インタビュー
2020年10月22日

女性アスリートの選択肢の幅を広げるために。マラソン・岩出玲亜が語るリスタートの決意 (2/2)

市民ランナーの方たちと一緒に強くなる、楽しく走りたい

 まだまだトップ選手としてマラソンへの挑戦を続けたい。そんな思いから、フリーの身になり、9月から新しいチャレンジをスタートしました。

「女性の学生ランナーに、実業団以外にも選択肢があるんだよ、というのを見せたいなという気持ちがあります。実業団とプロの両方を経験して、私自身はプロの方が向いていると感じていますし、実業団以外の選択肢があることで、陸上界、スポーツ界も豊かになると思うんです」

 現在はスポンサー探しと並行しながら、ファンがアスリートに寄付を行えるサービス「Unlim(アンリム)」を活用し、活動資金に充てているそうです。

「ドームを離れて2か月も経っていないのですが、ありがたいことに人が人を呼ぶ感じでたくさんの新しい出会いがありました。プロランナーの意義や、自分の価値なども改めて確認できて良かったなと思っています。イベントや練習会をすることで、市民ランナーの方たちとの距離が縮まって、応援をより肌で感じるようになりました。想像していたよりも応援してくれる方、私の活動に興味を持ってくれている方がたくさんいて、もっと頑張ろうという気持ちにもなりました。金銭的な支援というのは、それが10円でも100円でもハードルが高いものだと思うんです。それでもUnlim(アンリム)を通じて支援を頂けるというのはとてもありがたいですし、励みになります。ギフティングしてくれた方のコメントも読めるんですが、それもうれしいですね」

 フリーになり、活動の自由度が増したからこそ、挑戦の幅を広げていきたいと岩出選手は言います。

「市民ランナーの方との練習会は、できれば全国各地でやっていきたいですし、リクエストがあれば中学生や高校生向けのクリニックなどもやりたいなと思っています。あとはシティマラソンのゲストランナーも! 今までは一人で合宿地にこもって、30km走や40km走のロング走をやっていましたが、シティマラソンをうまく活用しながら強くなれないかなと考えているんです。市民ランナーの方たちの前だと、カッコよく走りたい、現役のトップランナーのスピードを見せたいという気持ちが出て、良い刺激があるんじゃないかなと思うので。今は、練習会も含めて、市民ランナーの方たちと一緒に強くなる、楽しく走りたいという気持ちが強いんです」

 まだ具体的にはなっていないものの、ジムを作るという構想もあるそう。

「引退後ではなく、現役の選手のうちにジムができないかなと思っています。パフォーマンスアップやコンディショニングのお手伝いをしたいというのはもちろんなんですが、ハートの部分をケアできるジムをやりたいんです。私の通っていた高校は管理が厳しいところで、親との連絡もままならない感じだったんです。チームメイトはやっぱりライバルというところがあって、相談したり弱音を吐く相手ではありませんでした。そういう中で3か月に1度ぐらい訪れていた美容室のおばちゃんがとても優しくて。私にとって第二の家のように感じられて、とても救われました。話を聞いてもらうだけで楽になれる、外部の人だから気軽に相談できるということがあると思うので、メンタル面もサポートできるジムを作って、女性に限らずアスリートやアスリートの親もサポートしていきたいと思っています」

 もちろん、プロとして活動する以上、強さも求めていきたいとのこと。

「今年度は2021年1月の大阪国際女子マラソン、3月の名古屋ウィメンズマラソンを走ろうと思っています。スポンサーを集めるという意味でも、結果を出してアピールする必要があると思っているので、順位もタイムも良いものを狙っていきたいですね」

 新しい道を歩むことを決めた岩出選手の活躍に期待しましょう。

[プロフィール]
岩出玲亜(いわで・れいあ)
1994年12月8日生まれ、三重県津市出身。高校卒業後、実業団入り。2013年にハーフマラソンで1時間9分45秒のU20日本最高記録をマーク。2014年に世界ハーフに出場し、団体で銅メダルを獲得(個人19位)。2014年の横浜国際女子マラソンでは10代日本最高記録となる2時間27分21秒で3位に。2019年に名古屋ウィメンズマラソンでマークした2時間23分52秒がフルマラソンの自己ベスト。
【公式Instagram】https://www.instagram.com/reiaiwade/
【公式Twitter】https://twitter.com/ReiaIwade

<Text:神津文人/Photo:岩出玲亜選手提供>

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