが必要になります。そして、もうひとつは「運動後における適切な栄養摂取」でした。具体的には、炭水化物、タンパク質を「運動後に速やかに摂取すると良い」(後藤氏)としています。
▲効果的な筋トレを行うポイントは2つ
ここで後藤氏は、デンマークにて平均74歳の高齢者グループに12週間に渡って行われた研究を紹介。トレーニング直後に小さなエネルギー食品(タンパク質10g、炭水化物7g、脂質3g)を与え続けたグループの方が、トレーニングの2時間後に同じ食品を与えたグループよりも、足の最大筋力、筋肉の断面積の増量が大きかったということです。
▲栄養補助食品は、トレーニングの直後に摂取することが重要
ほかに摂取すべき栄養素はあるのでしょうか。そして、そのタイミングは? 後藤氏がキーワードとして挙げたのは「インスリン」でした。血液中のブドウ糖を細胞の中に取り込む作用を持つホルモンで、一般的には、糖尿病の治療に用いられていることで知られています。筋トレとは結びつかないような気もしますが、これはどういうことなのでしょう?
「インスリンはタンパク質の代謝に関しても、重要な役割を果たすんです。血液の中のアミノ酸を、筋肉の中に取り込む過程をサポートします。私たちが実証した研究では、筋トレ後に粉末のプロテイン(=タンパク質)に加えて、抗酸化物質(酵素処理ルチン)を同時に摂取することで、インスリンの分泌量が増加することが分かりました」(後藤氏)
▲抗酸化物質の積極的な摂取により、酸化ストレスを軽減させ、1~5の過程をさらに円滑に進めることができると後藤氏
まとめとして、後藤氏は「筋トレ後に速やかにタンパク質、炭水化物を摂取することは疲労の回復やトレーニング効果の増大に有効です。良いトレーニングを行った後に、栄養素をしっかり摂取することで、オーバーリーチング、ひいては筋トレロスの状態を回避できます。また抗酸化物質の摂取により、酸化ストレスを緩和し、筋肉痛の軽減、長期トレーニングによる筋肥大にも有効であると考えています」と話していました。
トレーニング後はできるだけ速やかに
セミナー後、記者団から質問が相次ぎました。
――トレーニング後、いつまでに栄養を摂取するのが理想ですか。
後藤氏:30分以内が理想で、遅くとも1時間以内の摂取が重要です。トレーニング後は(通常の空腹時と比較して)胃の消化機能が遅くなります。いつもより吸収に時間がかかってしまうんですね。それも見越して、トレーニング後はできるだけ速やかに栄養を補給して欲しい。食事となると難しいケースもあるので、栄養補助食品、パウダー状のプロテインなどが有効になります。まずは、そこで最低限のタンパク質を体内に取り込む、というわけです。
――トレーニング後の食事には、脂質も必要ですか。
後藤氏:通常のトレーニングでしたら、最優先はタンパク質と炭水化物になります。長時間の運動では、筋肉の中の脂肪もエネルギー源として使うので、脂肪の摂取も必要になりますね。
――トレーニング後のプロテインは、どのくらい摂取すれば良いのでしょうか。
後藤氏:体重あたり何gくらい、というおおよその目安はあります。分かりやすく話しますと、15~20g程度が現在、最も推奨されています。あまりに大量に、例えば40gくらい摂取しても、筋肉に取り込める量は決まっているので、あとは尿として出ていきます。市販のプロテイン製品も、それを見込んだ15~20g程度の含有量になっています。
――トレーニング前の食事に関しては、筋肉量に影響はありますか。
後藤氏:胃の中に食べ物が入りますので、消化不良を起こす懸念があります。また運動時、血液は筋肉に優先的に供給されますが、食事後は胃にも血液が供給され、筋肉に届ける血液量が減ってしまうことも考えられます。運動前は、できるだけ固形物は避け、スポーツドリンクのような形でエネルギーの入った水分を摂取することが望ましいです。
<Text:近藤謙太郎>