フィットネス
2022年2月16日

「女性は長距離ランニングに向いている」。膨大な市民ランナーのデータから分かったこと (1/2)

 アメリカ・テネシー州で恒例のウルトラマラソンレース「BIG'S BACKYARD ULTRA(ビックスバックヤードウルトラ)」が2020年10月17日、開催されました。今年で10回目となったこのレースは、数あるウルトラマラソンの中でもユニークな形式で知られています。

ウルトラマラソン「BIG'S BACKYARD ULTRA」のルール

 ランナーは一斉にスタートし、6.7kmの周回コースを1時間以内に1周しなくていけません。残りの時間は休みをとり、ちょうど1時間後に2周目がスタート。このサイクルを繰り返し、1時間以内に1周できなくなった時点でそのランナーは失格となります。そして、最後まで残ったランナーが優勝者になるのです。

 1時間に6.7kmというのは、普通の市民ランナーでもゆっくりとしたジョギングペースで走れる距離でしょう。しかし、それを睡眠も取らずに数日間に渡って繰り返すとなると、話はまったく別の次元になります。

大会は2年連続で女性ランナーが総合優勝

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、今年はアメリカ国内ランナーのみが現地コースに集合。他国のランナーはバーチャルで参加するという形になりました。アメリカ部門で優勝したのが、コートニー・ダウルターさんという35歳の女性ランナーです。彼女はこのコースを68周走り抜き、合計距離は288.33マイル(456km)の大会レコード・タイ記録で総合優勝を果たしました。これは「女子の部」での優勝や記録ではありません。もともと、この大会には表彰者に男女の区別はないのです。ちなみに昨年の優勝者は、マギー・グテルルさんという女性ランナーでした。

 
 
 
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 ダウルターさんは、2017年にも「Moab240MileEnduranceRun(モアブ240マイルエンデュランスラン)」というレースで2位の男性に約10時間の大差をつけて優勝しています。このレースの公式距離は238マイル(約383km)で、数あるウルトラマラソンのレースの中でも最長の部類に入るものです。

 ウルトラマラソンは、男女が同じ条件で競技を行う数少ないスポーツです。近年になって、ダウルターさんのような女性ランナーが男性を抑えて優勝する事例が増えてきました。

距離が長くなれば長くなるほど男女間のタイム差が小さくなる

 女性より男性の方が身体的に強い。このことが、今までは何の疑問もなく信じられてきました。ところが、少なくとも耐久力に関してはそうではないのかもしれません。ウルトラマラソンのデータ分析で有名なサイト『RunRepeat.com』が、それを裏づけるとても興味深い調査結果を発表しています。(*1)

 記事によると、走る距離が長くなれば長くなるほど、男女間のタイム差が小さくなるのだそうです。過去23年間に行われた15000以上のレース結果を分析した結果、5kmレースでは男性が女性より17.9%も速いのですが、フルマラソン(42.196km)レースになるとその差は11.1%に縮まります。100マイル(160km)レースでは男女間の差はわずか0.25%。そして195マイル(約314km)以上のレースでは、女性の方が0.6%だけ男性より速くなるのだとか。

 つまり、ダウルターさんのようなトップアスリートだけに限ったことではなく、超長距離を走るレースでは男女の差はほとんどなくなる、あるいは女性の方が優位に立つ傾向が、膨大な市民ランナーのデータからも読み取れるということです。

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