インタビュー
2021年9月16日

寺田明日香選手がたっぷり語る、夢の舞台・東京オリンピック。次の目標は?[特別インタビュー] (3/3)

これから目指す場所とは

―― レース後コーチ陣はどんな反応でしたか。

開催中はSNSで軽く連絡取ると「とりあえず行け!」くらいで、まあ「野放し」状態でした(笑)。レース後いつ話したかも記憶が曖昧になっているかも。そのとき高野大樹コーチからは、「おつかれー。3台目くらいからブレーキかかってたよね。これからどうするか考えようね。じゃ!」くらいなノリでした。

帰ってきた後、高野コーチと齋藤大輔トレーナーとオンラインミーティングしたときに、高野コーチに「オリンピックの借りはオリンピックじゃないと返せないよ、明日香ちゃん」って言われたんです。大輔さんも笑って聞いていて。私的には、「え! 東京オリンピックが終わったら英雄として辞めるって話じゃなかったの?」ってなりましたよ(笑)。

それでも「21年ぶりの準決勝もすごいけど、やっぱり決勝に残る人たちはすごいんだよ」と。「この悔しさを晴らすのは、世界陸上じゃないと思うんだよね。大輔さん」っていう感じに話が進んでいき、ストレートに言わないけど、え? 次がんばるってこと? ってなりました。

この言葉を一番近いところで見てくれていた2人が言ってくれたのは、とてもうれしかったんです。この後も3年一緒にやっていこうよってことじゃないですか! 私もコーチ陣もお互いに成長できるって確信にもなりました。

▲写真右が高野コーチ。2021年日本選手権での優勝後の記念撮影

―― 2024年のパリ・オリンピックを目指すということですか。

そこは難しい問題です(笑)。望んで簡単に叶うことではないですし。今回が2021年だったので、次回は3年後です。4年が3年になると短くて近い気もしますが、私はそのとき34歳です。娘も4年生になっていますよね。そのとき、どこまで走れるのかは、これからの1年1年にかかっていると思っています。

直近の目標は、9月24日から始まる全日本実業団(第69回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会。25日に行われる100mに出場予定)です。この大会で今シーズンが終わります。翌2022年は初めてアメリカで開催される世界陸上(第18回世界陸上オレゴン大会)です。本来今年の7月予定でしたが、来年に変更された大会です。そのため2023年にはハンガリー・ブダペストと2年連続で世界陸上が開催されます。

これらの大会できちんと結果を出していけば、パリも見えてくるかもしれません。今は3年の計画を立てていくというより、1年1年しっかりやっていくことを大切にしています。そして、「気がつけば2024年を迎えていた」という状況がベストではないでしょうか。

私が一番したくないことは、「足が遅くなったから辞める」ことです。現役だからこそ、今しかできないこともたくさんあります。来年も走ることも、いろいろなことにも挑戦し続けたいと考えています。今はオリンピック後の状況に忙殺される日々が続いていますが、1年単位でアスリート、ママ、妻としての自分の価値をもっともっと高くできるよう努力し続けたいと思います。

はっきりパリを目指すとは言えませんが、どうぞみなさま、この先も寺田明日香を応援してもらえればうれしいです。

《MELOS編集部からお知らせ》
2018年4月に開始した、寺田選手の自筆による連載エッセイ『寺田明日香の「ママ、ときどきアスリート〜for 2020〜』は、近日公開の次回で最終回を迎えます。読者・ファンの皆さん、これまでご愛読いただき、ありがとうございました。ぜひ最後までお楽しみいただけましたらうれしいです。

▼寺田選手によるエッセイ連載のアーカイブはこちら
・寺田明日香の「ママ、ときどきアスリート〜for 2020〜」

[プロフィール]
寺田明日香(てらだ・あすか)
1990年1月14日生まれ。北海道札幌市出身。血液型はO型。ディズニーとカリカリ梅が好き。会いたい人は、大谷翔平と星野源。小学校4年生から陸上競技を始め、小学校5・6年時ともに全国小学生陸上100mで2位。高校1年から本格的にハードルを始め、2005~2007年にはインターハイ女子100mハードルで史上初の3連覇。3年時には100m、4×100mリレーと合わせて同じく史上初となる3冠を達成。2008年、社会人1年目で初出場の日本選手権女子100mハードルで優勝。以降3連覇を果たす。2009年世界陸上ベルリン大会出場、アジア選手権では銀メダルを獲得。同年記録した13秒05は同年の世界ジュニアランク1位だった。2010年にはアジア大会で5位に入賞するが、相次ぐケガ・病気で2013年に現役を引退。翌年から早稲田大学人間科学部に入学。結婚・出産を経て「ママアスリート」として、2016年夏に「7人制ラグビー」に競技転向する形で現役復帰した。同年12月の日本ラグビー協会によるトライアウトに合格。2017年1月からは日本代表練習生として活動した。2018年12月にラグビー選手としての引退と陸上競技への復帰を表明。2019年シーズンから競技会に出場し、6月に日本選手権女子100mハードルで9年ぶりの表彰台となる3位に入り、7月には100mでも自己記録を更新。8月には19年前に金沢イボンヌ氏が記録していた日本記録13秒00に並ぶと、9月1日に「富士北麓ワールドトライアル2019」で史上初めて13秒の壁を突破し、12秒97の日本新記録を樹立。カタール・ドーハで開催された「世界陸上」に出場。2021年には12秒96、12秒87と2度にわたって日本記録を更新。悲願の東京オリンピックに出場し、予選で12秒95をマーク、日本人で初めて五輪の舞台で13秒を切り、同種目で日本勢として21年ぶりの準決勝に進出した。

◎所属企業:株式会社ジャパンクリエイトグループ
◎主な記録:100mハードル日本記録保持者(12秒87)/100mハードルU20日本記録保持者(13秒05=2009年世界ジュニアランキング1位)/100mハードル日本高校歴代2位(13秒39)/100m:11秒63

【今後の主なスケジュール】
●第69回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会
2021年9月24日(金)~26日(日) 大阪・ヤンマースタジアム長居
(※25日に開催される100mに出場予定)

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<Text&Edit:松田政紀(アート・サプライ)/Photo:寺田明日香>

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