「高地トレーニング(低酸素トレーニング)」とは。時短なのに効果は数倍ってホント?
最近、高地トレーニングができるスポーツジムが増えてきています。長距離種目のアスリートが山にこもって練習を行ったというニュースを耳にしたことのある方も多いでしょう。実際のところ、高地でトレーニングを行うと何がいいのか、どんなメリットがあるのでしょうか。また、どんな人に向いているのでしょうか。
高地トレーニングとは
高地トレーニングとは、その名の通り標高の高い場所でトレーニングをする方法です。登山をしたことがある方なら、標高が高い山に行くと登るにつれて酸素が薄くなり、普段より息が荒くなるのを感じたことがあるかもしれません。この酸素の薄さを活用したのが高地トレーニング、あるいは低酸素トレーニングとも呼ばれます。
高地トレーニングを行うためには、標高の高い場所へ行って合宿するなど費用や時間がかかります。そのため、これまでは手軽に行えるトレーニングではありませんでした。しかし最近では、ジムの室内に標高の高い位置と同じような酸素濃度の環境を作り、トレーニングできるようになっています。ジムでは高山病などの原因となる気圧を変化させないため、むしろ安全に高地トレーニングが可能です。
高地トレーニングのメリット
それでは、高地トレーニングにどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に解説していきます。
酸素の運搬能力が向上する
人間のカラダは、環境に順応させていくことができます。そのため、酸素が薄い中でトレーニングすると、少ない酸素を体中に巡らせるために赤血球やヘモグロビン濃度、血液量を増やしていくのです。また、筋肉内の毛細血管を発達させ、酸素を効率よく利用できるようにカラダが変化していきます。
これらの変化により、平地に戻ったときに酸素をより多く取り込み、体内で活用することができるようになるため、有酸素性能力が向上します。また、筋肉内の毛細血管が発達することによって、有酸素性能力だけでなく筋持久力も高まります。
疲労回復速度の向上
血流量の増加や毛細血管の発達などによって、疲労回復速度も向上します。また、高地トレーニングを行うことで乳酸への耐性を向上させたり、筋肉から乳酸を除去する能力を高めることで、競技中のスプリント回数の向上などパフォーマンスアップにも大きく貢献するでしょう。
ダイエットにも効果的
低酸素下での運動では、筋肉中のグリコーゲンが積極的に使われます。糖の代謝を促進することに加え、筋肉中のミトコンドリアが増加することによって高い脂肪燃焼効果を得ることができ、ダイエットにも効果的です。
また、高地トレーニングに取り組んでいると、いつもより食欲が減るということも報告されています。研究では低酸素の環境下で運動をすると食欲を増進させるグレリンというホルモンが大きく減少し、食事量が減ることが明らかにされているようです。
短時間でハードな運動と同じ効果を得ることができる
高地では、何もしていなくてもいつも以上にカラダへ負担がかかっています。その環境下でトレーニングすることで、長時間運動したのと同じ効果を得ることが可能です。30分歩くだけで2時間分の運動と同じ効果があると宣伝しているジムもあります。もちろん個人差はありますが、いつも以上の運動効果が得られるのは間違いないでしょう。
高地トレーニングの注意点
多くのメリットのある高地トレーニングですが、注意しなければいけない点があります。それは、カラダへの負担がいつも以上に大きいということ。高地トレーニングに慣れていないために、コンディションや健康状態の低下などを感じる人がいるかもしれません。
しかし、実際に高地へ行ってトレーニングするわけではないので、ジムのトレーナーの指示をしっかり守って行えば、安全で効果的に高地トレーニングを行えるはずです。
こんな人は高地トレーニングがおすすめ
では、どんな人に高地トレーニングが有効なのでしょうか。
競技アスリート
もっとも高地トレーニングを取り入れていただきたいのが競技アスリートです。競技選手にとって高地トレーニングは心肺機能の向上や筋力・筋持久力の向上など、多くのメリットを得ることができるでしょう。
ダイエット目的の人
高い脂肪燃焼効果を得ることができるので、ダイエット目的の人にもよいでしょう。また、ダイエットが挫折しやすく運動が苦手、あるいはこれまで運動を行っておらず体力がないという人でも、短時間で大きな効果を得ることができるためオススメです。
トレーニング時間があまりとれない人
普段、なかなかトレーニング時間を確保できない人にも効果的です。朝など予定をつけやすい時間に営業しているジムがあれば、ぜひ検討してみましょう。
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定期的に低酸素ジムへ通うことで効果が現れる
高地トレーニングは効果の高い方法です。しかし、1回行っただけで効果が現れるわけではありません。効果を得るためには、定期的にトレーニングを継続する必要があります。興味のある方は近くに低酸素ジムがないか探してみてください。
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[著者プロフィール]
和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。運営協力メディア「#トレラブ(https://tr-lv.com/)」などで多くの執筆・監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信している。日本トレーニング指導者協会 JATI-ATI
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<Text:和田拓巳/Photo:Getty Images>