2021年6月28日

“ライオンの金メダル”を愛娘に。家族とチームあすかで辿り着いた、最長ブランク11年ぶり日本一【寺田明日香×日本選手権 現地レポ】 (1/2)

 6月24日から27日、大阪・ヤンマースタジアム長居で開催された第105回日本陸上競技選手権。MELOSでコラム連載をしている寺田明日香選手が女子100mハードルに出場し、11年ぶり4度目となる日本一に輝きました。

偉業達成! 引退、結婚、出産、競技転向を経て、“最長ブランク”優勝

「11年前に優勝したときってどんなんだったろうって、ちょっとうるうる来ました。(2013年に陸上を)やめたときは、また立てるとはほんとに思っていなかったので、もう1度、また優勝の景色を見られるんじゃないかと思うと、感慨深かったです」

 大会3日目の26日、女子100mハードル決勝。名前が呼ばれると会場からひときわ大きな歓声が送られ、入場してきた寺田選手。スタートラインに向かって歩いていく際、過去の自分自身を振り返っていたといいます。

▲入場する寺田選手

 オリンピックイヤーとなった今シーズン、初戦となった4月29日の織田記念で12秒96の日本新記録をマークすると、6月1日の木南記念で今シーズン2度目となる日本新記録=12秒87を樹立。今シーズンすべてのレースで12秒台を出しており、好調のまま日本選手権に入ってきました。

 今大会で狙うのは、2つ。オリンピック参加標準記録の突破、そして日本選手権優勝でした。大会直前に、寺田選手と同タイムの日本記録を持つ青木益未選手が欠場を発表。最大のライバルが不在というなか、大一番を迎えました。

 予選と準決勝をトップ通過し、決勝に進出。決勝でも、スタートから終盤までレースをリードし、13秒09の1着! 寺田選手は2008年から3連覇を達成しており、最後の優勝となった2010年以来、4度目となる日本一のタイトルを手にしました。

 日本陸連の公式Twitterによると、「『11年ぶりの優勝』は、男女全種目を含め『久しぶり優勝』の歴代最長記録」とのこと。つまり、陸上日本選手権の歴史上、「最長ブランク」の優勝だったのです。引退、結婚、出産、競技転向を経て、11年ぶりの日本一は、まさに偉業と言えるでしょう。

「日本選手権は特別」。悔しさ残るレースに

 しかし、レース後、寺田選手本人から出てきたのは、悔しさを感じさせる言葉でした。

「ほんとに、日本選手権は特別だなと感じました。木南記念、布勢スプリントが終わってから、調整を続けていたなかで、走りがぼんやりしてしまって、そこが取り戻せなかったなと思っています。標準記録を出したいという思いもありましたし、日本選手権で優勝したいという思いもありました。それに、走りがぼんやりしていてうまくリズムアップできないなかでどう修正しなきゃいけないかもずっと考えていました」

 オリンピック参加標準記録突破とはならなかったため、今大会を受けてのオリンピック代表内定はお預けに。ワールドランキングを加味した内定者は、7月2日以降に発表予定です。なお寺田選手は、ワールドランキングで出場圏内に位置しています。

「オリンピックに関しては、ランキング待ちになってしまうんですけど、今回の日本選手権でまたちょっとランキングを上げられると思うので、上がってくれてちゃんと入れたらいいなと思っています。たぶん大丈夫だと思っています。やっぱり連戦でふわふわしてしまうとか、難しい部分があるというのが今回で感じてしまったので、オリンピックでどう修正するか、考えていかなきゃいけない。4月から6月はじめまで、安定して走れていたので、その感覚が戻ってくれば、オリンピックでもしっかり走って、ラウンドも重ねられると思うので、そこが課題かなと思っています」

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